第8話 学習計画は無理のないものか

 ・実力に見合ってない計画になってないか


 中国語に限らず、初めて外国語学習をする人から「どのぐらい勉強を続ければ、話せる様になりますか?」という質問をよくいただきます。しかしこれは学習する人の素養や外的要因によって大きく異なるため、一概に「〇か月で話せる様になりますよ」とは答えられません。


 ただ、人間の脳にはある程度の期間、同じ刺激を受け続けると、長期記憶として固定される事がわかっています。所謂

「外国語に耳が慣れて来る」

 という状態になるまで、おおよそ3か月、どんなに遅い人でも半年ぐらいです。

 私の例ですが、私も大体3か月かかりました。


 ここで極端な例を挙げます。

 元サッカー選手のラモス瑠偉氏の奥様は、ラモス氏の為に死ぬ気でポルトガル語を学び、全く話せない状態から、なんと3か月でポルトガル語検定1級に合格しました。

 こういう逸話を聞くと


「3か月でぺらぺらになれる可能性があるじゃん!」


 と思うかもしれませんが、他の事を犠牲にしないと無理でしょう。元々語学に対して適性がある人ならいざ知らず、全く学んだこともない外国語を3か月でマスターするなんてのは、非常に困難な事です。

 ですので、以下に「無理のない学習計画の目安」なるものを提案していきます。




 ・最初の3か月で何をする?


 最初の3か月は出来る出来ないに関係なく、とにかく聴くこと。出来ればネイティブの発音を聴きましょう。これはテレビでもラジオでも、なんならYouTubeでもなんでもいいです。

 テレビ番組の場合は、ニュース番組が最もいいと言われています。これはどこの国でも共通していますが、ニュースキャスターやアナウンサーは、標準となる発音で話す様努めているからです。


 留学してる人の場合は、街中でとにかく現地の人の会話を盗み聞きすること。会話の内容が把握出来る様になったらしめたもの。

 簡単な単語一つ聞き取れただけでも、

「やった! 聞き取れた!」

 って嬉しくなりますよ。その喜びを積み重ねていく事によって、段々話せる様になっていきますよ。

 そしてそれと平行して、語彙力を強化していきましょう。




 ・より時間をかけるのはリスニングとスピーキング


 ライティングとリーディングについては、テキストさえあれば出来ます。そして下書きしたり清書したり、直す余裕がある行為なので、とっさの時の基礎力に差が出やすい、リスニングとスピーキングにより時間をかけた方がいいです。

 スピーキングに関しては、会話の練習よりまず発音の練習をしましょう。そもそも単語の発音を間違えていたら、通じませんからね。

 相手が察してくれて「〇〇ですか?」と訊いてくる事も稀にありますが、日本人以外の人にその対応は、あまり期待しない方がいいです。


 また、相手から何か質問された時、日本人がやりがちな事なんですが、話せる話せないに関わらず、返答の内容を黙って考えてから返答しますよね。私も昔そうでした。

 これは相手から指摘されましたが、外国人からは


「聞き取れてないから黙ってるのかと思った」


 と判断されるそうです。

 なので、そういう状況に陥った場合は、


「回答を考えるからちょっと待ってて」


 と告げるといいでしょう。




 ・シャドーイング+聴写は効果絶大!


 私が「やって良かった」と思うのは、シャドーイングしながらの聴写です。これは教材の音声データを聴きながら、その音声と同じ発音をする、という訓練です。これは本当におすすめな方法です。

 ただ、基礎の発音がままならない状態でのシャドーイングは非常に困難ですので、最初は基礎の発音から始めるのがベターです。

 何故いきなりシャドーイングから始めるのは困難なのかと言いますと、間違った発音のまま練習を進め、間違った発音のまま話してしまうパターンに陥るからです。

 基礎となる発音はしっかり練習しましょう。


 私はここに「書く」という訓練を付け加えていました。聴いた音声を書き出す作業を「聴写」と言います。こうすると、単語一つとっても、目で見た単語(文字)と、音声で話す単語(聴いた時の音と、自分が発声する時)との「記憶の連結」ができますので、大変ですが、1日30分~1時間ぐらいやりました。


 最初の内は全部同時にやるのは難しいですから、シャドーイングはシャドーイングで、聴写は聴写で分けてください。慣れてきたら同時に行ないましょう。




 ・留学したい!


 本格的に外国語を学ぶのであれば、語学留学するもの手段の一つですね。私は迷わず語学留学を選んだクチですが、これが正解だったと今でも思っています。


 ただし、ここで日本人が持ちがちな幻想を、ぶっ壊ーす!


 以前私が、ロシア語を学んでいる友人から「留学した方がいいのかどうか……」という相談を受けたことがあります。友人は留学して中国語が話せる様になった私を見て、話せる様になるには、やはり留学だろうか? と考えたうえで、私に相談してきたそうです。

 この友人の様に、外国語を学んでると、留学を考える人、多いですよね。


「現地へ行けば、すぐ話せるようになる!」


 はいこれは大嘘、幻想です!

 その期待、完全に間違ってますよ!

 そんな都合のいい事は起きません!


 何故これが嘘なのか。理由は非常に簡単です。

 理由は「現地へ行けばすぐ話せるようになる」という思い込みと、現地にいるという環境に甘えて、努力を怠るから、です。

 実際に留学で3年現地にいるのに、全く話せる様になってない人というのも、私は何人か見たことがあります。

 その人は何故、3年も留学しているのに話せなかったのでしょうか?

 理由を説明していきます。


 その人の生活を見ますと、午前中は語学学校へ行き、授業が終わると、日本人留学生でかたまって日本企業の飲食店へ行き、日本人留学生とかたまって宿題や課題を終わらせ、日本人留学生とかたまって余暇を過ごしていました。


 どうですか? おかしいと思いませんか? 現地の人や他国の留学生と関わらないのであれば、大枚はたいて留学する必要など、全くありません。

 現地にいるのに、何故授業だけ出て、その他の時間は日本人とだけ関わるのか。せっかく現地に行ったのに、無駄としか言いようがありません。


 もし、その日本人留学生の集団が、「〇〇語が話せる様に努力する!」という意識を強く持って、日本人だけでかたまってもその〇〇語を出来る限り使い、努力しているのであれば、全然問題ありませんし、むしろ互いの向学心を刺激して、良い相互作用が産まれていたでしょう。

 しかし結局のところは、全員話せていない。つまり、努力する気が無く、義務的に語学学校の授業にだけ出ていた、という事ですね。

 勿論文章を書くだけなら、3年も学んでいれば、上達しますよ。しかし全てを筆談で済ませる事はできませんよね。そうなると、「会話できること」が重視されます。


 始めの方でも書いていますが、話し間違えても、ちっとも恥ずかしくはありません。何故なら語学留学する人は、ネイティブではないからです。


 例え現地に行ったとしても、実際に会話の機会を持たねば、上達すること等、まずありえません。

 読み書きの上達だけが目的で留学した、というのであれば、それはそれでOKだと思います。しかし会話出来る様になるのが目的で、ついでに読み書きも出来る様になるのが理想ですね。

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