第7話 同レベルの人から教わらない

 ・教わる時は、自分よりレベルが高い人から


 恐らく誰しもが通る道ですが、分からなかったところって、クラスメイトに訊いてしまいますよね。


「だって~……わからない、って先生に言ったら、叱られるじゃん?」


 いや、勿論その気持ちはわかりますよ。

「私できてません、無能です、って明かすのは恥ずかしい」

 その通りですね、普通は自分が無能だと思われたい人、そんなにいませんものね。昼行燈な人なら別ですが。


 しかし、物事を教わるにあたっては、同じクラスメイトに訊くにしても、自分よりレベルが高い人に訊くようにしましょう。

 少なくとも、自分がわからなかった部分が、すでにわかっている人に訊きましょう。

 そういう相手がいなくて、全員がわかっていないなら、やはり先生やネイティブ、もう会話ができる日本人といった、自分よりレベルが高い人に訊きましょう。


 自分と同レベルの人に訊いても、正解は出てきません。

 さっさと正解を知っている、レベルの高い人に訊くのが正しい手段です。


 ネイティブに指導・添削してもらうことのメリット


 先生以外に教わる場合、ネイティブか、ネイティブと近い能力の人から教わりましょう。


 そしてできれば、週に3回は話す機会を持ち、勉強したことを日記にして、その人に添削してもらいましょう。

 個人的には、その人の知的レベルは平均以上であることがおすすめ。何故なら、文法や表現の間違いをきちんと指摘・指導できる人でないと、あなた自身が間違った文法や表現を覚えてしまうからです。


 私の場合ですが、学び始めて3か月程度の頃。交換日記を始め、添削をしてもらった時、初めて気づいたことがありました。

 添削されていた箇所は、副詞の使い方。


 副詞というのは、形容詞の程度を表すものです。日本語で言うと「すごく」「とても」「相当」「だいぶ」「結構」「あんまり」「そんなに」「全然」というヤツですね。

 日本語でもそうなんですが、中国語も「この場合にこの副詞は使っちゃダメ」という規則があります。


 私が指摘された部分は、「太」の後ろに、肯定的な内容の形容詞を使っていた、ということ。基本的に「太」の後ろには否定的内容、またはその内容が話者にとって都合が悪い時です。


 では私が指摘された内容の、具体的な例文を。

 誤:昨天我參加派對的料理太不錯。

 正:昨天我參加派對的料理真不錯。


「不錯」は直訳すると「間違いがない」なので、通常は「いいね」とか「なかなかのものだね」という、ほめる時の形容詞です。つまりパーティーで出た料理を肯定しています。

「太」は否定的内容や、話者にとって都合の悪い内容につける副詞ですので、この「誤」の文章は文法上間違っている、ということです。


 最近はこの「太」を肯定的内容につける場合もあり、実際その会話も日常で聞かれますが、私に中国古文を教えてくれた先生からは、「その文法は間違ってるから、お前の解釈が正しい。気にするな」と言われました。




 また、動詞の前につける「就」や「才」も、学び始めは使用する際の区別がつきにくいですね。


 このエピソードは、留学生時代の教室内のこと。

 私と同じクラスに、南米パラグアイ出身の、メスティソの男の子がいました。当時19歳だったかな~今なら30歳超えてるでしょうか。

 その子が授業に遅刻してきました。当然先生から


「あんた、今何時だと思ってるの!」


 と叱られてましたが、当の本人はヘラヘラしながら、


 「老師,我早上9點就到了吧 」

 (先生、俺9時にもう着いてるじゃん)


 「你幹嘛,你9點才到 !」

 (あんた何言ってんの、9時にやっと着いた、でしょ!)


 と一喝され、先生による「就」と「才」の使い方説明が始まりました。ただこれは、彼以外の私を含めた留学生には、特に必要が無い説明でした。その前日、小テストに出てきた内容で、彼以外全員正解してましたし。

 そして授業開始は朝8時10分。基本的に、私はいつも朝一番の授業に出ていました。端午節の龍舟練習の時期だけ、例外的に午前10時20分開始の授業にしましたが。


 上記の先生のセリフでもわかる通り、「就」はその動作が早く終わる、早く終わった等、話し手にとって早かった時に使います。

 逆に「才」は、話し手にとってその動作が終わるのに時間がかかって、「まだかよ!」とか「時間かかりすぎ」とか、「早く終わってくれ!」、その動作が終了していたら「やっとかよ!」「どんだけ待たせてんだ」と感じる時に使います。


 ですから、上記会話の中で、遅刻した側が「就」を使い、待たされた側が「才」を使っているわけです。




 ・同レベルの人に流されて起きた悲劇


 多分これが、一番「自分で外国語が話せない状況を作っている」という一番の理由なんだろうな、と思っています。


 私が語学センターに通い始め、ビジネス会話クラスにいた時の話です。留学に来て2学期目……という日本人女性から


「ペン子さ~ん、これ全然わかんないんですけど、教えてください~」


 と言われ、まぁよくあることでしたから、教えてました。例の古文の先生からは「お前が教える内容は結構役に立つ内容だから、金とった方がいいぞ」と言われていましたが、当時はまだそこまで上手ではありませんでしたから、無償で。


 教える内容が結構多かったので、当時何を訊かれたのかはさすがに覚えていませんが、説明の途中で


「え~でもぉ、これって日本語だと〇〇って意味ですよねぇ?✕✕ってなるの、おかしくないですかぁ?」


 などと言うではありませんか……。


「全然おかしくありません。今あなたが私から解説を受け学んでいる言語は、日本語ではなく中国語です」


 そう言ったら、彼女は顔をポカーンとさせて


「え? なんで?」


 と訊いてきました。


 私はそのまま


「あとあなたここ見落としてますね? ここに否定形がありますから、〇〇にならず✕✕になるのが正解なんです」


 と説明を続けましたが……やはりその後も、彼女の成績はいまいちでした。


 元々その女性、韓国アイドルや台湾アイドルの追っかけをしていて、お目当てのアイドルと直接話しがしたいから、台湾留学に来た、と言っていました。

 私が留学してた時は、そういう人がすごく多かったなぁ。


 それ自体は何も問題ありませんが、大変大きな問題が彼女達の行動にありました。


 それは、彼女達がアイドルの追っかけ活動のために、授業にろくすっぽ出ていなかったことです。

 私が当時通っていた国立台湾師範大学の語学センターは、台北市にありました。通っている学生も、市内や近隣の市から通うのが普通でした。

 芸能人のイベントは、台北市内だけで行われるわけではありません。それは日本でも同じですよね?

 例えば授業が昼の12時10分に終わって、イベントがその日の14:00から台北市内の市政府前である、という場合は、授業に参加してからイベントへ行けます。


 これが台中や台南、高雄で行われるとしたら?


 移動に時間がかかり、場所取りも必要らしいです。授業を欠席してイベントに参加する、という留学生がかなりの数おり、ビザの延長が出来ず、ノービザ有効期限ギリギリで出入国を繰り返す、という問題がかなりありました。


 実際、移民局(ビザ延長の申請先)で、成績が未達で出席日数も足りないから、ビザは延長できない。いったん日本へ帰れ、と言われている留学生を何度か見かけています。


 勿論、当の女性も、ビザの延長が認められず、帰国することになりました。その時


「ペン子さんの言う通り、ちゃんと授業出てればよかった。あの時あれだけ、授業に出ろ、イベントへ行くのは休日にしろ、課題をやれ、日本人だけとつるむな、って言われてたのに、うるさいなーとか思って、全然聞いてなかった。それで〇〇(アイドル)のイベントも行けなくなった。結局全然中国語が話せない状態だから、〇〇とも話せなかった」


 という、本末転倒な結果になったことを、語られました。

 これが同レベルの人に流された留学生の末路です。


 余談ですが、こういう事を繰り返す日本人が結構いたため、ノービザ有効期限ギリギリでの出入数が多いと、入国を認められないことも増えました(私は経験ありません)。


 台湾はビザの審査が結構厳しいですよ。




 ・同レベルの人から教わってはいけない理由


 学び始めの人がやりがちな間違いの一つが「同レベルの人から教わる」ですが、何故これがいけないのかを説明します。


 結論を言ってしまうと、間違って覚えるからです。

 自分と同レベルの人から教わると、相手が間違って解釈している部分まで、その人の教えを受けることになります。

 また、教える人のレベルが低いと、教える相手に合ったレベルが判断できません。相手のレベルがわかるのは、ある程度の水準を満たしていないと、難しいことなんです。


 ですから、先生やネイティブから教わるのが理想で、とにかく自分よりレベルが高く、会話・読み書きができる人から教わりましょう。


 但し、稀に先生の中でも、間違って解釈している人がいますので、その点は注意してください。

 また、いくら先生とは言え、合う合わないもあります。何名かの授業を見学し、一番相性がよさそうな先生にお願いするのがいいでしょう。




 ・自己流は「事故る」


 これは何を学ぶにしても、起き得ることです。

 実際、私は経営や集客を自己流でやってしまい、事故っています。その後反省し、集客については「ある程度投資が必要」と割り切って、多少ではありますが出資する様になりました。


 私事はそこまでにして、自己流が成功する確率は低く、こういう環境下で自己流で学んで成功する人は、ごくわずかな特別な人だけです。如何に現在成功している人でも、必ず指導者がいました。


 教わる上で最もおすすめなのは


 外国語会話教室

 家庭教師

 言語交換


 の3種です。

 テレビやラジオも悪くはありませんが、お手本を伝えてはくれるものの、こちらのアクションに対するレスポンスがありません。

 ですから、初心者のうちはちゃんとした先生について習うか、ネイティブのお友達を作って、正しい発音や表現を学んだ方がいいですよ。

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