第2話 まず覚えるべきは発音と単語

 表記通りに発音すると間違う発音


「中国語の発音は難しい」


 よく聞く言葉ですね。確かに日本語の発音にはない発音があり、日本人には苦労する点がたくさんあります。

 今勉強中のあなたも、一生懸命発音しているのに、相手から


「ごめん、何言ってるかわからない。もうちょっと努力したら?」


 という反応されたことはありませんか?

 この反応、傷つきますよね~。


 一生懸命努力したのに、バカにされた! 通じなかった! 悔しい!

 しかしここで不貞腐れて努力をやめたら、話せるようにはなりませんし、勿論聞き取ることもできません。


 発音を覚えるにあたって、次の点に注意してください。


「ピンインで学ぶ時、ピンインで書かれているローマ字通りに読むと、正確な発音ができない事がある」


 多くの日本人が失敗している点がここです。

 私は個人的に、注音符号で学ぶことを強くおすすめしていますが、多くの人は


「こんな変なもの、覚えたくない。どーでもいい。ローマ字で学べるなら、それでいいじゃないか。こんなの覚えるより、ひとつでも多くの単語を覚えた方が有益」


 と思います。


 あのね。

 それ、完全に間違ってますよ!

(プロイラストレーター・さいとうなおき先生の様に!)


 何故間違っているのか。何故失敗するのか。明確に説明します。


 日本人は、読んでしまうからです。

 しかし実際の中国語発音は、ピンインの表記と違う事が結構あります。

 英語やフランス語でなら、「書いてある文字通りの発音ではない」とわかっているのに、中国語になった途端「書かれている文字通りの発音」と思考停止するのは何故なんでしょうか? 実際にネイティブの発音を聞けば、書かれている文字通りの発音ではないものがあることは、明らかなのに。


 今から紹介する内容は、実際に日本人留学生が台湾人から指摘された発音の間違いです。


「九」


 この文字の発音は、ピンインですとjiuˇ になっています。

 これをピンインだけで学んだ人は、「ジウ」と読んでしまいます。


 注音符号ですと「ㄐㄧㄡˇ 」となります。

 これをカタカナで表記しますと、「ジョォウ」。

 なので、注音符号に基づいたローマ字表記に直すと「jiouˇ」が正しい発音となります。


 どうですか? かなり違いますよね?

 先ほど書いた日本人留学生が、私と中国語で会話した時


「我昨天去九份玩」

 (昨日、ジウフェンに遊びに行った。)


 と言いました。私は彼女に


「唉喲,我也去過九份。但對我來說沒什麼感覺 」

(へぇ、私もジョォウフェンに行った事ある。でも私はなんとも思わなかったなぁ。)


 なんて話してましたら、一緒にいた台湾人が私に


「ねぇ、あんたボポモフォ(注音符号)できるでしょ?」


 と突然言ってきました。

 勿論私はパソコンやスマホ、タブレットでは注音符号で入力してますから、注音符号がわかりますし、実は大学時代はピンインで習っていましたので、ピンインもわかります。

 その台湾人は続けて言いました。


「ピンインだけで勉強した人は、発音がテキトー。私は色んな留学生に接してるからまだわかるけど、年寄りとか聞き取れないよ」


 そんな会話をした後日、ちょっと注意深く他国の留学生の発音を聞いていました。そしたら面白いことに、少なくない人が、表記通りの発音ではなく、ネイティブが発した発音を再現していました。


 逆に少なくない日本人が、教科書の表記通りに発音していました。


 この辺は、日本人が素直すぎることもあると思います。

 教科書だから正しい、と思っています。

 実際に、注音符号で学んだ日本人留学生と、ピンインのみで学んだ日本人留学生の発音は、かなり違います。


 もし皆さんがお持ちのテキストが音声データ付属でしたら、是非聞き比べてください。

 テキストに書かれているピンインで読んだあなたの発音と、お手本の発音と全く同じですか?


 そこに注意しましょう。


 間違った発音で覚えてしまったら、その他の単語も間違った発音のまま話してしまいます。

 特に注意してほしい発音の代表は、先ほど出てきた「九」のように、実際の発音と表記に差があるものです。


 以下に、特に日本人が間違えやすい発音について記します。


 表記例  → 実際に聞こえる発音

 xiu  → xiou(ショォウ)

 yan  → yien(イェン)

 yüan → yüen(ユェン)


 特にanの発音は、前にyやüが付くとanと書かれていても、実際に聞こえる音はenに変わってしまいます。これは注音符号でも同じですから、混同しないように気を付けましょう。


 また、日本人が意外に発音できていない単語に「村(cun)」があります。発音できていない日本人の発音を聞くと


「ツン」


 と発音している人が多かったですね。あれです、「おでんツンツン男」の「つん」と同じ発音です。では正しく発音したら、日本語で表記するとどう聞こえるのか?ですが、


「ツゥェン」


 に聞こえます。

 ェは殆ど聞こえない程度ですね。勿論最後の「ン」部分は、舌が口蓋(上顎)にぴったりつく「ン」で発音しますよ。



 また、ピンインの zh ch sh ri の発音が難しい、とよく言われます。私が大学時代、上海出身の先生から教わった方法は


 1:口の中で、舌を「U」の字にする

 2:zh → じゃ じ じゅ じぇ じょ と発音

   ch → ちゃ ち ちゅ ちぇ ちょ と発音

   sh → しゃ し しゅ しぇ しょ と発音

   ri → 舌をUの字にしたまま声を出す


 という方法です。これは中国北方の発音になりますが、この発音でネイティブから「発音間違ってるよ」と言われたことは、一度もありませんでした。むしろ大陸出身者から「大陸のどこ出身? 俺山東」とか言われたことは多々ありますが……。


 また、ネット上の中国語学習に関する記事では、


「注音符号なんて覚える必要ない。ピンインで覚えても、相手には差なんてわからない」


 と断言している人が散見されますが、それは単なる事実誤認です。ネイティブは

「その発音本当は正しくないけど、外国人だし通じてるからいいか」

 と思って、黙ってくれているだけなのです。


 勿論、ピンインで学び正しい発音ができていれば、何も問題はありませんし、その主張も正しいです。が、現実問題、そうはいきません。日本人の「素直さ」という美徳が邪魔してしまっている、と私は思います。

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