2章
太助 ( 1/5 )
田んぼに畦道がある風景っていうよりも、とてつもなく広い道の……川にたとえるなら中洲みたいなところに田んぼが位置する……そんな感じのする場所。
俺が説明しようとするとそうなるところに、真友たちがいた。
ひとりの小さい子供が、真友と連れだってる。
そこにはまず、電柱が見あたらない。だから電線にとまっている雀や鳩っていうのもない。
だけどササの形した草が生えてるし、日本語で話ができてるから、外国にいるんではないって気はした。
意識を向けると、楽器や虫の声みたいな音色が代わるがわる、町内放送のようにどこからともなく流れている。
いわゆる『あの世』なのか? そこが『天国』なのか?
そんなことを考えるのは、いつも'起きて'からあと。
広がる道と同じように、川原の地面はハイドロカルチャーっていったか、あの鉢の中の粒を思わせるような感触がする。
気がつくと俺は木の根もとにもたれてたり(四回目のとき)、歩いてたり(五回目のとき)して、地面の感触や空気感で同じところに来ていることをさとる。
はじめてのときは、子牛と一緒に幼い子供が、あおむけの俺を覗きこんでいた。
足もとにだれかもうひとりいて、それがだれであるのかを直感したが、なんとなく、俺はのそっと体を起こした。
しゃがんでいる彼女に、子牛が歩み寄る。
その真友は、年上に見える。二十歳ぐらいに見える。
こっちに目をもどし、小首をかしげて顔一杯にほほ笑んだ。
つられるように、俺も手をあげ、ニカッとしたかなって思う。
会えたことには俺はぶったまげたかもしれない。だけど、おまえがいることには、驚きがなかった。
邂逅記念日って呼んでみている。
全部きのうのことのようだよ。
子供のことを「太助」って俺は呼んだ。
シャバ、つうか現実……の俺の肉体のほうは2回目のコロナワクチンをしたあとの熱発と全身痛でクソのたうちまわっていたが、タスケテェェだった心の状態と、その呼び名とは関係ない。
呼べないと遊びづらい気がしたので、考えておいたんだ。
本人は抵抗を見せず、反応も示してくれる。
真友にも了解をもらえた気がした。したがって、この子の性別が実際どっちなのかは、俺はろくに気にしてない。現にこいつは色は白いし……髪を結わえちゃったりなんかもして、判然としないんだ。
俺はこう解釈している。真友の口数が多くないのは、言うほどでもないことばかりだからだ、って。
よそよそしいんだったら、なにより近づかんだろうし。
真友が「抱っこしてあげて」と言う前に、俺が太助を抱きあげるだろ? そうすると、まなざしでもって、真友が「それでいい」って言ってくれてるように感じてるのだ。
一度だけ、彼女が俺に……短くではあるけど、なんとも説明くさく語ったことがある。
やっぱり二回目のときだった。
「
それから三回目までが長かったのなんの。よくメンタル維持したってくらいに。
なまじ一度もこういう夢を見なければなにを望んだ?
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