私の執着

私には、幼馴染がいる。

それはもう卑屈で、絵に書いたような陰のオタク。

私が誘わないと学校にも行きたがらない。

私が起こさないと起きれもしない。


私が居ないと本当にダメな、可愛い男。


だったのに。


「最近さ、青鳥SNSで知り合った女の子が居るんだ」

「…へぇ」


なにそれ。知らない。


「俺と同じ作品が好きでさ」


やめて、その顔しないで。

なんでそんな顔するの?そんなに優しい顔私にもそうそう向けないじゃん。


「それで、」


は?なんでそんな恥ずかしそうな顔すんの?無理。ねえ。


「恋愛相談、乗ってくれない?」


赦さない


「いいよ」


胎の底に燻る重たい炎から目を逸らして、私は努めて優しく答えてあげた。


話を聞いていく中で相手の事を知れた。


どうやら、可愛い可愛い私の幼馴染と好きな作品がダダかぶりしていること。

青鳥を見たところ、典型的な姫様だったこと。

恐らく


ーーーー騙されていること。


そう、たぶんこの子は騙されている。

会ってデートして、貢がせて終わりだろう。

赦せない。


けど、


私はそれはもう手厚くサポートした。

バイトも紹介したし、良い美容室も教えた。

眉毛の整え方も話の振り方も教えてあげた。

その子への感情も大きく育ててあげた。

そうして初デートに送り出してあげた。


結局は。


「…騙されたんだね」

「うん…その、俺みたいなクソオタクが多少身なり整えても私の彼氏になれるわけないでしょ?ってさ」

「酷い人だね、その子」

「いや、俺が思い上がってたんだ。勝手に浮ついて期待して。助けてくれたのに、ごめん」


俺は、本当にダメなやつだ。


ああ。


「(成功した)」


思わずニヤつきそうになった顔を抑えた。


笑いが出そうになる。でも駄目。これからが大事。


「大丈夫だよ」


そうして、優しく抱きしめた。


「え?」

「私は君の味方だよ?ずぅっとそうでしょ?」

「…それは、そうだけど」

「だからね?私にずっと依存していいの。私のものになって、私を愛して?」

「俺の事、手にかかる弟くらいにしか思ってないと思ってた」

「ううん?そんな事ないよ。ずぅっと好きな人。初恋なんだよ?私の心をずっと奪いっぱなしなの」


私は知っている。

この子がとっても優しくて、泣いてる女の子を1人にしない子だって。


私は知っている。

実は涙脆くて、アニメでもすぐボロボロ泣いちゃうような子だって。


私は知っている。

ずっと見てきたから、ずっと支えていたから。


私は知っている。

この子は、私と同じ。


「ずっと依存してくれていいの。私を見て?私だけを愛して?私も貴方だけを愛してるから」


誰かに愛を受ける事が、何よりも幸せな人間だってことを。


「…うん」


ありがとう。名も知らない糞猫。

この子の心を手折ってくれて。

ありがとう。

私にこの子を手に入れさせてくれて。


でもね?


私の大切な人を傷つけたのだけは赦さない。


赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない


絶対に。


でも、私は優しいから。


青鳥炎上くらいで、許してあげるわ。


この子が手に入ったから、特別よ?

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