第7話 お医者さんごっこ2

部屋の中は驚くほど殺風景で、人が過ごすパーソナルスペースといった雰囲気はまるでなかった。


その中。ベッドに横たわってこちらを見ているのは、体中に包帯を巻いている少女。

歳は10代半ば程だと思う――思う、というのは体中に包帯が巻かれているため、年齢が判別できる指標が体格くらいしか無いからだ。

性別でさえ、よく手入れされているのであろうロングヘア―から類推することしか出来ない。

その位、一切の肌の露出無く包帯で覆われていた。


「いつかこういう事になるかもとは思ってたけど――まさか本当に連れてくるなんて思わなかった」


少女はこちらを睨みながらそう言う。


「こんにちは。僕は■■■と言います。是非一度、実際に症状を見せてもらいたいと思って――」


「病院ではどうにもならないなら、怪しい宗教にでも、ってすがっちゃうのは――嬉しいけど、やめてって言ったよね」


挨拶さえさせてもらえない状態で、ずっとこちらを睨み続ける少女。

…男性の方は割と最初の時点から拒否反応は少なかったが、どうやらこちらは難しそうだった。


「こら!どういう理由であれ、お客さんだぞ!その言い方は無いだろう!」


「どうせあることないこと吹き込まれたんでしょう?ていうか、なんでお母さん止めなかったのよ…」


男性の奥さんが俺を止めなかった理由は簡単、俺の冴えわたる読心スキルで考えていることを事細かにズバズバと的中させられたからである。

「まあ診せるだけなら」と一応許可を頂けた。


「お父さん、お金渡してたりしないよね…?」


「いや、この方は完全なボランティアだそうだ」


今回、俺は金を貰っていない――金稼ぎの為の活動ではあるが初めてのことだし、まあ今回は実績作り、という訳だ。

スキルがうまく使えず、治せなかった場合も怖いしね。


「…といいつつ、ありがたい壺でも持ってきてるんでしょう、どうせ」


「いやあ、手ぶらなので安心してください」


本当に俺は手ぶらである。財布も、スマホさえ持ってきていなかった。

身バレするようなものを極力減らしているだけなのだが、まあどちらにせよ壺が入るようなバッグは持ってきていなかった。


「どっちにしろ怪しすぎ。どういう風にお父さんを言いくるめたのか知らないけど、帰って」


「そう言わず話だけでも聞いてもらいなさい」


「お金は要りませんから、本当に大丈夫です。怪しいのは確かにそうですが…」


と、このようなやり取りを続け。

少女が話を聞いてくれるまで、男性の格闘が10分続いた。

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