第2話 ステータスボードを与えます
「は?」
俺は混乱した。
「あなたには、異世界転移する権利が与えられました」
と同じことを繰り返す謎の人物。
「急にこのようなことを言われても困るところでしょう。順を追って、説明をさせていただきます」
そう言って、この人物はこう続けた――
曰く、自分はこの世界の管理者であり代表である、と
他の世界との橋渡しを行っており、この異世界転移はその一環として担当している
とある世界において、異世界転移の要求がなされた
そのため、その世界と「概念的な」距離の近いこの世界から、「魂の強度が高い」存在を選び出し、転移者としてそちらの世界に送ろうとしている
「ちなみに、転移が要求された理由は?」
俺は聞いた。
「人族が魔族との戦争で滅ぶ寸前であり、強力な勇者を欲しています」
とてもベタな理由だった。
「おおよそ、あなた方が思う異世界転移と大筋は変わりません――転移先の住人が神へ転移儀式という形で転移者の要求を出し、私たちはそれに応え、相応しい者に相応しい力を与え送り出します」
「どうやら本当にベタなやつみたいだな…ちなみに、『相応しい力』っていうのは?」
「そちらについても、あなた方が良く知る通り――いわゆる、『チート』というやつです」
おお、それは素晴らしいな。誰もが一度は遭遇してみたい異世界転移イベントそのものじゃないか。
「与える力については――見ていただいた方が早いでしょう」
そう謎の人物が言った瞬間、俺の目の前に謎の画面が浮かび上がる――文字は、何故か真っ黒。だが、この真っ暗闇の中で、不思議な事に書かれている文字ははっきり読み取ることが出来た。
「これが基本の権能――いわゆるステータスボードというものです。これ自体は『向こうの世界』の住人は全員が持っているものなのですが、転移者のものは特別製です」
と、若干得意げに言う謎の人物。
「というと、具体的には?」
「まず、ステータスポイント――スキルの取得に必要なものなのですが――こちらが既に途轍もない量与えられています」
「おお??」
俺はステータスボードの「ステータスポイント」欄を見る――現在1000万ポイント。
「向こうの世界で言う一般的な『天才』が一生で得るポイントの10倍程度を基準に付与しています」
「お、おおう…」
確かに桁数がえぐいので、確実にチートであることは俺にも分かる。
「まるで、ゲームマスターだな」
俺は素直に思ったことを口にする。
「それは私も思いました」
と、俺に同意する謎の人物。
「これはあなたが作ったものではない…ってことか?」
「ええ、この『ステータスボード』は『あちらの世界』の管理者が作成したものです。ですから、どのような意図で作成されたのかはよく分かりません」
「また、そういう訳であなたの知る、私の管理する世界には存在しないものになっています。とはいえ――あちらの世界の神が実現できるものである以上、私の権能でも再現できますので、あちらの世界に行かれるあなたには付与しました」
「ほへぇ」
なるほど、神様の世界にもいろいろあるんだなぁ――と思ったところで、俺は大事なことを聞き忘れていたことに気づく。
「あなたは、神様ってことで良いのか?」
「あなた方の価値観で言うなら神様という表現は最適ですが、私はそんな神々しいものではありません例えば、そう――」
シャーレを観察している実験者みたいなものでしょうか――
そう言って、『彼女』は笑った、気がした。
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