第一話 ~スタンピードを解決した俺たちは、酒場でこれからの事を話して行った~

 第一話





「さて、ベルフォード。言い訳があるなら聞きますよ?」

「い、いや……言い訳って……」

「私たちだけでは飽き足らず、スフィア王女にまで手を出してたなんてね」

「そ、そういう訳じゃ……」


 王城でのイベントを終えた俺たちは、荒くれ者どもの酒場へとやって来ていた。


 この場にいるのはツキとリーファとスフィだ。

 ハーピーの羽根のメンバーは残っているクエストをこなしに王都の外へと出て行った。シルビアとエリックは記者の取材のために王城に残っている。ミソラは報告書類があるからギルドに戻っている。豪鬼さんはソハヤノツルギの手入れをしにリィンさんの元へと向かっていた。


「ふふふ。ツキさんにリーファさん。そんなに『夫』に詰め寄らないでください。私は側室が何人増えても構いませんよ?」

「「私が正妻よ!!」です!!」


 微笑みながらそんなことを言うスフィに、リーファとツキが噛み付くように言葉を返した。


『こんなに美人の妻を何人も捕まえて、ベルもなかなかやるじゃないか』

「勘弁してくれよ、マスター」


 冷えたエールを持って来ながら、酒場のマスターが俺に笑いながらそう言ってきた。


『故郷にももう一人嫁がいて、龍の住処にも確か『許嫁』が居たよな?』

「……おい!!それは言わない約束だろ!!」


 俺がそう声を上げたが時既に遅し。

 三人の妻がこちらを向いて目を細めていた。


「ベルフォード……許嫁とはどういう事ですか?」

「い、いや……向こうが勝手に言ってるだけだからな……」

「あぁ……確か龍の住処には『あの娘』が居たわね」

「あの娘……リーファは知ってるのですか?」


 ツキの質問にリーファが軽く身振りをしながら話をする。


「龍の住処には龍王が住んでいてね、そこには一緒に愛娘が住んでるのよ」

「なるほど。王女と言う訳ですね」

「その娘はおいくつなんですか?」


 スフィの言葉にリーファは笑いながら答える。


「あはは。彼女はまだ十歳の女の子よ。今年で十一になるかしらね」

「何ですか。子供の戯言じゃないですか」

「まぁでも女の子は何歳でも『女性』ですからね。本気ではあるとは思いますが、敵では無いですね」


 そんな会話をしている三人に、俺は考えていることを話すことにした。


「龍の住処には『緋色(ひいろ)の欠片』と呼ばれる金属があるのは知ってるよな?」

「知ってるわよ。世界三大希少金属の一つね。それを使って私の指輪を作ってくれるって話しよね」

「リーファにはそれを使って指輪を作るんですね。当然ですが私にも特別なものを用意して頂けるのですよね?」

「ベルフォードさん。私も期待して良いんですよね?」


「ツキにもスフィにも、ここには居ないけどミルクにも。特別な指輪を考えてるよ。冒険者を引退したからな。時間だけは余ってるからな」

「それじゃあまずは私の指輪を作りに龍の住処に向かうのよね。いつ頃を考えてるのかしら?」


 リーファのその質問に、俺ら軽く思案した後に答える。


「そうだな……明日はツキの手入れをしたいからな。明後日くらいを考えてるよ」

「ふふふ。ベルフォードからお手入れをして貰えるのは今から楽しみです」


 俺のその言葉に、ツキが嬉しそうにそう答える。

 良かった。さっきから色々とあって、少し不機嫌そうだったけど、機嫌を治してくれたようだ。


「そうなのね。じゃあ私も明日は旅の準備をしておくわね」

「残念ですが、私は冒険者では無いのでここで待ってます。ベルフォードさん。どうか道中お気を付けて」

「ありがとう、スフィ。まぁ一ヶ月位は不在になるけど、エリックやシルビアも居るからな。あんなスタンピードはそう何度も起きるものじゃないから安心していいと思う」

「そうですね。何かあったとしても、次期国王として恥ずかしくない対応をしていこうと思います」


 スフィのその言葉に、俺は彼女の成長を見て取った。

 ははは。スフィはこのスタンピードを経験して、一つ成長したと思うよな。

 次期国王としての落ち着き。少しづつ身に付いていると確信が持てた。


「それじゃあ今日はここら辺でお開きにしようか」

「そうね。じゃあ家に帰りましょう」

「はい。今日は色々ありましたからね。ゆっくりと『四人で』お風呂に入って寝ることにしましょう」

「…………え……よ、四人????」


 俺のその言葉に、スフィが笑いながら答える。


「ふふふ。今日は私もベルフォードさんの家に泊まらせてもらう予定ですからね」

「聞いてない!!そんな話は聞いてないぞ!!」


「仕方ないわよね。王様から直々に言われてるんだもの」

「全員で入る。これを条件にするなら私も飲もうと思いましたからね。国籍の件もありますし、国王の要望はある程度飲もうとは思ってます」


「……お、俺の意見は??」


「そんなのある訳ないでしょ」

「ベルフォードは嫌なんですか?」

「妻と夫が同じお風呂に入るのは当然かと思いますが?」


「…………わかりました」


 ダメだ。もうここまで来たら俺の意見なんか通らない……

 理性だ……理性を強く持とう……


 覚悟を決めた俺は、三人の妻と共に家へと帰り、お風呂を共にするのだった……


 夢のような時間を過ごさせてもらったのは言うまでもない……

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