第二十二話 ~故郷へと向かう途中、大型サーペントを討伐することになった~
第二十二話
セルティックの街の北に位置する『ミラジュの森』を抜けた先にある集落『ササンドラ』が俺の故郷だ。
集落には老若男女。約百人程度で暮らしている。
住民同士の仲も良好で、基本的には穏やかな人が非常に多い。
また、海と隣接している土地柄を活かした海産物が有名で干物や加工品を売ることで生計を立てている。
それなりに高単価で取り引きして貰えるので、集落の規模の割には裕福な暮らしが出来ている。
唯一の難点は、最寄りのセルティックまでの移動の便が無いことだろうな。
海産物がいちばん美味しい『生』で届けられ無いことが悔やまれる。
そんなことを考えながら、ミラジュの森を進んでいると魔獣の気配を感じた。
この気配は……意外と厄介な魔獣だな……
「大型のサーペントの気配がするな。どうする?討伐するか」
「サーペントは移動速度が速いから、
大型サーペントはウォークライを使った大型ウルフと同じく討伐ランク。A+の魔獣だ。
だが、ランク以上に厄介な攻撃が多い。特に近接攻撃を主にしていると手を焼く相手だ。
Sランクとは言え、剣士と魔法使いのパーティでは楽に討伐出来る敵では無い。
『大型サーペントと言えど、ただのでかい蛇ですよ!!私とベルフォードの敵ではありません!!』
頭の中ではツキが討伐する気満々のセリフを吐いていた。
ははは。とても頼もしい愛刀だな。
「でも、ここで討伐しておかないと他の市民に危険が及ぶわね。多少リスクはあるけど討伐しましょう」
「そう言うと思ったよ。じゃあ討伐する方向で行こう」
こうして俺たち三人は、大型サーペントを討伐する方向に意見をまとめた。
そして、俺たちは歩いていた道から少しだけ外れて森の中を進んでいく。
すると、少しだけ開けた場所に居た大型のサーペントがこちらに向かって牙を剥いて威嚇をしていた。
「どうやら向こうもこちらに気が付いていたみたいだな」
「不意打ちで攻撃を仕掛ける。というのは諦めた方が良いわね」
『ベルフォード!!来ましたよ!!迎撃です!!』
大型サーペントが、その巨体からは想像も出来ないような速度でこちらに向かって攻撃を仕掛けてきた。
俺はツキの言葉と同時に月光を抜き放つ。
「行くぞツキ!!」
『はい!!』
守護の太刀・月天流 一の型 三日月の舞
襲い来る大型サーペントへ向けて、俺は月光を走らせる
だが、刃が届く瞬間。サーペントは身を捩った。
ぬめりのある鱗に覆われたサーペントの身体。
月光の刃は皮膚の表面を滑ってしまう。
『ぬめぬめしてて……き、気持ち悪いですね……』
「剣士殺し。と呼ばれる所以だな。正確に刃筋を通さないと、身体を断つことは出来ない」
俺がそう呟いてもう一度サーペントと向かい合うと、月光が赤い光に包まれた。
「
「ありがとう、リーファ!!」
『ふん!!たまには役に立ちますね!!』
彼女はサーペントに拘束魔法を当てるのが難しいので、こちらの攻撃力を上げることにしていた。
魔法使いとしてのリーファは敵の妨害魔法だけでなく、味方の戦力アップもこなせる。
また通常の攻撃魔法も高威力で放つことが出来る。
使える魔法が多岐にわたることから『千の魔法使い』とも呼ばれている。
「さて、ツキがぬめぬめした鱗が嫌いみたいだからな。触れずに斬ることにしようか」
『なるほど。アレをやるんですね!!了解です!!』
俺は月光を鞘にしまい、腰に構える。
その様子を見たサーペントは、好機と捉えたのか。再びこちらへと攻撃を仕掛けてきた。
如何にサーペントが剣士殺しの身体を持つとは言え、同じ挙動を見せるとは舐められたもんだな。
「守護の太刀・月天流
俺は腰に構えた月光を、サーペントが襲い来るよりも速くに抜き放つ。
すると、月光から赤みを帯びた金色の光の太刀筋がサーペントへと放たれた。
俺が放ったその太刀筋は、剣士殺しの身体を持つサーペントを真っ二つに両断した。
四の型 満月の閃は、
射程距離は五メートル程だが、俺の唯一の遠距離攻撃だ。
「お疲れ様、ベル」
リーファは軽く微笑みを浮かべながらこちらへと歩いてきた。
「ふぅ……とりあえず無傷で討伐出来て良かったな」
『流石はベルフォード!!かっこいいです!!』
サーペントの牙にはかなり危険な毒が仕込まれている。
満月の閃を外していたら危険だったかもしれないな。
両断したサーペントの死骸を回収袋の中に閉まっていく。
さて、俺の故郷まではあと半分ってところだな。
「俺の故郷まではあと半分って所だからな。少し休憩をしてから行こうか」
「そうね。軽く水分補給をしていきましょう」
『ベルフォード!!私はお手入れを所望します!!身体がぬめぬめしてて気持ち悪いです!!』
初太刀はサーペントの身体に触れてしまったからな。
それに、ウルフを討伐してから今に至るまで手入れをしてなかったからな。『永遠不滅』の能力があるとは言え、ツキの心のメンテナンスは必要だ。
「それじゃあツキの要望に応えて、身体を綺麗にしていくからな」
『ありがとうございます!!ベルフォードのお手入れは気持ち良いので大好きです!!』
「それじゃあ結界魔法を張るわよ」
「ありがとう、リーファ。いつも助かるよ」
リーファが魔法の詠唱を終えると、薄水色の光のドームが出来上がった。
こうして俺たちはリーファの張った結界魔法の中。
少し開けた場所で休息を取る事にした。
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