第二十一話 ~ファーストフードを食べながらこの後の予定を話していった~
第二十一話
「お待たせ。出来たてだから熱々だと思うよ」
「ありがとう、ベル。店員さんもご苦労さま」
『いえ。この位はさせて下さい』
リーファとツキの待つテーブルに食事を置いたあと、店員さんさ一礼をして仕事場へと戻って行った。
「わぁ、これがハンバーガーとフライドポテトですか!!とても良い匂いがしますね!!」
「俺とツキが頼んだのはテリヤキバーガーって言う、一番人気のやつだな。テリヤキソースとマヨネーズが美味しいんだ」
「私が頼んだのはベーコンレタスバーガーね。テリヤキソースは美味しいとは思うけどちょっと重いのよね」
「なるほど。同族嫌悪という奴ですね」
「……どういう意味よ、ツキ」
「ははは……」
そんな話をしながら、ハンバーガーが包まれた紙を広げていく。
「こうやって広げて、手に持つとソースで手が汚れないから、真似してご覧」
「はい!!わかりました」
ツキは俺の持ち方を器用に真似て、ハンバーガーを食べる準備を整える。
箸の使い方もそうだけど、ツキは飲み込みが早いな。
「口の周りが汚れるのはご愛嬌だと思って、後は恥ずかしがらずに大きく口を開けて食べるのがコツだな」
「なるほど、理解しました!!」
ツキはそう言うと俺の食べ方を真似して大きく口を開けてテリヤキバーガーを一口頬ばった。
「こ、これは……美味しいですね!!」
「ははは。気に入って貰えて嬉しいよ」
マヨネーズが嫌い。という人も居るからな。
ツキが美味しそうにテリヤキバーガーを頬張る姿を見て、俺は安堵の息を吐く。
「ふふふ。口の周りがべちゃべちゃよ。子供みたいね」
リーファはそう言うと、紙のナプキンでツキの口の周りについたテリヤキソースを拭った。
「あ、ありがとうございます……」
「そんな気にする事はないわよ。私も初めて食べた時はそうなったわ」
そんな二人のやり取りを見ながら、俺はコーラを一口飲んだ。
うん。このシュワシュワが美味しいよな。
「次はこのコーラという飲み物ですね。甘くてシュワシュワしてるという話ですが、真っ黒な見た目で沸騰したお湯みたいに泡が出てます。本当にこれは飲み物なんですか……」
ツキはそう言ってコップに注がれたコーラを見ながら訝しげな表情をしていた。
「ははは。見た目はアレかも知れないけど、飲んでみたら美味しいから」
「わ、わかりました。何事もチャレンジです!!」
ツキはそう言うと、コップを手に取ってコーラを一口飲んだ。
すると、彼女の目が驚いたように見開かれた。
「こ、これは……あ、新しい感覚です!!」
「びっくりして吐き出さなかったのは偉いわね」
「そうだな。エリックは驚いて吐き出したからな」
シルビアとエリックを連れてここに来た時があって、あいつもツキと同じように、俺と同じものを頼んでいた。
マヨネーズが少し苦手だったというのがわかったのと、コーラの炭酸がダメだったらしく、口から吹き出してしまっていた。
ははは。あの時は本当に驚いたけどな。
「最初は人の口にする物では無い様な見た目に嫌悪してましたが、一口飲んだら驚きました。こんなに甘くて美味しいんですね。炭酸というのも好きになりました」
「ははは。ちなみに炭酸は時間と共に無くなってしまうから、早めに飲んだ方が良いからな」
「そうなんですね。わかりました!!」
ツキはそう言うと、コップに注がれたコーラを少し多めに飲んだ。
「あ、そんなに多く飲んだら……」
「え、どうしたんですかベルフォー……けぷっ」
口から可愛らしいゲップを吐くツキ。
彼女は恥ずかしそうに顔を真っ赤にする。
そんなツキを指差しながらリーファが笑う。
「あはは!!コーラを慌てて飲むとゲップが出るのよね。女の子としてはこれは恥ずかしいわよね」
「むー!!煩いですよ、リーファ!!初めてなんですから仕方ないですよ!!」
「ははは。そんなに恥ずかしがらなくても、可愛らしいゲップだったよ」
俺がそうフォローを入れたが、ツキとしては嬉しくは無かったようで、目を吊り上げながら俺にも声を荒らげた。
「そんなのは嬉しくありませんよベルフォード!!」
「そ、そうか。ごめんなツキ」
そして、そんなやり取りをしながら俺たちは昼ごはんのファーストフードを食べ切った。
「それで、この後のことなんだけど。ここから俺の故郷までは森の中を進む感じになるんだ」
「ベルの故郷は意外と田舎だって聞いてたけど、馬車が出てないのはやっぱり大変なのかしら?」
「そうだな。でもまぁここから歩いて五時間位だからな。大した距離じゃないだろ」
「ご、五時間ですか!!??」
俺がサラッとそう言うと、ツキが少し驚いたように声を上げる。
「ははは。やっぱり驚くよな……」
「森の中を五時間進むのは冒険者なら大した事じゃないけど、一般市民には辛いわよね」
リーファはそう言うと、イタズラっぽい笑みを浮かべながらツキに提案をした。
「ツキは無理しなくていいわよ?刀の姿になれば疲れないと思うから」
「大丈夫ですよリーファ!!それに、刀の姿になったらまたベルフォードに抱きつくつもりですよね!!そうはさせません!!」
ツキは俺の右腕を抱きしめながらリーファを威嚇していた。
「まぁ、森の中を進めば魔獣と出会うこともあるからな。個人的にはツキには刀の姿で居てもらいたいと思っているけど」
「……そうですか。それでしたら仕方ないですね」
ツキはそんな台詞を残して刀の姿に戻った。
『あくまでも私がこの姿になるのはベルフォードを魔獣から守る為ですからね!!リーファとイチャイチャすることを容認した訳では無いですから!!』
「ははは。わかってるよ」
頭の中に響くツキの声に、俺は少しだけ苦笑いを浮かべながらそう答えた。
「それじゃあお腹も落ち着いてきたから店を出ようか」
「ふふふ。そうね。それじゃあベルの故郷へ向かいましょうか」
リーファはそう言うと、ツキに見せつける様にして俺の腕を抱き寄せた。
『やはり!!やはり!やはりこの女は油断ならないです!!もう既にベルフォードとくっついてるじゃないですか!!』
「邪魔者は居なくなったわ。先を急ぐわよ」
「じゃ、邪魔者は酷くないか……」
さっきのテリヤキソースを拭うところなんかを見ると、仲良くなれるようにも見えたけど、難しいみたいだな……
そんなことを思いながら、俺はセルティックの町を後にして、故郷へと向かう為に森の中へと足を踏み入れた。
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