青薔薇 竿星 海月骨

 朝焼けの中、木剣の打ち合う音がする。

 鋭く乾いた音が続いていく。

 

 街の高台。

 街の三方を囲う城壁を見渡せる小高い丘の上で、二人の少女が向き合っている。一方は逆手に握った双剣を縦横無尽じゆうおうむじんに走らせ、もう一方は長剣で流れるように舞うようにいなされていく。

 絶え間ない攻撃を繰り出す少女アルバの顔は苦くゆがんでいる。どうしようもない手応えのなさに焦る気持ちが剣に伝わっていく。

 一合、二合と競り合う内に、手数を封じられ劣勢を強いられる。

 受けてばかりであった少女エリザが不意に剣を振り、アルバは慌てて双剣を重ねて受ける。つばいとなり、ぎちぎちと刃先の擦れ合う音がする。顔を寄せ、エリザがささやく。

「いつも言ってるでしょ。速さだけじゃ駄目だって」

 投げられた言葉にほぞむ。

 そのまま押し負け、体勢を崩したところを狙われる。座り込み、防御もままならないまま、首元に木剣を突きつけられる。

 ああ、今日も負けてしまった。

 

 アルバは狩人かりうどだ。

 街の周辺に出現する魔物をエリザと共に狩っている。

 まだ幼い二人の少女。通常であれば学校に通っている年頃であるが、二人は早朝から稽古にいそしんでいた。

 既に大人顔負けの力量を持っているエリザに対して、アルバはまだ一歩及ばない。日々の稽古では指導される側である上、狩りの場でもエリザに幾度も助けられている。

 稽古で指摘されていることを改善しても、エリザはいつもその先を行く。追いつけないまま、今日も負けを重ねた。


 黙ったままうつむくアルバの手を、ため息をついたエリザが無理矢理むりやり引き上げる。

「明日も負けるかもね?」

「――――っ絶対勝つ!!」

 相方の挑発にくようにえた。

 アルバの言葉に薄く笑んだエリザは早々に稽古場を去って行く。地面に転がり着いた泥を軽く払い、後を追う。

「……ん」

 不意に後ろから呼ばれたような気がして振り返るも、そこには何も無い。

 首をかしげて、またエリザの後を追った。




「あーーーー! 今日も一本取れなかった!!」

「あはは、でも諦めないんでしょ?」

 机に座って突っ伏し、腕を伸ばして駄々だだをこねるアルバに、リヴィオスープを差し出す。受け取ったアルバは、もちろんと声を張り上げた。がみから滴る水が手拭タオルに吸われる。稽古後の汗を流すため、アルバが頭から水を被るのは朝食前の常だった。エリザも汗を流してはいたが、もうすっかり髪は乾いており、優雅に茶を飲んでいる。

 人数分の羹が行き渡り、焼きたて麪包パンや新鮮な野菜を取り分ける。

 円形の机を三人で囲み、朝食の時間だ。

「アルバは速度に重きを置きすぎ。力が乗ってないから、簡単に振り払えるの」

「そうはいっても相手に捕まったら意味ないじゃん。一撃離脱いちげきりだつで数切り込んだ方が魔獣相手にはいいと思うんだけど」

「まあ、それが良いときもあるけど……。逃げられないときもあるんだから、それだけじゃない方法を練習した方が良いわよ」

「確かに。エリザはどうしてんの? あたしより握力ないはずなのに」

「重心移動とかそこらへんよ。例えば……」

 朝稽古の反省はいつも朝食中に行われる。

 侃々諤々かんかんがくがくろんが重ねられていく。

 大口で麪包を食らうアルバと、楚々そそとして小さく麪包をちぎりながら食べるエリザ。正反対な姉たちの姿に笑いながらリヴィオも羹に口を付ける。

 狩人かりうどのアルバたちと学生の弟。食事量も当然、姉二人が食べる方が多くなり、高く盛られた麪包のほとんどはアルバとエリザが食らい尽くした。

「あ」

 弟の上げた声に、言い合いを止めぐるんと首を回す二人。姉らの視線を浴びたリヴィオが苦笑いをしながら、口を開いた。

「特別なことじゃないよ、赤茄子トマト買い忘れてたなって思って」

 その言葉に台所を見やれば、たしかにいつも積まれている赤々とした赤茄子がない。よく使うものは切らさないようにしているしっかり者のリヴィオにしては珍しいな、と思って。

「じゃあ、買うのついてくよ。買う量多いでしょ?」

 あまり考えもせずにそう申し出た。

 びっくりした弟の顔が、しだいに柔く解けていって、じゃあ、お願いするねと静かに笑んだから、任せな! と胸をたたいた。

「エリザはどうする?」

「私はいいわ。少し用事があるから」

「じゃ、早く行かないとな。いいもん売り切れちゃう」

 皿の上の残っていた野菜をんで、食事を終わらせる。

 小食のリヴィオも食後の珈琲コーヒーに手を付けていたから、少し待てばすぐに出られるだろう。


 そうして、出掛けた市場はひとであふれていた。

 真っ青な布の下、日差しを避けた人々が店に吸い込まれていく。

 日々の買いだしは弟に任せていたため、人が多い中での市場に来たのは久しぶりであった。

「大丈夫?」

「ちょっと面食らっただけ。もう大丈夫」

 立ち止まったアルバを心配して顔をのぞわいい弟。にかりと笑って頭をでれば、ぐわんぐわんと揺らされたことで不満げな顔をする。

 かかっと笑い飛ばして、手を取った。

 人混みの中でれないように結んだ手。小さい頃はとろいリヴィオを引っ張ろうとよく手をつないだものだが、最近は全然だったように思う。何時ぶりかつないだ手は、まだ小さく頼りない。まだ守っていられると安心したアルバが笑えば、弟はあきれた顔で握る手を強くした。

 市場を埋め尽くしそうな人混みにまれながら、リヴィオのみの店を目指す。

 市に屋台を出す店々はよりよい場所を陣取ろうと日々場所取り競争が行われているらしい。だから決まった位置に店はなく、張り上げられた客引きの声が道標になる。もっとも、それは不便だと案内板の貸し出しなども行われている。

 すれ違う観光客が持つ案内板をのぞては進路を変え、市場の奥まった場所に辿たどいた。

 往来のしにくい奥地に客は少ない。リヴィオが贔屓ひいきにしている店ならもっと入口側も取れるだろうに。不思議なこともあるものだといぶかしんだ。

 店先に商品は並べられていない。時折、リヴィオに着いてアルバが同行することもあったが、未だに何がどう売られているのかてんで理解できない。

「おっ、今日は姉さん連れか? ちび」

「うん。久しぶりにね。今日は何がおすすめ?」

 陽気な店主がこちらに目を向けたから軽く手を振る。

 今日は荷物持ちであって、弟の仕事こうしょうごとを邪魔するつもりはない。直情的と呼ばれる自分には駆け引きは向いていないから、少し離れたところから見守る。

 店と店の間で柱に寄りかかっていると、誰かが近づいてきた。

 恰幅かつぷくがよく、笑いじわの刻まれた女性。生成りのエプロンを掛けて、手に着いた水を払いながら店から出てくる。

 店主の奥さんだ。

「やぁ、エリザも元気でやってるかい?」

「うん、あいつも元気だよ。もちろんあたしも」

「それはいい。あんたらが孤児院から飛び出して独立したって聞いたときは驚いたがね、こんなちっさい身体で魔物を狩るんだから偉いものだよ」

 数年前の出来事を掘り返されて、ちょっと苦く笑う。

 あれにはアルバもリヴィオも驚いた。衝動性のかけもなさそうなエリザが、唐突に二人の手を引いて孤児院を飛び出したのだから。

「昨日も、中級の魔物を倒したんだろう? リヴィオも旦那をやり込めているし、ほんとあんたらの将来が楽しみだね」

 笑う彼女の姿に、何故なぜか後ろめたさを感じる。

 いつもなら笑ってうなずくことなのに。

 内心首をひねりながら、アルバは曖昧にうなずいた。

「そうだ、これ」

 言いながら渡されたのは甜果てんかだった。大人の握り拳二つほどの大きさで、東にある大陸の名産だ。全く見ないことはないが、それでも早々口にすることはない贅沢品ぜいたくひんである。

 それが乱雑に放り投げられる。

 放物線を描くそれらを慌てて受け止め、三つを腕の中に抱え込んだ。

「実家からいくつかもらってね。余っているから食べておくれ」

「え、でも売れるでしょ?」

「いいのいいの。さ、リヴィオも帰ってきたよ」

 受け取れない、返すと問答するも押し切られ、背を押される。

 合流したリヴィオに一つ受け取ってもらえば弟も申し訳なさそうな顔をした。似た者姉弟だと店の二人に笑われ、もう一つを腰に下げた袋に入れた。空いた手で購入物の詰まった袋を抱えて、また市場を進んでいった。

 


 買いに買い込んだ帰り道。

 前が見にくいほどに腕の中に積み込まれた荷物たちが視界を少しばかり邪魔してくる。

「前見えてる?」

「見えてるよ。いや、ほんとに買い込んだな」

「えへへ、自分だけだとなかなか量買えないから」

 リヴィオの腕の中にも荷物が積まれているが、アルバよりは余程低い。

 その割にふらつく弟の姿に、姉はため息をついた。

「あたしたちほどとは言わなくても、ちょっとは鍛えたら」

 アルバの提案に、リヴィオは無言の笑みを返した。やる気無いなお前。

 平和な会話を繰り返していると、一つ鐘が鳴った。街のそばに出た魔物を知らせる鐘だ。

「今日も出たんだね。姉さんたちは非番だよね?」

「そーだね、昨日行ったから。ま、第三警報ならそんなこと言ってられないけど」

「もう!めつなこと言わないでよ!」

 脅しを掛けるアルバに、リヴィオが体当たりする。

「ははっごめんって――」

 じゃれる二人が止まる。続けて鐘が鳴った。

 一つ、二つ。

 少し間を開けて三つ。

 

 それは、壁を破壊するほどの巨体あるいは群れが襲うことを示す第三警報であった。

 ばっと顔を見合わせる二人。

 鐘の音に静まりかえっていた人混みがざわつき始める。

「姉さん……」

 リヴィオの顔からはすっかり血の気が引いて、真っ青になっている。不安に駆られる弟を見て、アルバは湧き出る不安を身の内に押し込め、無理矢理むりやりに口角を上げる。

「大丈夫、お前は逃げな。避難場所は分かるだろ?」

 わしゃわしゃと頭をでてやり、うつむかせる。不安のにじんだ顔など見せられない。

「わ、かるけど……姉さんは? 剣も今持ってないでしょ」

「外に向かう途中に訓練所がある。そこで借りるよ」

 問答無用でうなずかせて、弟の背を押す。こちらを気にして振り返りながら進む弟にさっさと行けと手を振った。小さな背が通りの向こうに消えたのを確認して、アルバは一つほおを打った。

「っよし、行くぞ!」

 自分自身に気合いを入れて、アルバは戦場へ向かう。


 街は三方を壁に、一方を急峻きゆうしゆんな崖に囲まれている。

 広場に居たままでは、魔獣が単一か群れか、どこから襲ってきているのか把握できない。

 まずは現状把握だとアルバは高所を目指した。勢いよく壁を駆け上がり、突き出した露台ベランダの柵をつかみ身体を持ち上げる。わずかに高い隣の家へと飛び移り、くるくると回りながらひときわ高い時計塔へと辿たどいた。

 ここから見渡せば、街全体が一望できる。

 複雑に曲がった道と、それに沿って立てられた家々。屋根の色が統一された街は美しく、緊急事態でなければアルバも感嘆の声を挙げていただろう。しかし、今はそれどころでは無い。

 鐘は同じ律動を奏でている。

 ひとの群れが街の中心地を目指している。

 ではどこから逃げているのか、どこに魔物が現れたのか。

 目を皿にして眼下を見渡す少女。

「――見つけた」

 西側。わずかに上がる砂埃すなぼこり

 それを目にした瞬間。アルバの体は塔から墜ちて、屋根の上を駆けていった。


 三つの通りを抜け、城壁伝いに駆け、辿たどいた先。

 剣戟けんげきの音が徐々に大きくなり、怒声響きわたる戦場にアルバはいた。

 崩れた城壁。瓦礫がれきの上から街へ侵入してくる四足の獣。

 真っ赤に目を染めた獣が次から次へと瓦礫がれきを飛び越えてくる。

 異様な光景に硬直する。しかし、目に飛び込んで来た光景が、アルバの身体を突き動かした。

「エリザ!!」

 アルバよりも早く戦場にいたエリザありぼう。他の狩人かりうどたちと横並びで戦っていただろうに、いつの間にか突出し孤立していた友。

 いつから戦っていたのだろうか。

 細い腕から血を流し、肩で息をする彼女。

 無防備な背中に振りかぶられた爪に、考える間もなくアルバの体は動いていた。

 屋根から飛び降り、脳天に剣を突き刺す。痛みに暴れ回る魔獣に体重をかけ、押さえつける。徐々に動きを止めていく。光が失われ、半端に開いた口から涎が垂れる。

 絶命したそれから剣を引き抜き、エリザの背に回る。

「無事?」

「ご覧の通り。……助かったわ、ありがとう」

「いーえ」

 周囲は魔物に囲まれている。瓦礫がれきの隙間から見える赤い瞳が二人を狙っている。

 それでもアルバはうれしそうに笑っていた。

 背に感じる熱が、友を助けられた自負が、弟に張った虚勢が、アルバを強固に支えている。今なら、なんだって出来る気がした。

「さて、ボスを狩ってやるか!」

「私たちは露払いに決まってるでしょ、ばか」




 はぁはぁと肩で息をする。

 残骸の山の上。いくつもの魔物の死骸が散らばるその場所で、アルバは剣を支えにかろうじて立っていた。

 空に残った夕焼けが薄く辺りを照らす。西から迫る夜を背に、なんとか魔物の群れを追い払ったのだ。

「エリザ、はだいじょーぶ?」

「はっ、無事に、決まっ、てんでしょ」

 途切れ途切れの声が下の方から聞こえる。

 互いに怪我のないところを探すことが難しいだろう

 けれど生きている。

 遠くから、魔導救急援助隊ミドアが来たという声も聞こえてきた。

 ああ、本当に良かった。


 怪我けがの治療、倒した魔物の数や特徴の聞き取りなどで、時間を取られた。襲撃してきた魔獣の討滅自体は夕陽ゆうひが沈む頃に終わっていたというのに、家に帰り着いたのはもうどっぷりと夜も更け、満月が中天に浮かぶ時分であった。

 二人、扉の前に立つ。

 這う這うの体で家まで辿り着いた。

 朝、家を出た時はこのような事態になるなんて思っていなかったと、エリザと顔を見合わせて笑い声が漏れる。

 扉を開けると、夜闇と裏腹に暖かな光に包まれる。奥から香る匂いに空腹が誘われる。くぅと鳴った音が重なって、足早に部屋に入る。

 扉の隙間から光が漏れている。急ぐ気持ちをそのままに、扉を勢いよく開ける。

「――っ姉さん!!」

 開閉音に気づいたリヴィオの声がする。前掛エプロンを引っ掛けたまま、ぱたぱたとこちらに駆け寄ってきた。

怪我けがしてない? 前線で戦ってたって聞いたよ、ほんと? 大丈夫なの?」

 至るところに包帯を巻いている姉たちに、矢継ぎ早に心配の言葉をかけていく弟。不安げに顔をゆがめてる姿。

 心配かけて申し訳ないなと、普段なら思うはずなのに、アルバの心は急激に冷え切っていった。

 心を占めているのは高揚でも安堵あんどでも罪悪感でもなく、強烈な違和感だけだった。

 朝から僅かに感じていた疑念が噴出する。

 

 違う。

 違った。

 そうじゃなかっただろう。


 何が違うかもわからないのに、ただ今が間違っていることだけ分かっている。

 ただただ感じる違和に、視界が狭くなる。胸が苦しい。呼吸が速く浅くなる。

 駆け寄る二人の声が遠い。


 駆け寄るリヴィオは姉の無事を知って安堵あんどしていた。違う、悲痛にゆがんでいた。

 座り込んだあたしの背をで、気遣う言葉をかけていた。違う、叫び声を無理矢理むりやりに押し込めた声なき声をあげて、胸元にすがいていた。

 エリザは隣で狼狽うろたえている。――違う、違う

 エリザは冷たくなっていた。


 血で染まったエリザをおぼえている。

 瓦礫がれきの上に横たわり、虫の息の友の姿。夕焼けが彼女の命を奪っていった。

 会話の中で、死に向かっているのを、ひしひしと感じていた。


 死んだはずのエリザが、顔を青ざめさせている。確かに息をしている。血が通い、背に添えられた手にぬくもりを感じる。

 体を満たす安堵あんどと、むなしさ。


 これは、夢だ。

 かなうはずがない、夢の世界だ。


 ガラガラと崩れる音がする。


*****


 白い天井が広がっている。

 ほのかに暖かい右手を誰かが握っていた。ぴくりと動いたのだろう手に、顔を伏せていた少年が勢いよく、こちらを向いた。

「アルバ姉……!」

 蒼褪めた顔色。濃く刻まれた隈。痛んだ髪。

 見慣れた顔の、見慣れない状態。

 一人になってしまったアルバの家族。

 小さな弟。可愛いリヴィオ。

 みるみるうちにまっていく涙。大きな瞳を潤めかせて、ぼろぼろと大粒のしずくを落ちていく。

「なんで無茶したの……!」

「なんでって言ってもなぁ……。体が勝手に動いたんだよ」

 アルバは寝台ベッドに縛り付けられていた。いくつもの管が体のあちこちから伸び、繋がれた監視板から規則正しい音が発せられている。

 怪我の理由はもうどうしようもなかった。

 魔獣の襲撃の後、エリザを失った姉弟は学園に引き取られた。そこでアルバは対魔物戦闘を専門に、リヴィオは魔法薬調合を専門に学ぶことが許された。

 怪我をしたのは、学業の過程でだった。

 リヴィオに課せられた課題には彼が到底狩れない魔物の素材が必要だった。弟の代わりに獲ってこようと森の奥に入った際、茸の胞子を浴びてしまった。素材は捕れたものの、胞子は既に体中を回っていた。リヴィオに素材を渡したと同時に倒れ、現在に至る。

「次からは気をつけるから。な?」

「ゔん、ゔん……!!」

 声も出ないくらいに、泣いている弟の顔をそばにあった手拭タオルで拭ってやる。

「も、もう無茶むちやしないでね」

「わかってるよ」

 赤く腫れてしまった目元が痛々しい。詰所でも行って何か冷やすものを持ってこい、ついでに起きたことも伝えてくれ、と言えば、いそいそと立ち上がって、扉まで走って行った。

 出る直前、振り返って、満面の笑みでリディオが言う。

「じゃ、じゃあ、エリザ姉・・・・も呼んでくるね!」


「……え?」


*****



 暗い部屋の中。

 一人の少年が寝台に横たわる女のそばにうなれていた。女は目を瞑ったまま、死んだように眠っている。

「起きてよ……姉さん」

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