深夜0時、彼は呪いを吐く。

時雨治

月明かりの下、糸は繋がれる

深夜0時、彼は呪いを吐く。

「愛してる」


「ねぇ、春千夜くん聞いよ!昨日、彼氏の家行って、隣座ってたら急に、セックスしよ?とか言われたんだけどまじありえなく無い!?」


「あぁー確かにそれはありえないね。するならもうちょっと前戯とか雰囲気考えて欲しいよね。」


「でしょー!?やっぱ雰囲気考えない男はほんとクソよね」


邪悪な心が湧いてくる。なにが雰囲気考えてだ。お前みたいな穴とその無駄に育った胸しか取り柄ない女は搾精以外なにができる?そう思ったが春千夜は言葉には出さなかった。

そんな事を思っていた所に同級生の桜木朝美という女がこっちに寄ってきた。


「春千夜くん、ちょっとこっち来てくれる。」


返答をする間もなく、桜木は俺の手を引っ張り、屋上まで急ぎ足で連れて行く。屋上に着くと桜木は俺の目の前で服を脱ぎ始めた。セーラー服とシャツを脱ぎ捨て、ブラのホックをゆっくりと外した。

一瞬、ヤれるのかと頭が煩悩で埋め尽くされたが、そんな考えを更地にするほどの恐怖が俺を殴った。


上半身のほとんどが包帯で巻かれている。なにかの病気か?そうも思った。だが、そんな楽観的な予想は呆気なく散った。桜木が包帯を取った。

そこには、まるで桜の樹皮の様な皮膚が上半身を覆うようにあった。叫ぶ前に桜木が口を開いた。


「驚かないで。これは恋樹病という病気なの。」


俺が驚いているのを無視して、桜木は恋樹病について説明してくれた。恋樹病とは、恋をすると徐々に体が桜の木の樹皮のようになっていき、最終的には桜の木になってしまい、死んでしまうという病気らしい。

俺は唖然としていた。桜木は中々の美人である。尚且つ、スタイルも良く、おっぱいもできいときた。そんな美少女が俺に恋をしたという。嬉しさと反面、少し気味悪いという感想すら出てきた。

そんな中、桜木が1つ要望を言ってきた。


「だから、春千夜くんには私とセックスして欲しの。」


どうやら、桜木は死ぬ前に処女を卒業して死にたいと言うのだ。若干の嬉しさはあった。だが、この樹皮のような皮膚のやつとセックスするのは少し気が引けてしまった。そんな事を思っていたが、1つの考えが頭を遮った。こんな美人とセックスできる機会なんてほとんど回ってこない。なにより、クラスのマドンナである桜木の処女を奪っとなれば、俺は頂点に君臨できる。そう思った。

俺は二つ返事で承諾した。


その人夜、俺は桜木さんの家に家に行った。

ピンポンを押すと、家の中から桜木がでてきた。

どうやら、家族は旅行でいないとの事らしい。俺は誘導されるがままに桜木の部屋へと向かった。中に入ると、なんともきたない部屋が見えた。苦い顔をしている俺を尻目に、桜木は電気を消し、服を脱いだ。

そして、ベッドに座り、来てと小さな声で言ってきた。俺のギリギリ保っていた理性がダムが決壊したかの如く溢れた。


気づいたら隣には裸で寝ている桜木が居た。今までどんな事をしていたか覚えてはいないが。とにかく桜木の声とイク時の顔がかわいかったことだけは覚えている。

だが、ほかのことを考える力もなく、桜木を後ろから抱きしめて眠りについてしまった。


それから1週間はずっと桜木とセックスする日々が続いて行った。時には電マやらバイブを使って遊び、時にはイかされるだけの日もあった。だが、そんな中で桜木について色々な事を知った。桜木は実は案外ドMで甘い。そして、おっぱいはパッドだったという事だ。そんなクソほど幸せな1週間を過ごしていたある日、体の異変に気づいた。なにか木の樹皮の様なものができている。見覚えがあった。桜木の恋樹病だ。

目を疑った。なんで俺が恋樹病を発症するんだと。

しかし、原因は分かっていた。俺は桜木の事が好きになっていた。それはセックスをして桜木の事を知って行ったからだと思う。なにより、嫌だとは思わかなった。桜木の体を見たら樹皮が無くなっていた。

これは恋樹病が桜木から俺に移ったという事だ。

嬉しかった。これで桜木は死ななくて済む。

俺は桜木が起きる前に家を出た。もう大分恋樹病が広がってきている。どうやら、恋樹病は相手に恋をする程広がるのが早いらしい。俺の場合はもう顔まで樹皮が広がってきている。



あれからしばらくして、夜が来た。俺は近くの河川敷で座って、疑う心のない純粋な子供のように綺麗な月を見ていた。そんな俺を後ろからいきなり殴る奴がいた。桜木だ。桜木は俺の事を見るやいなや、殴ってきたかと思ったら、瞬きをした次の瞬間には俺に抱きついてきた。


「なんで私を置いてどっか行ったのよ、、、」


心が抉られるような気分だった。だが、俺は本心を言った。俺が恋樹病になった事。体がほとんど桜の木になってきている事。抱きしめられてもほとんど感覚が無いこと。全部をうちあけた。そうしたら桜木は涙を止め何も言わず俺の横に座ってきた。桜木は俺の方を見ながら語ってくれた。恋樹病は好きな人とセックスをして、相手が自分の事を好きになると自分の持っている恋樹病が移る事。移った恋樹病は深夜0時になると強制的に桜の木まで成長する事。


特に絶望は無かった。あったのはただ、まだこの時が続いて欲しいという願望だった。だが、時間は無情にも迫ってくる。残り3分。もう時間が無い。俺は桜木の手を引っ張り、目を合わせた。言葉が出ない。

残り1分。時間がない。ほんの少し、俺に勇気があれば。そう思った。そんな俺を桜木は微笑みながら俺にキスをした。もう意識がなかった。だが、それは俺に勇気をくれるには十分すぎるほど大きな力だった。


月明かりの下、俺は桜木を思いながら言った。

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深夜0時、彼は呪いを吐く。 時雨治 @ainoowri

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