第16話怪しいな

「何だろう、あの大きなトランク……」


 ぼくは、不思議そうに呟いて、首を傾げる。


 目の前には、見たこともない、黒く大きなトランク。


 その存在感といったら、ドンッと迫り来る威圧が凄い。


 中に何か入っているらしいけど、ぼくには全く検討がつかない。


 だから、気になって気になって、さっきから落ち着かず、回りをウロチョロしているんだ。


 これだと埒 《ラチ》が開かないと考えたぼくは、立ち止まってトランクの横に立ち、首をなが~くして中を覗き込む。


 あれれ?


 何か敷いてある……


 だけど結局、ぼくには何が敷いてあるのか分からなくて、その場で考えてみる。


「うーん、やっぱり分からないなぁ……」


 毎日お世話になっている気がするけど?


 このモヤモヤを何とかしたい!


 ぼくは、思いきって中の匂いを嗅ごうと、隙間を見た。


 鼻をヒクヒクと動かし、その隙間に近付いた刹那。


「確保!」


 ぼくの頭の上から、そんな声がかかったと同時に、白く柔らかいもので体を覆われた。


 抵抗してみるものの、そのせいで身動きが制限され……


 ぼくは半ば動くのを諦め、洗濯網と呼ばれているらしい白いものの中で、大人しくすることにした。


「捕まえるのに、30分も掛かっちゃった」

「これでやっと病院に連れていけるぞ」


 病院……あっ、思い出した……


 ぼく……熱があったんだ~


 自分の今の状態に気付いた途端、力が抜けたぼく。


 気持ち悪い……早くお医者さんへ連れて行って!!


 ぼくは恥ずかしながら、自らトランクに入ることを切望した。


お仕舞い


令和5(2023)年1月6日5:50~1月22日9:05作成


お題:大きな鞄に何かが入っている

Mのお題

平成29(2017)年10月30日①

「大きな鞄の中に何かが入っている」

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