第80話 三つ巴パニック

「あちゃー。合流されちゃったか」


 屋敷から少し離れた場所にて、与人たちの動きを見続ける影がそう呟いた。

 だがその表情からは笑みが浮かんでおり、余裕が見て取れる。


「まあ合流されたのは予想外だけど、まだまだこれからだしね。わざわざあんな物を使ったんだから一人ぐらいは、ね」


 影が不敵に笑いながら、与人たちの動きを見続ける。

 その後ろから、また別の影が忍び寄ろうとしていた。



「リント! 無事だった!?」

「人を気にしてる場合か! ……怪我は無いようだな」

「ああ。ティアが守ってくれたよ」

「のようだな。マンティス、よくやった」

「はは。だいぶ肝が冷えたけどね」


 ティアはそう言いながら体を擦りつつ二人に近づく。

 リルに何発か攻撃を喰らっているようで、その肌の何ヵ所かが青くなっている。


「……ごめん、ティア」

「はは、このぐらいはね。主くんを守るのが一番だからね」

「まあ守るのは命ではなく貞操だがな」


 場に少しばかり柔らかな空気が流れていたが、リントが顔を引き締め始める。


「後の話は動きながらするぞ。状況はかなり厄介そうだからな」

「リントは何か情報掴んでいるの?」


 与人がそう聞くと、リントは渋い顔をしながら答える。


「……どうやら、とあるバカが昼のあの媚薬をアイツらに飲ませたらしい」

「あの媚薬をかい? 誰かに聞かれていたのかな?」

「分からん。だが先ほど確認したが、確かに無くなっていた。戦術本も解決に動いている」

「ストラもこっち側か。良かった」


 知恵が回るストラが解決に動いていると聞いて、安心する与人。

 だがティアは顔を険しくしながら推測する。


「逆に言えば、他のメンバーには期待できない。そうとも言えるね」

「だな。鎧と海賊船と楽器は先ほど気絶させた」

「スカーレットとレーナとカナデを? 見たところ大きな怪我も無いけど、圧勝だったの?」

「いや? 二人が揉めていたいたからな。あとはさっきと同じ不意打ちだ」

「とは言え同士討ちの可能性があるのは良かった。上手く行けば媚薬が抜けるまで持ちこたえられるかもだね」


 ティアの言葉にリントは足を止めて前方を睨みつけながら答える。


「そう簡単には行かないようだな」

「えっ?」


 与人がリントと同じ方向を見る。

 そこには見慣れた姿が、二人並んでいた。


「発見。これよりマスターを確保します」

「主殿を視認。邪魔者を排除します」

「セラ! ユフィ!」

「……同盟を結んだのかな」

「だろうな。衝突してくれた方が楽だったが」


 そう言って二人は迎撃準備をするために前に出る。

 すると、轟音と共にすぐ傍の壁が弾け飛ぶ。


「見つけたぜ与人の旦那! 一緒に遊ぼうぜ!」

「ちっ! 最悪なタイミングで来たな! 牛!」


 突如現れたトロンはそのまま与人を強奪しようとするが。


「阻止。させません」


 そうはさせまいとセラがトロンに向かって大斧で攻撃を開始する。


「ちっ! 邪魔をすんじゃねぇ!」

「主! 今の内に引くぞ!」

「させません」


 リントの隙を狙ってユフィが与人の身を狙う。


「それはこっちのセリフ、だよ!」


 だが、ティアが間一髪の所でそれを阻止し引き離す。


「……」


 距離を一度取ったユフィであったが、戦意からして諦める気は無さそうである。


「……マンティス、短剣を無力化しろ。こっちは牛とゴーレムを何とかする」

「任せたよリントくん。こっちもそろそろ限界だから」


 とある媚薬から始まった騒動は、三つ巴のバトルとなっていくのであった。




 あとがき

 皆さま、またお持たせして申し訳ありませんでした。

 体調不良でしたが、何とか気力を持ち直す事に成功しました。

 まだ書くリハビリ中ですが、面白いと思ってくれればうれしいです。


 感想等はいつでも大歓迎です!

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