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嘘だ。
だって姉は、僕の頭を撫でているから。
僕のチャーハン、美味しかったよって。
「ねえ、姉さん」
ここは、どこなんだろう。
わからない。
どこにも、姉の死体はない。
僕と姉は、どこかもわからない場所で、二人で立っている。
「なに?尊」
「あのさ、僕姉さんのこと大好きだよ」
「本当に?」
「うん」
姉の手は優しい。触れるたびに、僕はむずむずして、心臓が早鐘を打つ。
「私もだよ」
「違くてさ」
そういうのじゃ、なくて。
もう、いいだろう。
認めてしまったのだ。
言って、しまえばいいのだ。
だって。
もう、それくらいしかできないじゃないか。
「好き。一番好き。愛してる。僕は、姉さんと結婚したい。そういう、愛してる」
下手くそすぎるな、と我ながら苦笑する。子どもみたいな告白だ。
いいよ、子どもなんだから。
「うん。それも私もだよ」
姉が、僕を抱きしめる。
向き合って抱きしめ合うと、相手の表情がわからない。
でも、笑ってはいない気がした。
少しして、ようやく混乱が追いついた。
僕は、何を言われたのだろうか。
「私も尊が好き。」
だからさ。
「早く、言って」
姉は耳元で、甘えるように囁いた。
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