エピローグ 紅羽先輩、あけおめです

「あ!俺大吉が出ました!紅羽先輩は?」


「私も大吉!」


「一緒ですね!しかも大吉!」


 俺はその大吉という結果と一緒に文章も少し書かれてあったので、それを読むことにした。


「愛するものを愛せよ、幸せになる道はその道だけだ…その道を違えれば、幸の道が不の道へと転ずる…らしいです、不の道ってなんか怖いですね」


「そう?新くんがずっと私のことを愛していてくれるなら、ずっと幸せで居られるって意味じゃないかな?」


「なるほど…じゃあ、全然怖くないですね」


「うん!私も読んでみよっと…愛深き者よ、愛するものをいかなる時も想い続けよ、さすれば愛する者との未来永劫幸の道が待っている…だが、愛するものを失ったとき、急落する故、常にその時の尊さを忘れてはならない…だって」


「急落って…どうして最後の文に怖い一文を入れてくるんですかね」


 大吉なんだし、ただただ良いことだけを書いてくれればいいのに。

 俺がそう考えていると、紅羽先輩が大人な回答をした。


「きっと、今ある幸せをより実感するために書いてくれてるんだよ、それに…新くんを想い続けると、私は新くんと幸せになれるんだって!」


「良いことですね…俺ももちろん、紅羽先輩のことを想い続けます」


「うん…ありがと」


 紅羽先輩は笑顔で笑った。

 俺たちは広い神社の人気の無いところに移動してきた。


「…去年の今頃は、そもそも私は新くんと出会ってすらいなかったんだって考えたら、本当に信じられないね」


「俺も…信じられないです」


「でも、今はこうして年の幕閉じと幕開けを一緒にしようとしてる…ね、新くん」


 紅羽先輩は俺の唇に軽く自分の唇を重ねた。


「え、く、紅羽先輩!?」


 もちろん俺はそんなことし慣れているわけではないのでいきなりそんなことをされると普通に動揺してしまう。


「さっきのおみくじの言葉を借りて…未来永劫、ずっと一緒だよ」


 さっきまで動揺していたが、紅羽先輩のその言葉を聞いて、俺はすぐに動揺が消し飛び、即答する。


「はい、もちろんです」


「…あ、後もうすぐ年明けだよ、新くん」


「え、もうですか!?」


 楽しい時間というのは、本当に早い。


「あと三十秒だって」


「本当に早いですね」


「年明けの瞬間はジャンプとかしちゃう?」


「あ!それ考えてなかったですね!」


 年明けの時に何をするかなんて、もっと前から考えておけば良かった…!こんな後数十秒の時に思いつくなんて…!


「ジャンプにしますか?」


「うーん、ちょっと待って!考えるから!」


「もうあとちょっとですよ!?」


 俺はスマホを取り出して時計を見────あと7秒!?


「紅羽先輩!本当にもう年明けですよ!」


 人の集まっている方から声が聞こえてくる。


「五!!」


「ん〜!」


「四!!」


「ジャンプで良いですよね!?紅羽先輩!」


「三!!」


「あ!決めた!」


「二!!」


「え、何するんですか!?」


「一!!」


 次の瞬間、紅羽先輩は俺のことを強く抱きしめて、俺の耳元で囁いてきた。


「来年、結婚しようね」


「ハッピーニューイヤー!!」


 大人数が叫んでいるのが人気の無い俺たちが居るところまで聞こえてきた。


「新くん…あけおめ!」


「あけおめです」


 …年明けは本当に良いことではあるが、年明けの間際にプロポーズって。

 …やっぱり、紅羽先輩は俺のことをいつもドキドキさせてくれる。

 そんな紅羽先輩だから、俺は…ずっと一緒に居たいって思えるんだ。


「あ、さっきの返事しますね、紅羽先輩…こちらこそ、よろしくお願いします!精一杯紅羽先輩のことを幸せにしてみせます!」


「うん!私も!今年もよろしく────ううん、私と人生、よろしくね!新くん!」


「はい!」


 俺と紅羽先輩は年明けと同時に、改めて一生を添い遂げることを約束した。

 年が終わって、その瞬間に年が明ける…俺たちは、未来永劫、ずっと一緒だ。



【あとがき】


 この作品はこれにて完結となります。


 ここまでお読みくださった皆様、本当にありがとうございました。


 詳しくは、近況ノートの方にて語らせていただこうと思いますが、二日後にラブコメの新作品を出させていただこうと思いますので、もしご興味があればそちらも楽しみにしていただけると嬉しいです。


 ※後日談が出る可能性があることを、予め告知させていただきます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る