第69話 紅羽先輩、初詣です
「紅羽先輩、すごい人の数ですね」
「うん!みんな綺麗な着物とか着てるね〜」
初詣をするべく神社へとやって来た俺たちだったが、もちろん俺たち以外にも人はいっぱい居て、しばらく並ぶことになりそうだ。
「そうですね〜」
「…新くんは、他の子の着物姿じゃなくて、私の着物姿だけ見ててね?さっきも言ったけど、私は新くんに綺麗だって思ってもらいたくて着物を着てるんだから…それに、他の女の子のこと見てたら初詣どころじゃ無くなっちゃうからね」
もちろん、彼女である紅羽先輩が俺のために着物を着てくれているのに他の人のことを見るのなんて言語道断ではあるが、それにしたって言い方が怖い。
だが俺だって他の人のことを見る気は元から無いので、紅羽先輩に安心してもらう意味も込めて言う。
「もちろんですよ、紅羽先輩のことしか見ません」
「うん!…私も、新くんだけを見てるよ」
それからしばらくの間並ぶことになったが、紅羽先輩と雑談したりして、全く暇にはならなかった。
…そして、とうとう俺たちの番が来た。
「お祈りしよっか!新くん!」
「はい!」
俺たちはそれぞれ硬貨数枚を賽銭箱に入れてから二人で一緒に鈴を鳴らし、両手を合わせ目を閉じた。
「……」
紅羽先輩とずっと楽しく一緒に居られますように。
…短いお祈りごとにはなってしまったが、今一番最初に思いついたのがこのお祈りだったため、それで良いだろう。
お祈りを終えた俺は、ゆっくりと目を開けた。
「……」
…紅羽先輩はまだお祈りを続けているようだ、少し待っていよう。
それから約一分後、紅羽先輩がお祈りを終えたのかゆっくりと目を開けた。
「…新くんも、もうお祈り終わった?」
「はい、終わりました」
「じゃあ、次の人たちも居るし、移動しないとね」
「そうですね…あ!おみくじ買いませんか?」
「それ!私も同じこと言おうとしてた!」
おみくじ売り場に移動する間、俺は紅羽先輩にお祈りについて聞いてみることにした。
「紅羽先輩は、どんなことをお祈りしたんですか?俺は、紅羽先輩とずっと楽しく一緒に居られますようにってお祈りしました、言いたくなかったら言わなくても大丈夫です」
「言わない理由なんて無いよ!私も、新くんとしたいことをいっぱいお祈りして、最後に新くんとずっと楽しく一緒に居られますようにってお願いしたよ!」
「そうですか…嬉しいです」
「新くんがニッコリしてる〜!可愛い〜!」
「っ…く、紅羽先輩!おみくじ無くなっちゃうかもしれないので、早く行きましょう!」
「今度は照れてる〜!」
俺は紅羽先輩に顔を見られないために少し早歩きでおみくじ売り場に向かう。
「あ、新くん!ちょっと待────えっ!?」
「え、どうかしま────」
俺が振り向いた先では、紅羽先輩が今にもこけそうになっていた。
…そうか、紅羽先輩は着物で慣れない下駄を履いてきてくれていたんだ。
俺は全力で走り、紅羽先輩がこけて倒れそうになっていた直前に紅羽先輩の手を取って紅羽先輩がこけることを防いだ。
「紅羽先輩、大丈夫ですか?すみません、俺が早歩きなんてしたばっかりに」
「ううん!気にしないで!助けてくれてありがと!」
「…あれ、なんか赤くなってませんか?」
「…新くんがかっこいいのが悪いよ」
「え!?…それはともかくとして、こけたら危ないので、手繋ぎませんか?」
「うん!」
俺と紅羽先輩は手を繋ぐと、改めておみくじ売り場に向かった。
そして…
「着いた〜!えーっと、一回三百円でおみくじ引けるんだって!一緒に引こっか!」
「はい!」
俺と紅羽先輩はおみくじを引き、それぞれ出てきた紙を広げた。
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