第51話 紅羽先輩、心配しないでください
「あはは、二人とも飲めないんだね」
静観していた明日真が小さく笑っている。
明日真のカップを覗き込んでみると、そこにもコーヒーが入ってきた。
…明日真のカップは紅羽先輩が入れていたから明日真のコーヒー何コーヒーなのかわからないな。
「明日真もブラックコーヒーなのか?」
「ううん、別にブラックも飲めるけど今日は気分じゃなかったから苦く無いのにしてもらったよ」
「そ、そうか」
俺はコーヒーなんてほとんど飲んだことがない、ブラックコーヒーについてはおそらく人生で一度も無い。
…俺も今度挑戦してみようか。
とにかく今はブラックコーヒーの苦味にやられて苦しそうな顔をしている紅羽先輩と紫雨のことを気遣うことにした。
「紅羽先輩、紫雨も、大丈夫か?」
「う…ん、もちろん!」
「顔が…そうは、言ってないですよ…陽織、さん…」
「そっち、こそ…」
「……」
このままだと二人ともしばらく回復しないと判断した俺は、二人に水を持ってきて、二人はその水を口にした。
「っはぁ!ありがと!新くん!…別にコーヒーなんて大したこと無かったけどね!」
「…ありがとうございます、天城さん、特にコーヒーが苦かったということはありませんでしたが」
二人とも水はしっかりと飲んでいるがそれでも強がりは続けている、こういうところは似ているようだ。
俺は二人が少し落ち着いたところで、紫雨と明日真に話題を振ってみることにした。
「12月は色々とイベントごとが多いと思うが、紫雨と明日真は何か予定とかは合ったりするのか?」
「特にありません」
「際立ったのは無いかな」
別に予定は人それぞれだから良い悪いも無いがなんだか寂しいな。
この二人は全く気にしていないんだろうが。
俺が二人に見習わないといけないところもあるなと考えていると、隣に居る紅羽先輩が明日真に話しかけた。
「明日真くんは彼女とか作らないの〜?顔は新くんには負けちゃうけどそれでも十分かっこいいと思うし性格も柔らかそうだし」
美少年である明日真に紅羽先輩は直接そう言ったが、明日真は特に気にした様子無く答えた。
「はい、今の所好きだと思える女性を見たことが無いので、恋愛はしないです」
「へ〜、告白とかされない?」
「何度かされたことはありますが、全て「君と恋人になる理由が無いから無理かな、ごめんね」と言って断りました」
「うわぁ…」
紅羽先輩は若干引いている。
…断るとなればいっそ容赦ない方が良いのかもしれないが、ここまでストレートに断られるというのはかえってどうなんだろうか。
明日真に告白した女子たちには強く生きてほしいな。
「新くんにもそのくらいの鋭さ持ってほしいよね〜」
「…え?」
ここで、何故か矛先が俺に向いてきた。
「前の文化祭で新くんのクラスの子軽く見た感じでも新くんのこと好きそうな子三人は居たよ?」
「三人!?居ないですよ絶対そんなに!明日真からも紅羽先輩に言ってくれ!」
「うん、僕たちのクラスで天城くんに好意を持ってる人は三人じゃなくて四人だね」
「え!?」
「は…!?」
俺と紅羽先輩は同時に驚く。
「四人も…あ、新くん!もしちゃんと告白されても断んなきゃダメだよ?」
「わかってますよ」
「本当にわかってる…?大丈夫?ちゃんと断るんだよ?」
「わかってますって!心配しないでください!」
…恋愛話というのはやはり心が乱されてしまうな。
…それはそうと。
「もし二人とも予定が無いなら────」
クリスマス…は、紅羽先輩と二人で過ごしたいから…
「────クリスマスイブとかこの四人でパーティーでもしないか?」
「流石新くん!良いこと思いつくね!私はもちろんオッケーだよ!」
「僕も大丈夫、紫雨さんは?」
「問題ありません」
軽い気持ちで提案したことだが、案外あっさりとみんなオッケーを出してくれ、クリスマスイブもこの四人で過ごすことになった。
そして俺は密かに、クリスマス…紅羽先輩と二人で過ごすことについて、ある行動を決意していた。
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