第34話 紅羽先輩、言い返せますね
紅羽先輩と恋人になった翌朝。
今でも俺があの紅羽先輩と恋仲になったということに現実感を持てない俺が居たが、スマホの通知欄を確認するとそれが現実だということがわかるメッセージが飛んできていた。
『おはよー!新くん、改めてこれからもよろしくね!』
改めて…これは、昨日俺と紅羽先輩の関係性が変わったから送られているメッセージ、つまり昨日の告白は現実だったということだ。
『おはようございます、こちらこそよろしくお願いします!』
紅羽先輩にメッセージの返信をしてから、俺は朝ごはんを食べるべくリビングに向かおうと思った…が。
五秒と待たない間に、紅羽先輩から返信が返ってきた。
『もうご飯って食べちゃった?』
ご飯を食べたかどうかの確認…世間話だろうか。
『食べてないです、これから食べようと思って』
『そうなんだ!よかったら一緒に食べない?』
紅羽先輩と朝ごはん…この一年くらい朝ごはんは基本的に一人か姉さんと一緒にご飯を食べるかの二択だったため、それ以外の選択肢というのは新鮮だが、これからはそれが普通になっていくのかもしれない。
俺は断る理由がないため、もちろん承諾する。
『やった!じゃあ新くんのお家向かうね!』
『わかりました』
一度ここでメッセージは終わる。
…今から紅羽先輩が家に来るのか、家で寝る時の服を見られるのは恥ずかしい気もするし、一応部屋着に着替えておこう。
俺は軽く着替えてから、リビングに向かう。
すると、そこには姉さんがいた。
「姉さん、おはよう」
「おはよう新、もうご飯できてるから食べちゃっていいよ!」
「あ…それなんだけど姉さん、朝ごはんに紅羽先輩も呼んでいい?」
「…え?」
俺がそう言うと、姉さんは明らかに不機嫌そうな顔をした。
「…どうして?」
「どうしてって…」
…素朴な疑問ではあるが今の俺には困る質問だ。
実は昨日紅羽先輩とお付き合いすることになった、と言えば朝ごはんに呼ぶ理由の説明はできるが、なんだか他に色々と厄介なことが出てきそうで悪手なような気もする。
ここは当たり障りのない答え方をしよう。
「普段お世話になってる人だし、たまには一緒に朝ご飯でも食べたいなって」
「朝ごはんは私と新の二人の時間だからだめ!ちゃんと今日も私が美味しい料理作ってあげ────」
姉さんが話していた途中だが、インターホンが鳴った。
「え?もしかして…」
「…もう来たみたいだ」
俺が承諾したからもちろん来ることに対して驚きはしないが、まさかこんなにも早いとは思わなかった。
「…私追い返してくるね」
「え、姉さん!ちょっと待って」
俺が姉さんのことを引き止めるのも虚しく、姉さんはすぐに玄関に行ってしまった。
俺もすぐに玄関に向かう。
「あ、新くんのお姉さん、こんにちはー」
「…こんにちはじゃなくて、朝は私と新の二人だけの時間だから悪いけど帰ってもらってもいい?」
姉さんは普段から誰彼構わずこんな態度を取っているわけではないが、紅羽先輩に対してはこの態度を取ってしまうようだ…同じ大学生だからとかっていうのも関係あるのか?
「でも新くんは承諾してくれたよ?」
「それは新がまだこの朝の兄弟だけの大切な時間の価値を分かってないだけ、少なくとも陽織さんみたいな部外者が割って入っていいような時間じゃないの」
前、紅羽先輩と姉さんの話の中でも、似たような話が出ていたな。
その時は紅羽先輩は何も言い返すことができなかった。
「…実は!今は違うの!」
「…え?」
だが、あの時とは違い、今ならハッキリと言い返せると言わんばかりに紅羽先輩は靴を脱いで俺のところまで駆け寄ってきて言った。
「私!新くんの彼女になったから!」
「…は!?」
姉さんは、珍しく驚いた表情を俺たちの前で見せた。
…姉さんは俺たちが恋仲になったということを知って、どう思うんだろうか。
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