第22話 ウッドバーレンへの道
▽ ▼ 場所は変わってギルド長室 ▼ ▽
ギルド長室に戻ったセレン。ソウケイとホウモンがソファーで雑談している。戻ってきたセレンに気づくとホウモンが口を開いた。
「早かったなセレン。あの男はどうだった」
「異世界教へ一石投じるのにいい人材かもしれんな」
「彼はバスリングの仲間として戦ってくれるだろうか」
腕を組むソウケイにセレンが口を開いた。
「どうかな、どこにも所属しないで世界を巡る私と同じような生き方を選ぶかもしれんな。いや……ミヅキ次第か」
「セレン、ミヅキってウタハ長老の聖人様の? 彼女がどうかしたのか」
「何でもないよ。私もそろそろ旅に出るよ」
「セレンさんは我がバスリングの将軍にはなってはもらえぬか」
「無駄だよソウケイ、それにセレンがバスリングに所属したなんてことが広まってみろ。全方位から危険な国として監視されるようになるぞ」
「それもそうですね。セレンさんの強さは他国にとって驚異でしかないですから」
「お前ら、私を化け物扱いするな」
こうしてセレンは旅立った。
△ ▲ △ ▲ △
「ふぅー」
どんどん女性化しているような……。
目立たないように丁寧な口調で……強さを隠すように……いや、男らしく振舞った方が変に声を掛けられないかも……。かといって男らしく振舞うなんてできないよー。
でもでもだって……… (ブツブツ) ………よし。
「決めた! 自分のことを
天高くこぶしを突き上げた。
「あらお嬢さん、何をぶつぶつ言ってるの?」
ひよりむに乗った女性が並走してきた。60歳くらいだろう
おばさんは気にする様子もなく話しを続けた。
「あなた、リュウコウに向かっているんでしょ。気をつけなさいよ。ウッドバーレンの女王は用心深くてね、民にも姿を見せることは滅多にないわ」
相槌を返すのがやっとなペースで延々と話は続いた。あまりにも長い話しに辟易。
なんとなく頭に残っている言葉を要約すると
──
ウッドバーレン女王は用心深く民衆にも姿を見せることはほとんどない。
閉鎖的で他国の思想を持ち込むことを嫌う事から異世界教を禁止し、鎖国的な法令が多く自国民第一主義の国家
──
「あの」──発した言葉をかき消すように彼女の話は続いた。
「そうそう大事なことを忘れていたわ。女王はニッケに神子を幽閉しているって話よ」
「ニッケ……ですか?」
「そうよ、ニッケには4大神殿のひとつマルコ聖堂があるの。それにしてもいやーねー、ルカ聖堂のウタハ様が失脚したり最近は変なことばかり起こるわね」
「なんで女王が神子を幽閉するんですか?」
「あ、そろそろウッドバーレンの領地に入るわ。この国では余計なことはしないほうがいいわね。じゃあねお嬢さん」
おばさんはひよりむのスピードを上げて走り去っていった。
「長かった……なんとなく琢磨くんを思い出すな」
……ん? 待てよ。琢磨くんとそんなに仲良くなかったはず。なんで琢磨くんのことが浮かんだんだ……あれ? 琢磨くんの話しを女性と聞いているイメージが……。
一瞬だけ浮かんだイメージ。刹那に
なんだったんだ今のは……記憶にない過去の異世界の記憶と関係があるのか……。
『グエーグエー』
頭から聞こえてくるハルの鳴き声。明らかに恐怖を感じている。常に一緒にいるからなんとなく感情が分かる。
後ろから駆けてくるひよりむの集団を警戒しているよう。
振り返った先で見たのは……結衣!。
周囲の人間に知っている人はいない……ふっと光輝や琢磨、憲久や雫のことが頭に浮かんだ。
なんで4人が頭に浮かんだんだ……何か重要なことのようだが……それになんでこんな所に結衣が! 光輝とともに行方不明になっていたはず……結衣もこっちの世界に……それなら警察がどこを探したって見つかりっこない。
物凄いスピード。声を掛ける間もなく走り去っていった。
リュウコウに向かったユピア、ライン、セッカ。そして通り過ぎていった結衣。首都リュウコウを擁するウッドバーレンでなにか起きる気がしてならなかった。
□ ■ □ ■ □
「はぁー疲れた」
ウッドバーレンの首都リュウコウに向かっていた。
「自動で向かってくれるのはいいけどさすがに海ばかりで飽きるな」
走れど走れど走れど見える景色は海ばかり。最初はだだっ広い海に感動もしたが、そんな気持ちはもって3分、既に体をべたつかせる潮風の気持ち悪さしか感じない。
「しまった。かのんさんに会いに行くのを忘れてた……約束してたのに悪いことしちゃったなぁ」
遠くにぼんやりと見えてきた地上、大海原を始めた見たときより感動した。
「うーらー」
「「「うーらー」」」
思わず視線が声の主に向いた。フードを被った十数人の者たちが海に向かって一生懸命に祈りを捧げていた。
一人が「うーらー」と発すると続いて「「「うーらー」」」と声がハモる。
フードの者たちが祈りを捧げている先には不思議な形をした山が見えた。
「ビレインバアス様、どうか我らのもとへ」
「「「ビレインバアス様、どうか我らのもとへ」」」
ヤバイ、これは関わってはダメなやつだ。直感がそう告げる……。分かっていても横目でチラチラ見てしまうのは初めての不思議な行動に非日常を感じたからなのかもしれない。
さっきのはなんだったんだろう。いろいろと想像してしまう。邪神の復活か、降臨の儀式なのか……考えは止まらない。無意識のうちにブツブツと喋っていたようで周囲のひとたちの視線に恥ずかしくなった。
「いつのまにか独り言が増えたなぁ。ふぅー……って、なんだあの行列は!」
ずらりと列が作られている。ひよりむ、ひよりむ、時々馬車。なんでこんな所で渋滞が起きているんだ。
分かっているかのようにスピードを落としてひよりむは最後尾に並んだ。
「やっぱり今日もかー」
頭の裏で手を組んでいるおじさんが空を見上げた。
「何かあったんですか?」
「その反応、お前さんは
おじさんの言葉に閃いた!
橋の途中でおばさんから聞いた閉鎖的な女王。そしておじさんの言葉とこの行列。ここから導かれる答えは……『入国審査』だな。
あったなーゲームでも、フラグを立てないと入れない国とか。
レストランでゆっくり食事しているんかい。と思うほどにゆったり進む行列。ずっと座りっぱなしで疲労困憊している体に追い打ちをかける所業。つ、辛い……
そして時は無駄に流れた…… …… …… …… ……
…… …… …… 振り返ると『いつのまにこんなに並んだんだ』と思うほどの人。
…… …… ……
…… …… …… やっと見えてきた建物。
…… …… ……
…… …… …… あと、ちょっと。
「次のかたー」
やっと順番が回ってきた。ぐったりしている体に気合を入れて姿勢を正した。
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