第11話 小倉・カフェ

先輩のせいで、先輩の妹さんと私の二人にされてしまった。


先輩がいないと、話題がなく無言のまま二人が向き合っている状態は気まずい。


「あの、この近くにカフェがあるのでそこに行きましょう」


「あ、はい」


とりあえず、立っているだけなのも悪いと思うので、この近くにある小洒落たカフェに入る事にした。


「綾さんは高校生ですか?」


「はい、高校2年です。あと、綾でいいです。それか、綾ちゃんで。」


「じゃあ綾ちゃんは、何か飲みたい物はある?私が奢るよ?」


先輩の妹さん、それも今日会ったばかりの人に呼び捨ては気が引けるので、『ちゃん』呼びで呼ぶ事にした。


「じゃあ、オレンジジュースで」


ジュースぐらいなら奢れるし、綾ちゃんにも私に好印象を植え付けて、先輩にいい感じの事を吹き込んで貰おうかと思い、ここは私が奢る事にした。


それに、年下の人に割り勘は大人気ない気がするしね....


「すいません。コーヒーとオレンジジュースをください。」


「はい、少々お待ち下さい。」


このカフェを営んでいる、白髪混じりのおじいさんに注文をした。


「小倉さんは意外にコーヒーって苦いのに飲めるんですね。」


「まあね、私はもう大学生だから」


コーヒーが飲めるだけで、関心されて少し嬉しかったので、多少鼻を長くして、大学生アピールをした。


「はい、コーヒーとオレンジジュースです。ごゆっくりどうぞ」


「「ありがとうございます」」


おじいさんは、お盆に乗せたコーヒーとオレンジジュースを持って机に置いて、机にある筒状の所に注文票を置いてスッとカウンターの方に帰って行った。


私はコーヒーに付いている、ミルクと角砂糖5つを入れてクルクルとかき混ぜて飲んだ。


「小倉さんはどうして兄さんの家に行ったりするんですか?」


「そ、それは〜先輩の家にゲームがあったり楽しいからで...」


「ふ〜ん」


綾ちゃんは不機嫌なのか・喜んでいるのか表情が全く変わらない。どんな事を考えているのかが分からない。


綾ちゃんは、多分私と話す事があるから、先輩と一緒に帰らなかったのだと思うけど、どんな用があるのか....


もしかすると、先輩についての事なのでは!?


「兄さんを虐めないでください」とか「兄さんに近づかないでください」とかかもしれない。


先輩の前では、色々いじっているから言われそう...

もしかしたら、先輩に何か聞いているかも知れない。


それがもし、私の悪口だったらどうしよう...


「私は、小倉さんに兄さんについて話したい事がありまして」


やっぱりだ。やぱり、先輩についてだ...

先輩をいじっているのは、本当は照れ隠しである事を伝えないと、綾ちゃんに嫌われてしまうかもしれない!!


「綾ちゃん誤解なんです。」


「誤解?」


急に誤解と言われて、綾ちゃんは顔を傾けて疑問そうにしている。


「そう、先輩をいじっているように見えるけど、実は違うの」


「どんな感じに?」


「あ、あれは、先輩に言われてやっているの。先輩は、実はMなの!!」


「え?兄さんがMだったんですか。やぱり、大学生になると性癖が歪むって聞いた事がありますが本当だったとは....」


「う、うん。でも、綾ちゃんがいる時に先輩をいじるような事言ってごめんね」


急に、綾ちゃんに私が先輩の事が好きだとバレたくないと思ってしまい、先輩がMと言う事にしてしまったが、綾ちゃんに謝る事ができた。


「いえ、大丈夫です。むしろ、兄さんがMだった事に驚きです。あと、私が言いたかった事は、友達が少ない兄さんをこれからもよろしくと言いたかったので小倉さんと二人で話したかったのですが....まさか兄さんの性癖が分かるとは...」


先輩ごめん。今度、何か美味しいの作ってあげるから。っと心に誓い、私についての事ではないと分かり安心したので、そろそろカフェから出る事にした。


「そろそろ帰ろっか。」


「はい。私も兄さんの夜ご飯を作らなくてはならないので。」


注文票を持ってレジに向かった。


「750円です。」


「はい」


レジもやっているおじいさんに、お会計を済ませる事ができた。


「ごちそう様です。」


「いえいえ、綾ちゃんナイン交換しない?」


「いいですね。」


帰り間際に、綾ちゃんとナインを交換して私は夜ご飯の材料を買わずに家を帰ってしまった。

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