第9話

 さて、スーパーの中に入り今日の夜ご飯の食材を買おうとカゴを取ったはいいが、今日の夜ご飯を何するか決めていない。


「夜ご飯は何にする?」


「そうですね〜兄さんは何が食べたいですか?」


「ん〜トンカツかな〜」


「わかった〜」


 俺の今日の夜ご飯のリクエストをどうやら受け入れてくれたようで、カゴには豚肉とパン粉・卵・油などを次々に入れていく。


「野菜は要らんよ〜」


「ダメです」


 野菜をあまり食べたくなかったのだが、キッパリと断られ、キャベツや人参・大根・味噌なども入れ始めた。


 どうやら付け合せの豚汁も作るようだ。


「兄さん、このドラゴンフルーツ美味しいですか?」


「ん〜味がない。フルーツって感じでもう一度食べたいかって言うと、食べたくないかな」


「兄さんちょっと、このドラゴンフルーツ返してきます。兄さんは迷子にならないよう、ここに居てくださいね」


 さきほど、彩が珍しいドラゴンフルーツを見つけてカゴに入れたはいいが、あまり美味しくないと伝えると返しに言った。


 昔、名前がカッコイイと言う事で買って、食べてみたものの、あんまり美味しくなかった。と言うか、あまり味がなかった。高かった割にあまり美味しくなかったと、多少後悔した記憶がある。


「行ったか....」


 俺は、彩がドラゴンフルーツを返しに行くのを見届け、このカゴに入っている人参を取り出し、元の場所に戻そうと考えた。


 小倉にもカレーなどに人参を入れないでくれっと言って、人参を入れないでくれるが、彩は何故か人参を食べさそうとしてくる。


 なので、彩にバレないよう人参を元の場所に戻す事にした。


「兄さん、人参」


「に、人参は....さっきカゴに入れたじゃないか?」


「兄さん、さっき人参を戻しているのを見ましたけど?」


「ご、ごめんさい。」


 人参を元の場所に戻したのだが、またカゴに人参がカムバックしてきた。


 なんで、この世に人参があるのだろうか...

 人参は何故今目に前にあるのだろうか...


 人参、人参、人参....


「兄さんは、早く人参を克服した方がいいと思いますよ?」


「うぐ...」


 正論を投げつけられ、精神に200ダメージが入った。

 精神にダメージが入り、今だに回復しきっていない頃スーパーで夜ご飯を買い終わった。


「せんぱ〜い」


「うお」


 買い終わった後、片手に袋を持ち家に帰ろうとすると、後ろから小倉が俺の方に向かって走って、突撃してきた。


「あれ?先輩どうしてこんなところでいるんですか?」


「今晩の夜ご飯の買い出し」


「へ、へえ〜先輩って料理出来るんですか?」


「出来ないけど?」


 今日は何故か、グイグイ来るのだけど?


「その...先輩、先輩にはありえないですけど、横に居る女性は誰ですか!?」


 横にいる彩が、俺の手を掴み誤解されるような事を言われた。


「彼女です」


「え、ええ!?え?先輩って彼女いたんですか!?」


 小倉は何故かあからさまに、驚いている。

 もしかすると、ぼっちな俺に小倉以外で女性と歩いている事に驚いたのだろうか?小倉に右手に抱きついている彼女だと言う誤解を解くことにした。


 小倉は何故かホッとした顔をした。


「こんばんは。兄さんの妹の彩です。いつも、兄さんがお世話になっています。」


「こちらこそ、お世話になっています。」


 2人は挨拶をし終わると、彩がポケットから小倉のパンツを取り出した。


「これって、貴方のパンツですよね。」


「え?」


 急にパンツを出された小倉は、しばらく固まってしまった。それもそうだろう。人道理がある道で、自分のパンツを見せられれば。


「あの、返してくれないかな?」


「ダメです。このパンツが兄さんのクローゼットの中にありました。これはどうしてですか?」


「そ、それは〜」


 自分のパンツを近ずけられて、小倉は話すに話せずにいる。まあ、パンツを忘れてしまったとか恥ずかしくて話せないんだろう。


 俺は気を聞かせて、先に家に帰ることにした。


「じゃあ、女同士話もあるかもだから、先に帰っておくね。」


「わかった。この小倉さんと話してから兄さんの家に行くね」


「わかった〜」


「せ、先輩...」


 何故か小倉は、俺を呼び止めようとするのだが、彩と一緒にいるのは少し気まづいのだろう。


 そのうち、話しているうちになれるだろうから、俺はそのまま荷物を持ち家に帰った。

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