第3話
さて、ドリアンをまな板に置いたのだが、誰がドリアンを切るのかで揉めている。
「先輩がこのドリアンを切ってくださいよ」
「いや、小倉がドリアンを買ったんだから小倉が切りなよ」
「嫌です。じゃあ、ジャンケンで決めましょうよ」
「ああ、正々堂々とやろうか」
俺はドリアンを切るのは絶対嫌だ。
冷静に考えると、ドリアンを切る前でこんなに臭いのだ。切った後、ドリアンは真っ二つになるだろう...
真っ二つになったドリアンは果肉が出ると思うのだが、果肉自体に強烈な匂いを放っていると俺は思っている。
「最初はグー」
「パー」
俺は最初はグーと言ったはずなのだが、小倉はパーを出すと言う荒技に出た。
「これは、ズルだ!!やり直しを要求するぞ!!」
「え〜先輩〜最初にパーを出してダメと言うルールはありましたか?無かったですよね。これは、負け惜しみですか〜」
「ジャンケンの常識は、グーだ。最初はグーが暗黙の了解にあるのだ!!」
「ふん、この世は弱肉強食。そんな暗黙などの無意味だ!!」
「クッ」
「さあ先輩、ドリアンを切ってくださいねせ〜んぱい」
ここは先輩として、大人としてここは俺が折れた。ドリアンの切り方が分からないので、スマホでドリアンの切り方を検索した。どうやらドリアンは頭の方を切り、切り込みを入れた後、タオルを使い、手でドリアンを割ると意外にも簡単に裂けた。裂けると同時にドリアンの果肉があらわになった。
「うお、臭!!やはり果肉が匂いの元か!臭すぎる!!」
「お、おえ....せ、先輩臭いです。」
小倉はドリアンが更に臭くなり、嗚咽をした。
「早く食べてくれ、小倉...」
「先輩無理です。こんな臭い食べ物が食べれるはずが無いです。とりあえず、毒味として少し食べて見てください」
鼻を掴み、俺の方にドリアンを近づけてくる小倉
俺も臭いが、どんな味なのか興味があるので一欠片をつまみ口に放り込んでみた。
「せ、先輩...味はどうですか?」
「甘い...」
「甘い?」
「そう、甘くてクリーミーだ。しかし、いかんせん臭い。何故、ドリアンが臭いのだろうが?臭くなければカスタードとしてシュークリームとして中に入れても良いくらいなのに」
「そ、そんなに甘いんですか!?」
「ああ、食べてみろ」
小倉も恐る恐るドリアンの果肉を口に運んだ。
鼻をつまみ、もぐもぐと味わっていると、急に目を見開いた。
「美味しいです!!甘いです!!ドリアンと言う見た目からは想像も出来ない甘い食べ物ですね。」
「しかし〜臭いな〜」
「臭いですね〜」
確かにドリアンを食べ満足した。
全部完食してドリアンの残骸を二重、三重と袋を閉じたのだが...部屋がまだ異常〜にまだ臭い。
とりあえず、換気扇を回してみたのだが全く臭さが取れない。
「先輩、今日は自分の家で寝ますね....」
「ふん...待ちなよ。俺の部屋をドリアン臭くした張本人が逃げるとはどう言う事だ?今日はここで泊まって行きなよ。」
帰ろうとしている小倉の肩を掴み、帰るのを阻止した。
「せ、先輩!!まさか、私を先輩の家に泊めて襲う気ですか!?変態ですか?やめてください!!」
肩を掴んだ俺に手を振り解いて、小倉は胸を隠し、塩らしい態度をしている。
「おい、何を言っている。いつも、勝手に男の家に遊びに来て泊まりに来る女がよくもまあ、そんな事が言えたもんだな!!」
「せ、先輩だけですよ泊まりに来るのは....じゃ、じゃあ私は帰ります!!」
『ドン』
小倉は途中何か言っているのは分かったが、小さな声で聞き取れなかったが、息を止めていたのか何故か小倉の顔が赤くなり、俺の家から飛び出すように帰って行った。
「さて、どうしようか...」
家に残ったこの匂いは換気しても中々取れない。
なので、ファブって香りを変えると少しマシになった。
これなら寝れるな。
布団を敷き眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます