【声劇台本】魔女と猫様のとある1日

水縹❀理緒

第1話・心配性な青年

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約15分台本


魔女…森のはずれにあるこじんまりとした家に住んでいる。町の人からは、魔女とよばれ、薬などを売っている。


猫様…魔女とすごしている猫。二足歩行をして手先がとても器用。得意料理はミートパイ。黒猫さん。魔女様とは長い付き合いである。


リク…町の人。とっても心配性な若い男性。妻の容態が悪いので、魔女様にどうにか治してもらいたく朝早くから訪ねてきた。


-配役-

魔女・♀

猫様・不問

リク・♂︎


ーー


猫様M:リンゴンリンゴン。鐘が鳴る前。コケコケコッコ。鶏が喚く前。彼女達は動き出します。でこぼこ帽子を被って、暗い森に行くのです。だからこそ、彼女達は魔女と呼ばれているのです。


魔女M:魔女と猫様の、とある1日



猫様:(鼻歌)。そろそろ森の雪も全て溶けきる頃でしょうな。お庭のハーブさん達のお世話も出来たし、魔女様のお洋服もしまいましたし……うむ!今日のご飯も上出来です!後はパンを焼いて…


魔女:ただいま〜。ずっと森の中でかがんでいたものだから、腰が…ん、あら、いい匂い


猫様:あぁ魔女様。お帰りなさい。朝ごはんがもうそろそろ出来ますよ。手を洗ってきてくださいね。一応お風呂も沸かしておきましたのでご自由に使ってください。


魔女:(⬆に被せても可)今日はミネストローネ?具材は何を入れたの?それにこっちはタンポポ茶ね。喉が乾いたし、お茶くらい別に飲んでもいいわよね


猫様:あぁ!だから先に手を洗ってきてください!泥んこじゃないですか!食べるのは後です!つまみ食いも禁止!


魔女:もう…少しぐらいいいじゃない


猫様:魔女様ともあろう人が!というより、人間としてマナーは大事でありましょう!


魔女:はいはい、分かりました。洗ってきます


猫様:ふぅ…まったく。さて。魔女様が摘んできたハーブさん達を分けておきましょうか…朝摘みのこの子達は本当に良い香り………心が落ち着きますな。ん?足音が聞こえてきますな。どちら様でしょう?



リク:(ノック音)。早い時間に申し訳ない。魔女様はいらっしゃいますか


猫様:おや、お客様がいらっしゃったようですね。エプロンを外して…、と。どうぞ、お入りくださいな。


リク:ありがとうございます……って猫!??!!?


猫様:にゃにゃ!?!?イキナリこの猫様に猫呼びとはにゃんですかぁっ!!


リク:喋ってる……!!!


猫様:喋りますよ!誰だと思っているのですか!


リク:猫?


猫様:ちにゃーーーう!(意味:違う)


リク:やっぱり魔女の使い魔だから、普通の猫とは違うんだ……


猫様:吾輩は姿形は猫でありますが、そこらの猫ではないのです!


リク:…にゃって言わなくなった


猫様:吾輩はニャアニャア鳴く彼らとは違うのです!


リク:でもさっき驚いてた時とかは出てた気が


猫様:な、何のことでしょうかな…それより!魔女様に何か用事があるのでしょう?


リク:あぁ、そうだった!魔女様に少し相談があって…今どちらにいらっしゃいますか?


猫様:魔女様は今お出かけから帰ってきた所ですので、待たせてしまうかもしれませぬが…。

魔女様ーーーお客様ですーーー


魔女:今おふろーーー


猫様:…らしいので、少しお待ちくださいな。どうぞどうぞ、そちらの椅子にかけてください


リク:……わかり、ました


猫様:お茶もどうぞ


リク:ありがとうございます…


猫様:あ、吾輩とした事が。お名前をお聞きしても?


リク:リクといいます


猫様:リク様。だいぶ慌てたその御様子だと、朝ご飯はまだでございましょう。せっかくです。ミネストローネはいかがですか?



魔女:お風呂あがったわ〜……って。何してるの?


猫様:あぁ魔女様。遅い湯浴みだったことで。せっかくですからリク様と朝ご飯を頂いておりました


リク:とても美味しかったです…ご馳走様でした


魔女:私のミネストローネは


猫様:あぁ、もうお汁だけにございます


魔女:なんでよ!!!楽しみにしてたのに!酷いじゃない!


猫様:まぁまぁ。リク様のお話を聞いたら、また作ってあげますよ


魔女:本当?本当ね?


猫様:約束しましょう。ホラ、魔女様。ご挨拶を


魔女:…(咳払い)ごめんなさい。お客様の前ではしたない真似をしちゃったわ。えーと……名前なんだっけ


リク:リクといいます


魔女:リク。魔女の私に何の御用かしら?


リク:あの!何でも叶えてくださる魔女様って本当なんですか?!


魔女:…いや、何でもって訳では無いけれど…朝早くからこんな森のはずれまでやってくるなんて、よっぽどの事なんでしょう。まずはお話を聞かせてくださる?


リク:…妻が、いまして


魔女:奥様が。若いのにもうご結婚されてるのね


リク:はい。その……妻は妊娠をしていまして


猫様:おや。おめでたいですな


リク:でも……ここの所、顔色もずっと悪く…乳も出ないようで心配なんです。


魔女:妊娠中に体調が優れないのはよくある事よ。男は理解し難い所が沢山あるでしょうけど


リク:でも、お医者様に診てもらっても良くならないんですよ…!気が気じゃなくて…。彼女は風邪なんて知らないぐらい元気な子なんですよ!親は自分を産んだ時は酷くなかったって言いましたし…


魔女:……ふむ


猫様:それで急いでいらっしゃったのですね…それはご飯を食べる暇もございませんな


魔女:あら。だからご飯を食べてたの?


猫様:えぇ。気が付かれてないのかは分かりませんが、リク様の顔色もあまり良いとは言えません。栄養は大事ですぞ。倒れては元も子もないですから


魔女:そうね


リク:魔女様!どうか…どうか妻を…!元気にしてやってはくれませんか……!


魔女:直接奥様を診ていないから、こうとは言えないけれど……猫様。春の棚をここへ出してくれる?


猫様:はい。ではリク様、眩しくなりますので目を隠していてくださいませ


リク:は、はい…


猫様:夜露にその身濡らし、大地と天の恵を抱く暖かな隣人よ。こちらへ


リク:!眩しっ…!!


魔女:…はい。もう大丈夫よ。目をゆっくり開けて


リク:……ん…わぁ!ここは…?!


魔女:さっき居たキッチンよ


リク:でも…!壁一面に棚が…!!台所も、廊下も全部棚に…天井があるのに、太陽の光が降り注いでる…


猫様:それはもう、彼らをお呼びしたわけですから


リク:か、かれら?


魔女:えぇ。私の庭は見たかしら?丁寧に育てたハーブ達が生えていたでしょう?彼らの力を私達は借りているの。だから、雑な呼び方はしないのよ


リク:はぁ……な、なるほど?


魔女:さて……フェンネルの種子とカモミールがいいかしらね。カモミールの方は…ブレンドティにしましょうか。んー…ポプリにしてもいいわね。もう全部にしちゃいましょう。


猫様:瓶はいかがしましょう。


魔女:春の陽射しをたっぷり浴びた瓶がいいわ。そうね、角のない丸い瓶


リク:あの…それは何に効く薬なんですか?初めて聞く名前ばかりなんですが……


魔女:何に…んー…面倒臭いから纏めるけれど、基本的効能は沢山あるわよ。奥様はきっと、冬の間に毒素を溜め込みすぎたのかもしれないと思って、それらの解毒を助けてくれる春のハーブさんを選んだの


リク:冬の毒?それって命に支障をきたすとか…?!


魔女:大袈裟ね。体を動かしにくい冬は血流も滞ってしまうでしょ?老廃物とかをうまく排出出来なかったり。妊婦さんであれば、余計にじゃないかしら


リク:あぁ……マッサージをしてくれる人がそんな事いってたような


魔女:大事よ。寒いからって何もしないのはダメ。リク。あなたもよ。血色悪すぎなんだから


リク:分かりました……気をつけます


魔女:フェンネルの種子はパンとかに混ぜ込んで焼いてもいいし、お肉と一緒に使ってもいいわ。乳の出をよくしてくれるの


リク:パンとか…なるほど…ありがとうございます!


猫様:ブレンドティ、ポプリ、フェンネルの種子。それぞれラッピングをして1つの瓶に纏めておきました。どうぞ


リク:ありがとうございます…!あの、お代は…


魔女:お代は奥様が無事出産したら子供と奥様、一緒にここへ連れていらっしゃい


リク:ま、まさか……とって食うとか…?


魔女:そんな事しないわよ。あなた、被害妄想多いのはいいけれど、今のは失礼よ?


リク:すっすみません…では、僕はこれで失礼します!!本当にありがとうございます!!


魔女:ちょっと待って


リク:は、はい!何でしょうか


魔女:人はね、全員違うの。同じ病気でも、そのおもさとか痛みの感じ方もね。心配するのはいいけれど、それで彼女まで不安にさせてはいけないわ。他人と比べない事。いい?


リク:…はい。ありがとうございます、魔女様。

またきます



猫様:さて、と。せっかく棚を出したわけですから朝摘みハーブを…っと


魔女:ねーこーさーまー?


猫様:はい?何でしょうか魔女様


魔女:ところで、忘れてないでしょうねぇ?


猫様:何をでしょう?さっきの瓶にかける魔法の事ですか?きちんとかけておきましたよ?元気な赤ちゃんを産めますようにと。魔女様も魔法をひっそりかけていたではありませんか


魔女:ちがう!私のミネストローネは!!


猫様:……あぁ!そういえばお汁だけです!


魔女:はやく作りなさーい!!!!


猫様:ぎにゃぁぁぁ!!!



☆。.:*・゜終わり☆。.:*・゜

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