第72話 広がる噂
「はい、出席。何があったか知らないけど、あんま面倒は起こさないでね……? 月野さん顔すっごい赤いけど大丈夫?」
「は、はいっ! だ、大丈夫です…」
「恋瑠璃くん、もし月野さんヤバそうだったら気遣ってあげてね」
「は、はーい! 任せてくださーい!」
あんま触れないでくれ…良い先生のフリしないでくれ(?)
「もうすぐ期末テストだから、ちゃんと勉強しとくこと。はい、じゃあ1限がんばってねー…あっ、そうそう。恋瑠璃くんちょっと来て」
月野に説明しなきゃならんのになぜ呼ばれなきゃいけないんだ。全く、何の話をされるんだか…さすがにテスト前に呼ばれることは無いよな?
「恋瑠璃くん昨日休んでたけど、大丈夫だった?」
「なんで優しい言葉なんすか?」
「いい先生だからに決まってるでしょ?」
「…で、なんの用すか?」
「これを渡したかっただけ。課題のプリント…分からなかったら先生が個別指導で教えてあげる」
勘弁してくれ。そもそも俺には楓がいるから問題ない。
「遠慮しときます」
「あと一つ聞いておきたいんだけど…恋瑠璃くんって海水浴とか好き?」
なんだその質問は…俺を参考にした作品の登場キャラの設定まで俺に寄せようとしているのか?
「別に好きでも嫌いでもないですよ。友達とかと行けば全然楽しめるくらいっす」
「何人くらいがいい?」
「別に何人でもいいっすけど…」
「女の子と行きたい? 男の子と行きたい?」
「状況によりますけど、人数が多いなら男と行きたいですね」
「はい分かりました。ありがとう。じゃあ一日がんばってねー」
素直に答えてしまったが、良かったのだろうか…
流石に先生も大人だし、教師って立場で俺と海に行くなんてリスク高いことしないだろ。
「きょーちゃーん、何話してたの?」
「なーんか江美ちゃんセンセー楽しそうだったよな…ま、まさかお前…」
「なわけないだろ! 確かに先生とは部活のことで関わってはいるけども。ただの先生だ」
『ただの先生』では無いけどな。
「さすがにだよな…いやぁ、にしても面白いことになってんな」
「きょーちゃんモテモテ良かったねー」
「…多分だけどあんま良くない」
あることないこと噂されている気がするし、このままでは俺が女に手を出しまくっているクズ扱いされてしまう…
「俺たちもどこまで真実か分からない。唯一分かることはまだ彼女いないってことだけだ…いないよな?」
「もちろんだぜ」
「あっ、そういえば昨日、雨霧さんがプリント持ってくって行ってたからついでにお菓子も渡しちゃったけど、ちゃんと二人で食べた?」
「まだ食ってない。今日の晩飯後にでも食おうと思ってたところだ」
「せっかく楓ちゃんにあーんしてもらうチャンスだったのに勿体ねぇな」
普通にされたんだよなぁ…
「それにしても彼女作りたいと思って行動したら、色んな所で噂になるなんて…なんで彼女いないの?」
「煽ってんのか?」
「うん」
「柊一、俺が優しくてよかったな」
「ま、とりあえず変な噂が広がらないように…もう手遅れかもしれないけど。あんま変なことすんなよ」
どちらかと言うと先週色々ありすぎただけだ。
それに変なことをしないようにしている…はずだったのに、なぜだか休み時間になると廊下の方から視線を感じたり、月野と話したら危なそうな空気感が流れていた…
もしかして俺、変な噂流れてやべぇやつ認定されてる?
昼休み…
「こ、恋瑠璃くん…その、今日は一緒に食べるのやめましょう……よ、良くない気がします」
そう言って俺が何か言う前に逃げるように去ってしまった…
結局、直斗と柊一と昼は食べた。
放課後…
いつもなら元気に呼びに来るはずのソフィが来なかった。しかし、部活はやると聞いていたので部室まで移動すると二人が待っていた。
「キョーさんデース!」
「…」
ソフィは全然いつも通りな感じだが、凛は明らかに様子がおかしい。
「…キョーさんにひとつ、きくことがあるデース」
「なんだ?」
どうせ朝の件だろう。なんて説明していいか、俺でもよく分からない。
「キョーさんのガールフレンドはだれデースか? いっぱいいるデースか?」
今ソフィの言うガールフレンドとは彼女のことだろう。
「0。マジでいない。友達って意味のガールフレンドなら何人かいるけど」
「ほんとデースか? みんながキョーさんのこといろいろいってるデース。なんと、いちねんのいちぶでは、わたしがキョーさんのガールフレンドになってるデース」
「…」
「シズちゃんも、キョーさんのガールフレンドデース。どうなってるデースか?」
「…それは俺が知りたい」
誰も一言もそんなこと言ってないのになんでそんなことが噂になるんだ。
「つまり、キョーさんは、イケメンすぎたデースね。シズちゃん、キョーさんはイケメンデース!」
「…そうなのか? ありがとう」
お世辞だとしてもかわいい女の子からイケメンと言われたら嬉しいのが俺という生き物である。
「とりあえず朝はなんかすみません…あの場には幼なじみとクラスメートの友達と、一緒にゲームしてる友達がいまして、幼なじみは幼なじみなんで(?)、朝一緒に登校してるだけで、クラスメートは隣の席で仲良くさせて貰ってるだけで、ゲームの友達はなんか煽りに来ただけっす」
「なるほど…多分一番騒がせたのは私のギャラリーだしな。こっちこそすまない…」
「モテるおとこはたいへんデース」
モテてるかはさておき大変だ。
「そんなおはなしより、オセロデース!」
「そ、そうだな」
オセロが始まると雰囲気も凛もいつも通りになった。
「私の勝ちだ。チェックメイト!」
「チェックメイトはチェスデース」
「そういうのはノリで言うものだ。どうだきょーが、私は普通だ」
「普通に話せるようになって良かったっす」
「キョーさんにさわられなければセーフデース」
「そうだ。響雅は普通の人だ。そう思えば怖くない…」
意識しなければいいってことか。
触られて意識させた=俺のこと好き
こういうことだな。
「そうっすよ。俺は普通の人っすよ」
「…そう。普通だ」
「シズちゃん、かおがあかいデース」
「思い出してないぞ…」
「プリクラ…」
「やめろ! 思い出させるな!」
「よっしゃ、勝負だ凛! 動揺した状態なら勝てる」
「キョーさんぶちかますデース!」
結局負けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます