第71話 いつも通り…??
廊下を見ると、ソフィが手を振っている。朝から元気そうだ。
「ソフィーアさん、昨日も来てましたよ。用があるんですかね?」
「部活でちょっと色々カクカクシカジカあったからな。多分それだ」
ソフィの所まで行くと後ろには凛もいた。なんだか緊張している様子だ。
「おまたせ楓、ほい赤ペン」
「ありがと。じゃ、私は…」
「あなたは、キョーさんとあさ、いるひとデースね。わたしはソフィデース。よろしくデース」
さすがコミュ力おばけだ。
「よろしく。私は雨霧楓。ソフィーアさんのことは知ってる。きょーがの同じ部活の後輩だよね?」
「そうデース。よびかたは、よびすてでソフィでいいデース。うしろのシズちゃんはぶちょーデース」
と、流れるような先輩紹介さすがだぜ。
「えっ? あっ…よ、よろしく。3年の静谷凛だ」
凛もびっくりしちゃってるよ。
「カエデちゃんは、シズちゃんのことしってるデースか?」
「一応、知ってる。ソフィちゃんのおかげで」
「なるほどデース。キョーさんとはともだちデースか?」
「友達というか幼なじみだよ。たまに遊んだりしてるし仲はいいかな?」
「なかよしデースね。キョーさん、さすがかっこいいデース!」
「それは多分関係ないな。というか何の用だ? 部活?」
「それはデースね…」
ソフィはくるりと回ると凛の手を引いて、俺の前に凛を連れてきた。楓はちょっと帰りづらい空気ができてその場にいる。
「シズちゃんから言うデース」
「…部活の話だ」
ちょっと緊張してそうだけど、前よりは話せそうな感じだ。
「姫ー、ファイトー!」
「王子ー!」
「いけー! 姫ー!」
そしてよく見ると、ギャラリーの先輩が結構いる。マジでなんだよこれ。告白されんの?
楓も困った様子である。
「…な、なぜがアイツらがうるさいが聞いてくれ」
「なんすか?」
「今日、部活をやるから来てくれ。もう逃げない。わかったか! ………」
ちょっと顔を赤くした。かわいいかよ。
「わかりました。久々に凛とオセロ出来て嬉しいっすよ」
「も、もう慣れたからな。今緊張してるのは久しぶりに会うからだからな。思い出さない…はず」
すっごい思い出してそうだな…
「さすがは王子。クールだ」
「姫も姫だぜ(?)」
と、先輩ギャラリーは盛り上がっているが、クラスメートと廊下にいる生徒たちは、頭に『?』を浮かべていそうな顔だ。
「姫? 王子? 何の話?」
「なにあれ、劇でもやってるの?」
「えっ、何? 今告白した?」
「先輩のこと呼び捨て? 下の名前? え?」
各方面から小声で色々聞こえてくる。名前呼びマズかったか?
クラスメート…
「えっ、恋瑠璃くんって月野さんと付き合ってるんじゃないの!? …あっ、やべ、声デカ」
「あんだけ仲良いんだからてっきり月野と…」
えっ?
「ふぇ!? わ、私ですか? こ、恋瑠璃くんと!?」
月乃も焦って顔真っ赤だ。
廊下の先輩たち…
「まてまて、姫は王子といい感じだろ? あと一歩だろ?」
「だから姫と王子だしな。明らか姫の反応王子の前だと違うし」
んっ?
「わ、私が…? …そ、そんなんじゃない!」
凛も顔が赤くなった。
その他ギャラリー…
「おい待てよ。前、雨霧と相合傘してくっついてたよな。雨霧が彼女じゃないのか?」
「先週だったっけ? 楓ちゃんって、恋瑠璃くんとショッピングモールでデートしてたらしいじゃん? 手繋いで歩いてたって…」
「えっ? ソフィさんっぽい人が抱きついてたっぽい人が恋瑠璃かもって話?」
「月野さんとキスしたって…」
「恋瑠璃が公園のベンチで女の子と楽しそうに喋ってんの見たぞ」
「キスしたのって楓ちゃんじゃないの?」
「スーパーで大学生っぽいお姉さんと一緒に歩いたみたいなのは? あれ付き合ってんじゃなくて?」
「なんか見覚えあると思ったら、あの酔っ払いお持ち帰りしてたのってもしかして…」
「ソフィさんとキスしたんじゃないのか?」
「さすがにキスは月野だろ?」
「静谷先輩とソフィとゲーセン行って、告ったって…」
「ショピングモールでパンケーキ食ったって…」
「えっ? ソフィちゃんと付き合ってるんじゃなくて?」
「雨霧の投稿のストゥバのやつ、きょーちゃんだったから俺てっきり…」
…ん? あれ? 色々危ないことになってないか?
「もしかして……っ…」
「…」
「…」
廊下の片側が少し静かになった。何があったのかと見てみると…
「すません…えーっと、先輩がた? 私、でかくて怖そうなだけなんで…あははー……」
coreじゃねーか…このタイミングで。
「あっ、kyo、来たよー」
「あっ、core…」
おっと…これはもしかして……
「…? あの身長でかい子だれ? ってか今響雅のこときょーって…しかも響雅も、こあって…あだ名?」
「何その距離感…あれ真の彼女?」
「ここで新キャラ!?」
「ってか恋瑠璃顔広っ!」
うん、そうなっちゃうよね。
「…あっ、えとっ……なんかまずい感じっすかね…kyo…じゃなくて、響雅先輩、失礼しゃーした〜」
「…」
「ちょっと待てや。お話しようや、先輩と…」
「「「姉貴先輩!」」」
姉貴先輩! coreに絡まないでくれぇえ!
「…うす…なんすか? …一応、名前は小宮葵って言いますけど」
「小宮、王子とはどういう関係や? なんもせぇへんから、正直に言うてみぃ?」
こわ…
「王子? …あー、響雅、先輩とは……えー、…………まぁ、友達っすね」
「その長考、なんや? なんか隠しとるやろ? なぁ?」
coreがヘルプの視線を俺に送っている…
「先輩、core…小宮とは、ゲーム仲間っす」
「…ほぉ〜……随分仲良いらしいけど、まぁ見逃そう。一旦な」
「ってことで、私帰るんで。さいなら〜」
危険な空気を察知したcoreは去っていった…これでまた面倒が1つ増えた。
「おいおい、ちょっと早く来たら人が多いじゃーねーか。通してくれーい」
「うちのクラスで何かあった?」
「きょーちゃんか誰かに告ってギャラリー集まってんじゃね? なーんつって。はっはっはー」
「さすがに朝っぱらからそんなことして。変な空気にならないように放課後に…あれ? …直斗、笑ってる場合じゃなそうだね…」
「…そ、そうだな」
幼なじみの楓、クラスの友人月野、部活先輩凛に、後輩ソフィ、さらに謎の高身長クール後輩と、その他ギャラリーたち。
この面子を見て察したのだろう。少し注目されていた2人が静かになった。
「…お、おーい、きょーちゃん?…何があった? 見覚え聞き覚えのある女性陣大集合ー、って感じだけど」
「……待て。話しかけるな。1番混乱してるのは俺だ」
「直斗、柊一、俺なんも知らんけどあれだ。簡単に説明するとキョーちゃんが何股してんの?って話」
「おい聞き捨てならないぞそれ! 今この場にいる全人類が勘違いしてるだけだ!」
ギャラリーは変わらずザワザワうるさく、当の本人達は、月野、凛はめっちゃ赤面、ソフィは驚いている様子、楓は思考停止しているのか止まっている。
「なにー? どうしたのー? 自分の教室で自分の席座ってないと遅刻になるから早くどっか行きなさい」
「あっ、江美ちゃんセンセー」
時間に気づいたギャラリーたちが去っていく。
腹黒先生、ありがとう。初めてあなたに感謝したかもしれない…
「えっと…まず楓? なんかすまん」
「…う、うん。じゃあ…」
楓は平静を装って帰って行った。
「凛、ソフィ…部活で会って、そんときに…」
「…わ、わかった……すまん、えとっ…ま、また」
「キョーさん、流石はイケメンデース。つみなおとこデース」
凛は動揺しまくりで、ソフィは何故か感心した様子で帰っていった…
「月野、えーっと…後で何がどうなってるか分かる範囲で話す…」
「は、はいっ↑。わかり↓ましたっ↑…」
…さーて、今日も平和な一日が始まる……といいな。
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