第70話 いつも通りの一日…?
「いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
歩美と姉ちゃんに看病され、心配され、甘やかされて無事完治。体は健康そのものだ。結局持って来てもらった課題はやってない。忘れたことにしよう。
朝、歩美が家を出て俺一人になった。昨日熱を出しつつも忘れずログインしていたソシャゲの溢れていたスタミナを軽く消化し、いつもより少し早く家を出た。
「おはよう、響雅くん。風邪は治った?」
「おはようございます。なんで知ってるんすか?」
ちょうど家を出てきた和泉さんに話しかけられた。足元には犬の麦ちゃんもいる。
「紗倉ちゃんに聞いたから。麦ちゃんの散歩中に会ってね…それで、もう大丈夫?」
「もちろん、ここにいるからにはもう大丈夫っす」
「そう、良かった。響雅くんあんまり病気になるイメージなかったからちょっと心配しちゃった」
「確かに、あんまり風邪とかひかないほうっすね」
「健康的! さすが若い!」
和泉さんも若く見えるけどな。大人っぽい大学生って言ってもギリバレなさそう。
「食生活とか、あんまり健康的じゃないっすけどね。昼はパンとかが多いんで」
「そうなの? じゃあ彼女さんに頼んでみたりしたら?」
「俺彼女いないっすよ」
「あら、そうなの? てっきり楓ちゃんと付き合ってると思ってたわ」
距離感バグ幼なじみだからな。昔からここに住んでいた訳では無い和泉さんからしたら、俺と楓がどこまでの仲か知らないだろう。
「あら、噂をすれば。楓ちゃんじゃない?」
「え?」
家を出る前メッセージでいつもの場所集合と話をしていた楓が何故か来た。
「あ、ほんとだ」
「響雅くんの事、心配してきてくれたんじゃない?」
昨日結構心配してくれてたし、その可能性はある。
「じゃあ私はお邪魔にならないようにそろそろ行くわね。いってらっしゃい響雅くん」
「あ、はい…」
そう言って和泉さんは、楓とすれ違って軽く挨拶をして去っていった。
「おはよう。治った?」
「おう、おはよう。もちろん元気」
「そ、良かった。和泉さんとなんか話してたの?」
「俺が昨日休んだことを姉ちゃんから聞いたらしく、心配してくれたって話」
「ふーん。とりあえず行こ」
ま、いつも通りの楓さんって感じだ。特に何も無く歩き始めた。
「なんでわざわざ迎えに来てくれたんだよ。もしかして心配だった?」
「…あんたが無理して来ようとしてたら追い返してやろうと思っただけ」
「優しい…優しすぎて涙が出るぜ」
「はいはい、それだけ元気なら良かった」
「…で、お前は体調大丈夫か?」
「全然平気。全然健康。全然問題なし。人の事じゃなくて自分のこと気にしろっつーの」
「とか言いながらお前だって俺の事ばっか気にしてんじゃねーよ。ブーメランだぞ」
「あんたが熱出したから気にしてんの。体調あんまり崩さないクセにこんな時期に熱出したなんて言われたら心配もするでしょ」
はしゃぎすぎただけなんですけどね。
「それに関してはたしかにそうだな…とりあえずありがとう。そして心配かけてすまん。お前にはいつも頼ってばっかな気がするな。テストとか」
「別にそんなことないし気にしない。やりたくてやってるだけだし」
「…なら、期末テストの勉強、教えていただけると助かります」
「あんたね、この流れで……はぁ、まぁいいや…わかった」
「あざす!」
もう少しで期末テスト、そしてそれが終わって少ししたら夏休みだ。
楓には定期試験がある度に勉強を教えて貰っている。主に直斗と柊一と放課後や休み時間に勉強したり、休みの日や時間がある日は楓に勉強を教えて貰ったりして俺は試験を乗り切っている。
「いつもありがとう。心の友よ(?)」
「夏休みの課題は自分でやんなさいよ」
「わかんないところは教えて欲しいなぁー」
「はいはい、教えてあげる。あんたは私がいないと勉強出来ないわけ?」
「頭いい、教えるの上手い、寝ようとするとちゃんと起こしてくれる、近所住んでる、やる気の出させ方が上手い…こんな幼なじみがいたら頼るだろ。頼らざるおえないだろ。お前優秀すぎな?」
「……あっそ」
「俺に褒められても嬉しい心がまだ残ってたか(?)」
「煽んなっつーの」
「かわいいねー、楓ちゃん」
「…殴っていい?」
「さーせん…」
ちょっと調子に乗りすぎたが、とりあえず勉強の約束は出来た。これで赤点回避は余裕だ。
「あっ、ってか割とどうでもいいんだけど赤のボールペン余ってない? 昨日無くなっちゃったんだよね」
「それなら机の中に俺の第2のペンケースあるから貸してやるよ」
「なんでそんなもんあるの?」
「たまに家に忘れるから」
「机の中入れっぱなら持ってこなくていいじゃん」
「最低限しか入ってないから、持ってこないとダメだ」
「なんか効率わる」
「意外と便利だぞ」
楓と一緒に教室に着いた。いつも通りの光景だ。
「ちょい待ってろ」
楓を廊下に待たせ、自分の机に向かった。
「おはようございます…体調、大丈夫ですか?」
「心配かけてすまん。土日にはしゃぎすぎたみたいだ」
「…わ、私もはしゃぎすぎて筋肉痛です。今もちょっと足痛いです。移動速度減少中です…」
「マッサージとかするといいんじゃね? それか薬草食う」
「えと…青汁なら飲んでます」
「意識高いな(?)」
おっと、月野と会話してる場合じゃない。廊下で楓が待ってる…
「キョーサーン! オセロデース!」
聞き覚えのある声…今日は朝から賑やかだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます