第11話 幼なじみと映画鑑賞

昨日と同じ容量で身支度を整え、集合時間30分前。早めに集合場所に来た。今日は映画に行く日だ。


「おまたせ、待った?」

「いや、今来たところだ」


本当は早く着いたが、今来たところというイケメンムーブ(?)。完璧だ。


「ん? ってか何? かっこいい?…えっ? ほんとにかっこいいじゃん。まぁ元がそこそこいいからかっこいいか…イメチェンしたの?」

「まぁそんなところだ。お前も学校で見る時よりかわいいぞ。服似合ってる」

「からかうなっつーの。早く行こ、いい席取られちゃう」


昨日行ったショッピングモールの中に映画館がある。昨日と同じようにバスに乗ってショッピングモールへと向かった。


「…そのいい匂いヘアワックス? 普通に好きなんだけど」

「そうか? あんま意識してなかったけど」


使っているワックスはネットの評価見ながら薬局で買ってきたやつだ。


「女の子は割と思ってんじゃない? きょーが君いいにおいー、って。ま、私が好きなだけかもだけど」

「俺の匂いが?」

「あんたの髪の匂い。いい匂いする」


俺のこと好きなのか!? それとも匂いフェチなのか?


「ガソリンスタンドの匂いは好きか?」

「別に好き。あと線香とかホームセンターの匂いも好き」

「匂いフェチ説濃厚だな」


長いこと一緒にいても初めて知ることが多い。まだまだ楓について知らないことが多分あると思う…そしてその知らないところに実は俺のこと好き説があるかもしれない(希望的観測)。


「あんたは好きな匂いとかないの?」

「じゃあ楓の髪の匂い」

「何それ、キモ」

「はいー、ブーメラン発言乙ー」

「なんだこいつ…」


ベラベラ喋っているとショッピングモールに着いた。2日連続でここに来るなんて珍しい。真っ直ぐシネマの方へ向かい、時間と空席を確認した。


「えっと…うわ、昼空き少な。どうする? ちょい遅くなるけどいい席で見るか、気合いで昼か。ちなみに私はいい席で見たい。隅っこやだ」

「じゃあ遅めでいいよ。言うても夕方には終わりそうだし」

「おっけー」


券売機を操作し、2人分券を買うと一旦映画館を出た。上映時間は午後、今は午前中なのでかなり時間がある。


「時間あるけどどうする?」

「お前の行きたいところがあるならそこに行くし、ないならとりあえず歩く」

「じゃ、靴でも見に行こ。あんた服はいいけど靴ボロいじゃん? 小綺麗なスニーカーでも買えば?」


たしかに靴は割と長く使ってるし、洗ってもいない。オシャレは足元からとか言うし、買っておくのはありかもしれない。


「金に余裕あるしほんとに買うか」

「うんうん、せっかくかっこいいんだからどんどんかっこつけた方がいいよ。と言ってもピアス開けたりとか、髪染めるとかはしなくていいけど」

「めっちゃ色々指摘してくれるな。なんかありがと」


アクセサリー類に関しては少し考えていたが、付き合いが長い楓がそう言ってくれるならつけなくていいか。


「別に感謝されるようなことじゃないって。じゃあ靴買いに行こっか。あっ、今お金もってる?」

「一応3万くらいある」


色々な可能性を考えて一応持ってきた3万円。持ってきておいて正解だった。


「めっちゃ持ってんじゃん。もしかしてバイト頑張ってる?」

「いや、使ってないからあるって感じだ。友達と遊ぶ時もあんまり金使わないし、欲しいものもあんまりないし」


バイトをしている理由は、社会経験といつかお金が必要になるかもしれないから貯めとこうと思った。という理由なので溜まる一方で現在口座には十数万円程度あった気がする。


「はえー、私なんて欲しいものいっぱいあるのに」

「何が欲しいんだ?」

「コスメと服と…あっ、新しいバックも欲しいし、友達とカラオケ行ったりカフェ行ったり…って感じ?」


めっちゃ陽キャやん。そりゃあ俺なんかと遊んでる余裕ないわな…もしかしたら既に楓には彼氏がいるんじゃないか? …さりげなく聞く、勇気は俺には無い。


「へー、楽しそうだな。そうやって遊べる友達少ないから羨ましいな」

「ここにいるじゃん」


と、自分を指さしてニコリと笑った。


「お前誘っても断るじゃねぇか」

「そ、それは先約が入ってることがと多いから…いつも嫌だから断ってるわけじゃなくて、色々用事があって行けないの」


昔はしょっちゅう遊んでいたが中学で減り、今は少しは増えたもののそこまでだ。


「もっと誘ってくれればいいのに」


それは俺のこと好きだからもっと遊びたいって意味なのか!? …ここは少しだけ探ってみよう。


「誘った方がいいのか?」

「え? 別にどっちでもいいけど。あんたが私と遊びたいなと思ったら、遠慮せずに誘ってくれていいって意味…」

「まぁ、お前が誘われて嬉しいなら誘おうかな」

「…別にあんたと遊ぶの楽しいから嬉しいと思うけど」


なんだその絶妙な回答。わかんないじゃねぇか。これは 下手なこと言わない方が良さそうだ。


「へー、じゃあこれからはちょっとだけ誘うこと増えるかもしれん」

「それ絶対変わんないじゃん」


話している間に靴屋に着いた。安いもので4、5千程度から高いもので3万程度までの靴が並んでいる。


「どうせなら私が選んであげようか?」

「買うかどうかはさておき、せっかく2人で来たんだしそういうのも面白いな」

「安心して(?)。あんたに似合うものとかなんとなくわかるから」

「その自信はどこから?」

「付き合いの長さ。あんたが思ってる以上に私はあんたのこと知ってるからね」


あなたのこと知ってるから発言…つまり俺の事好きなのか!? という勘違いをするほど俺は馬鹿では無い。だいたい俺だって楓のことはよく知ってる…と、思う。


「まず好きな食べ物はグラタン、趣味はゲーム、犬か猫なら猫派。炭酸あんまり好きじゃないとか言うクセに微炭酸は結構飲むでしょ。あとはシスコン、朝はパン派、高いの苦手でジェットコースターとか怖がる、子供に好かれやすい、勉強中の中、運動下の上、目じっと見ると恥ずかしがる、意外と女友達多い、じゃんけんは最初パー出すことが多い。何やかんや言いつつ根は優しい…」

「いや、それ以上言わなくていい。怖い」

「全部あんたの口から聞いた事と私の目で見たことだけど」


楓は頭いいし記憶力もいいだろうが、それにしても怖い。じゃんけんの分析されてる所とか意味わからんし、シスコンは口に出したことない。


「いつ俺がシスコンだと言った?」

「スマホの壁紙だいたい歩美ちゃんか紗倉ちゃんとの写真か家族写真でしょ? どーせ今もそうでしょ」


ロック画面は誰に見られても大丈夫なようにそれっぽいのになっているが、ホーム画面は美味しそうにパンケーキを食べる歩美だ。ちなみにこの壁紙に変える前はいつしかに撮った姉ちゃんとのツーショットだった(いらない情報)。


「…どうだろうな」

「図星? 顔赤いけど」

「…好きって言っても家族として好きなだけだけどな」


歩美と姉ちゃんに抱いているのは家族愛だ。恋愛とかそういうのではない…歩美に関しては昨日あまりにも恋人過ぎて勘違いしそうになったが、俺に彼女出来てもいい的なこと言ってたし全然家族として好きなだけだと思う。


「へー、羨ましい。きょーががお兄ちゃんなら何でも言う事聞いてくれそう」

「お前が妹だったら…考えただけで鳥肌が立つ」

「何よ、私の性格が悪いとでも言いたいの?」

「実際褒められたもんでは無いだろ」

「良くは無いけど、でも悪くも無いでしょ。困ってるおばあさんがいたらちゃんと助けるからね?」

「そもそも困ってるおばあさんに遭遇しないだろ」

「いたらの話。今は靴選びに困ってるきょーが君を助けてる」


俺の顔を楽しそうに指さした。不覚にもかわいいと思ってしまった。


「別に困ってないんだが」

「いいから私に任せなさい。似合うの選んであげる」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る