第10話 ただいま
「ただいまー」
「おかえり。歩美嬉しそうだねぇ、良いことあったの?」
「うん、いっぱい良いことあった!」
母さんが出迎えてくれた。歩美はずっとニコニコしている。
「良かったねぇ。きょーちゃんは何か買ったの?」
「マグカップ買った。歩美とお揃いで」
「えへへ、おにいが買ってくれた」
と、こちらに笑顔を向けてくれる歩美。思わず頬が緩んでしまいそうだったが母親の前なので我慢した。
「きょーちゃん優しいじゃないか。母さんにも何か買ってきてくれたの?」
「これ、父さんと食べていいよ」
姉ちゃんの為にと思い買ってきたシュークリーム、たまには親孝行してやろうということで家族分買ってきた。
「冗談で言ったつもりだったんだけど、ありがとね」
とりあえずリビングに行くとソファに座り、テレビを見ながらダラダラしている父さんがいる。キッチンを見るに母さんは夕飯の支度中、姉ちゃんは部屋にいるみたいだ。
「飯なに?」
「鶏肉にねぎ塩のっけたやつ」
「おっけー、姉ちゃんは?」
「部屋で課題やってるんじゃない?」
「おにい、一応行ってみる?」
荷物を置いて姉ちゃんの部屋の前に来た。中から音はしない。
「おねえ? いる?」
「…」
返事がない。
「寝てるのかな? それならこのままでも大丈夫かな」
「そうだな。じゃあ一旦部屋に戻るか」
「うん」
歩美と別れて部屋へと戻った。一日中外にいたこともありそこそこ疲れている。メッセージが溜まっていたので確認する。楓から映画を見に行く時間のこと、それとcoreさんからだ。楓と少しやり取りし明日行く時間を決め、夕飯ができるまでの間coreさんとゲームをすることにした。
「進捗どう?」
「特になんも無いっすよ。ちょっと髪型いじって、服いい感じにして、洗顔とかに気使うようにしただけっす」
「おっ、結構頑張ってる。で、彼女は?」
「だからいないっすよ。今日はいもうとと仲良く買い物行ってきただけですし」
「いもうとは彼女?」
「何言ってんすか? とりあえずやりましょうよ、ゲーム」
いつも通り雑談しながらゲームを始めた。話の話題は俺についてのことが中心だ。
「てかkyoってイケメンなの? 声は結構イケボ気味だと思うけど」
「顔には自信ないっすよ」
勝手に自分のことは中の下、まあ普通くらいだと思っている。特に学校で目立つ方でもないし、友人以外の女子からどう思われてるかも知らん…明日楓にしれっと聞いてみるか。聞けたら…
「ま、普通っすよ普通。どこにでもいるようなやつだと思ってくれればいいっす」
「じゃあ顔写真送ってくんない? ビデオ通話でもいいからさ」
「なんでそんなに見たいんすか…」
「だって気になるでしょ」
そこまで顔を見せることに抵抗はないが、晒すならcoreさんの顔も見たい。
「じゃあcoreさんも顔晒してくださいよ。俺だけ晒すのは不公平っすよ」
「え? それは困るよ。今部屋着で髪ボサボサだし…あっ、オフ会する?」
まさかまさかのオフ会かよ。
「ちなみにどこら辺住んでる? 大阪? 東京? 名古屋?」
「近いで言ったら名古屋っすね」
「おー、私も名古屋。じゃあ名古屋で。場所は駅前、ご飯食べたり散策したりしよっか。日時は今週日曜でおけ?」
「めっちゃすぐっすね。別にいいっすけど」
「じゃ、決定〜。場所は名駅の金の時計台の所」
「あっ、もう全部決めるんすね。後でちゃんと決めません?」
「あっ、死んだ。ケアよろしく」
「ゲームにも集中してくださいよ。別にいいっすけど」
と、流れるように決まった。coreさんはバリバリ俺のプライベートの話とか聞いてくるし、自分のこともちょいちょい話してくれていたので話に困ることはないだろうがやはり緊張する。
「もしかしたら私が美少女かもしれないからね」
「期待しときますよ…ってか、これ負け試合っすね」
数時間後…
「やっぱり私はスナが好きなんだよねー。スナも私が好きだし(?)。ヘッドぶち抜き」
「妙にスナの当て感だけいいっすよね。近距離戦は下手っすけど」
「まぁまぁ…kyoの
「やめてくださいよ。ゾワゾワします」
「おにい? 何がゾワゾワするの?」
「おわっ!」
聞きなれた声、後ろをむくと歩美が立っていた。
「おっと、親フラか?」
「いもうとっす…一旦ミュートで」
「おけおけ」
携帯の画面を見ると、家族のグループにメッセージが来ている。夕飯ができたみたいだ。
「ご飯出来てるよ? 声掛けたけど何にも返事無かったから入って来ちゃった」
「ごめん、ありがと」
「全然いいよ。ゲームの人は大丈夫?」
「おう、大丈夫だ。先に行っててくれ」
「うん、わかった。おにい、ご飯食べたらデザート一緒に食べようね♪」
歩美が部屋から出ると再びヘッドセットをつけた。
「戻りましたー」
「おにい、一緒にデザート食べようね♪」
「…聞こえてました?」
「バッチリ」
普通にミスってミュートに出来てなかった。特に聞かれて不味いことは無かったしまぁいいか…でも、歩美の真似はやめて欲しい。
「恥ずいんで忘れてください…じゃ、ということで一旦やめますか。飯とか風呂とか終わったあとやってたら声かけるんで」
「うん! おにい!」
「俺のかわいいいもうとバカにしないでくださいよ! 俺の事を『おにい』と呼んでいいのはかわいいかわいいいもうとだけだ!(迫真)」
「バカになんてしてないよ、シスコン君」
「…」
一階に降りると既に机の上には料理が並べてある。家族全員俺の事を待っていてくれたようだ。
「ごめん、ネッ友とゲームしてた」
「そういう事か。ま、ここはシュークリームに免じて許そう。父さん丁度甘いもの食べたい気分だったし」
「とりあえず、いただきますしよ?」
「そうだな、じゃあ…」
「「「「「いただきます」」」」」
他愛のない話をしながら夕飯を食べ終え、買ってきたシュークリームを家族みんなで食べることにした。
「コーヒーかカフェオレ飲みたい人いる? お湯沸かすけど」
「あっ、お姉ちゃん飲むー」
「父さんも頼む」
「じゃ俺も」
「それなら私も飲もうかね」
「はーい、じゃあいっぱい沸かす。入れるのはわかんないから自分でやってね」
順番にコーヒーorカフェオレを入れていく。俺と歩美は今日買ってきたものを取り出した。
「あれ? きょーがと歩美、ペアマグカップ買ってきたの?」
「うん、おにいが買ってくれたの。おねえとはお揃いのものいくつかあるけどおにいとはなかったから」
「へー、いいじゃん。きょーが優しいね」
「まぁな」
シュークリームをもって席に着くと、母さんがこちらを見て微笑んだ。
「ほんとに仲良しだねぇ」
「2人でカップ持ってる所写真に撮っていいか? 待ち受けにしたい」
「あっ、私も欲しいから父さん後で送って」
「わかった。よし、じゃあ撮るぞ。2人とももっと笑え」
こちらにカメラを向ける父さん。恥ずかしくてしょうがない。歩美も俺と同じように少し困ったように頬を赤くして、笑っている。
「恥ずいんだけど…」
「喋るな笑え」
クソ親父が。
「は、早くしてよ…恥ずかしい」
「おーおー、わかったわかった。歩美がそういうなら」
クソ…クソ親父が。
「はい、チーズ。よーし! いい写真が撮れた。母さん、額縁に入れて玄関に飾ろう」
「やめてくれ…さすがに恥ずかしいだろ」
「うん、おにいに同意…だけど額縁に入れた写真は欲しい。私の部屋に飾る」
「わかった。じゃあ明日歩美に渡す。あとこの写真は家族のグループに貼って、当分の間アイコンだ」
少し話したあと部屋に戻り、coreさんとゲームをした後、明日に備え今日は早めに寝ることにした。
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