第9話 義妹、留学生、お姫様抱っこ
ソフィの指さす方向には年季の入ったエアホッケーが置いてある。
「じゃあ、勝った方にはジュースでもおご…」
「勝ったらおにいにプリクラでお姫様抱っこしてもらう!」
「俺、そんなこと一言も…」
「大丈夫(?)。私勝つから。あとこれはおにいにお姫様抱っこして貰うための口実じゃないから」
それくらい頼まれたらいくらでもやってやるけどな。
「おひめさまだっこ? とは、なんデースか?」
きょとんとしているソフィに口で説明するのが難しかったのでスマホで調べて1番上の画像を見せた。
「これだ」
「ブライダルキャリーのことデースね…」
いつもの元気な声ではなく、少しだけ控えめな声で言った。
「恥ずかしいならソフィが勝ったらジュースでもいい……」
「そういうことなら、キョーサンをかけてしょーぶデース!」
「聞いてる?」
「きいてマースよ。しょーりイコールキョーサンデース!」
俺、そもそも歩美とソフィをお姫様抱っこ出来んのかな…女性の平均体重とか知らないけど、
「さぁ! やりマースよ、アユチャン!」
「おにいのお姫様抱っこは私が勝ち取るから!」
こうして始まったエアホッケー、ルールは知っての通り、時間は90秒だ。ぬいぐるみは俺の手の中にある。
「…」
「…」
「が、がんばれ〜」
カンカンとプラスチックのディスクを弾く音と、ゲーセンの機体から出るうるさい音だけが聞こえる。二人ともガチ過ぎて一言も声を発さない。ちなみにお互いそこまで上手くない。
「…」
「…」
「がんばれ〜」
数十秒後…
1体1で終了した。
「なかなかやりマースね…」
「ソフィちゃんこそ強いね…」
「わー、レベルが高いなー(棒)。よし、同点だからご褒美はお預けにしよう」
ソフィを持ち上げるのはもちろん、歩美をソフィの前でお姫様抱っこするのも何となく良くない気がする。
「それはダメだよ! 勝負がつくまでやる」
「では、次はアレでしょーぶデース!」
今度はバスケのゲームをやるらしい。決められた秒数以内に何点決められるかというものだ。
「私バスケやったことないけどいいよ! おにいのためだもん!(?)」
「ふっふっふっ、ワタシもやってないデース!」
泥試合の予感がする…
数分後…
「はぁはぁ…」
「はぁ…なかなか、やりマースね……はぁ」
「…二人ともお疲れ」
なんとお互い同点、しかも入った本数は2分程度あり、10本。二人とも息が上がっている。
「また同点だったな」
「アユチャンはワタシのこうてきしゅデース…」
「つ、次こそ私が勝つから…」
歩美の運動神経悪いのは知ってたけど、ソフィも悪いんだな。
「じゃあ次はあれにしよ! 車のやつ」
「いいデースよ!」
今度はレースゲームをやるみたいだ。今回は最大4人プレイが可能ということで俺も参戦した。
数分後…
俺圧勝。そして僅差で歩美が2位、ソフィが3位となった。二人ともやっぱり下手だった。
「私の勝ち!」
「まけデース…アユチャンつよいデース。でも、つぎはないデースよ! おかくごデース!」
圧勝した俺のことはとりあえずどうでもいいようだ。
「私も負けないよ! …それで、おにいのご褒美は?」
「プリクラでお姫様抱っこだろ?」
歩美に連れられてプリクラが置いてあるコーナーへ向かった。辺りにはキラキラした女性が1グループいて、正直居心地が悪い。
「おにい、早く行こ。ソフィちゃんも早く」
「いきマースよ。きょーのともはあしたのてきデース」
「今日が敵だったから逆じゃないかな?」
「じゃああしたからも、ともだちデースね」
「うん、友達だよ」
それにしてもあの歩美とこうも簡単に仲良くなるとは…ちょっとびっくりだ。歩美はあまり初対面の人の前ではあまり感情を出さないというか人見知りだが、ソフィの前で楽しそうに笑っている。
「おにい、はーやーくー」
一応姉ちゃんと歩美と3人で入ったことはあるが、やはり慣れない。歩美とソフィが画面をポチポチいじっているのを少し後ろから見ることにした。
「おにい、抱っこ」
「おう…やったことないから変なとこ触ったらごめんな」
さっきの時間で少しだけやり方を調べたのでそれ通りにゆっくり持ち上げた…
「おお、キョーサンちからもちデース」
「これくらい、男ならいける…」
これで歩き回れと言われたらキツいが持ち上げることは出来た。
「おにい、前向いて」
「おう」
前を向くと、一枚目の写真を撮られた。
「2枚目もこのままか?」
「ううん、2枚目以降は大丈夫。…あれ? ソフィちゃんは?」
何故かソフィがいない。と思ったらすぐに入ってきた。
「ワタシはここにいマースよ。きょーだいのラブラブショットのじゃまはダメデースから」
「ラブラブなんて、おにいと私はそんなにラブラブじゃないよ」
と、満更でもない様子の歩美。これは生粋のブラコンだ。
「次からは3人でちゃんと撮ろうぜ。思い出だ」
「うん、ソフィちゃんこっち来て。並んで撮ろ」
何枚か写真を撮ると今度は落書き、やはり俺は分からないので2人にそこら辺は任せ俺は後ろから見守ることにした。外に出ると写真がでてきた。
「えへへ、おにいのお姫様抱っこ…それとソフィちゃんとの思い出」
「いいデースね。おもいでデース」
1枚はお姫様抱っこ、他にはピース等々色んなポーズをした写真。そして全然意識していなかったが、写真を見ると歩美ともソフィとも結構顔が近い。これはあまり他人には見せない方が良さそうだ。
「えへへ、やっぱり私おにいのこと好き。ソフィちゃんも好き!」
「ワタシもキョーサンとアユチャンのことすきデースよ!」
ん? 今の好きはもしかして…いや、絶対そういう意味じゃないな。
「ねぇソフィちゃん、他にもゲームしよ? おにいも一緒にやろ?」
「もちろんデース!」
「おう、やるか」
今度はガチではなくわちゃわちゃと話しながらゲーセンを遊び回った。そしてあっという間に時間が過ぎた。
「いつのまにか、ゆうがたデースね…ときのながれがはやいデース」
「あっ、本当だ。おにい、そろそろ帰らないとおねえが危ないよ(?)」
補足すると姉ちゃんはふいに歩美(俺でも可)を抱きしめるか、褒めてあげないとちょっとしょげる。学校、バイトの時は大丈夫なのに家だとこうなる。今日はバイトからのレポートとか言っていたので多分危ない(?)。寝てたらセーフ。
「それははやくしたほうがいいデース。いのちのききデース」
「うん、また遊ぼうね。今度も負けないから!」
「つぎこそかちマースからね!」
「じゃあな、ソフィ。また部活で」
ソフィと別れて、コンビニスイーツを買ったあと真っ直ぐ家に帰った。
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