第4話 【他力本願】俺氏、モテたい。
次の日…学校が終わると制服のまま美容室へ向かった。
「とりあえず、イケメンにしてください(?)」
いつもならとりあえず短めで切ってもらっているが今日はイケメンにしてくれと頼んでみた。
「いいけど…どうしたんだい急に、彼女でもできた?」
「いや、本気で作ろうと思っただけです」
「なるほどね。じゃあイケメンにしてあげよう」
数十分後…
「はい、こんな感じでどう?」
「逆にどうすか?」
「そりゃあイケメンさ」
鏡に映る自分を見るといつもと印象が変わった気がする。俺の顔面は中の下くらいだと思ってたが中の上くらいイケてるんじゃないかと思う。
「服装にも気を使いなよ? 学校は制服だからいいけど、休日に女の子誘うならオシャレしないと、清潔感のあるってのが最低条件」
さすがはオシャレ美容師、得意げにペラペラ話し始めた。
「オシャレな店のマネキンでいいすか?」
「それより店の人に聞いた方がいいと思うよ。マネキン買って自分に似合わないなんてこともあるし。なんなら僕がコーディネートしてあげようか? 響雅君、長いこと
トントン拍子で話が進んでいく。よし、今はこのオシャレ美容師に流されよう。
「じゃあおなしゃす。あとこの店で使ってる割といい洗顔ください。シャンプーとかは…とりあえずいいっすかね?」
「お買い上げありがとう。シャンプーとかは髪質、肌にあうやつで気に入った匂いのやつ使えばいいんじゃないかな?…それと喋り方注意。僕の前では別にいいけど、ポジティブに、もちろん明るく笑顔でね。外見と内面も意識すれば結構印象変わるも思うよ、見た目もだけどそういうところも大事だ」
つまりは愛想良くしろということか。それならバイト先で鍛えられている。
教えて貰えることは教えてもらった。あとは俺の毎日の意識とコミュ力にかかっている。
「にしても、響雅君が彼女作りたいと思ってたなんて意外だよ」
「そうですかね?」
「なんか彼女欲しそうな感じ全然しなかったからさ」
「分かるもんすか?」
「何となくだけどね」
そう言われて、確かにそうかもと少し思った。周りの女友達とは恋仲にはなれないと思い込んでいたのかもしれない。
「何もしないじゃ何も起きない。自分からアクションを起こさないとダメだよ」
「そりゃそうっすよね…」
そんな当たり前のことにすら気づいていなかった。待ってるだけじゃダメだ。
「響雅君になら彼女作れると思うよ。僕が保証する」
「ポジティブっすね…いや、ポジティブじゃなきゃいけないのか…俺、彼女作ります。ほんと色々ありがとうございます。また1ヶ月くらいしたら来ます」
「うん、青春してこい! 響雅君!」
明日はいもうとと買い物、明後日は幼なじみと映画、その先はいつも通りだ。
外は暗くなり始めている。すぐには結果は出ないだろうと思いつつも、少し浮かれている俺は歩いて真っ直ぐ帰宅した。
「ただいま」
「おかえりー…あれ? きょーがなんかかっこいいね。髪めっちゃセットしてるじゃん」
とりあえず姉ちゃんからはかっこいいと言われた。見た目は少しは変われたらしい。
「お母さーん! 見て。きょーがかっこよくない?」
「あんまりからかうな。母さん、わざわざ見にこなくていいから、飯作ってて」
「きょーちゃん、イケメンになったの?」
「…」
母さんが来た。正直家族にモテたところで関係ないし、ましてや母親に垢抜けたところ見られるなどもはや恥ずかしいまである。
「あら、本当ね。昔のお父さんみたい」
「俺、あれと一緒にはされたくない」
ソファでダラダラしてる大黒柱。酒は飲まなくなったし、煙草も吸わない。その点を除いたら特に良いところが思いつかない父。
「あ? 父さん昔はかっこよかったんだからな? 母さんも今はおばさんだが、昔は美人さんだったんだぞ」
「はいはい、もう私はおばさんですよ」
ま、とりあえず見た目は変われてるみたいだ。
「紗倉、歩美呼んできて。ご飯できたから」
「いや、ここはイケメンなお兄ちゃんに行ってもらおう」
「面倒ってことな…まぁいいや。荷物置くついでに呼んでくる」
愛想笑いを浮かべる姉ちゃんの横を通り、2階へ。奥から姉ちゃん、俺、歩美の順番だ。歩美は後から家に来たので俺が挟まれるような形になっている。
部屋に荷物を雑に置き、歩美の部屋の前に来た。
「歩美ー」
「おにい? 何ー?」
扉を開けて制服姿の歩美が出てきた。
「あれ? …おにいかっこよくなった?」
「ありがと。それと飯できたって」
「うん………もしかして彼女できた?」
「残念ながらできてない」
「そっか…なら良かった」
「良かったってなんだよ」
もしかして歩美俺の事好きなの? おにいは私だけのおにいじゃないと嫌!みたいな?
「だってせっかくの休みなのにいもうとの私が時間取ったら二人でいられる時間が減っちゃって悪いかなと思って」
ただのすっごく気遣いできる優しいいもうとだった。数十秒前の自分を殴りたい。
「全然いいって。もし彼女ができても遠慮なくなんでもお兄ちゃんに言ってくれ。大事ないもうとより彼女を優先するなんてことしないからさ」
「そう? やっぱりおにいは優しい♪」
歩美はニコリと笑った。かわいらしい笑顔だ。一階に降りると既に料理を並べ始めていたので、並べるのを手伝い夕食を食べた。
食べ終わると父さんは部屋、母さんは洗濯物、そしていつもなら真っ直ぐ部屋に戻ったり風呂に入るはずの姉ちゃんと歩美が俺の所へ来た。
「きょーが、本当にかっこよくなったね。元々かっこいいけど…かわいい弟じゃなかったら告白してるかも」
「それ絶対からかってるだろ」
「おねえ、血が繋がってると結婚できないから無理だよ」
「歩美も真面目に答えなくていいからな?」
姉ちゃんの考えてることはたまにわからん。とりあえず言えることとしては俺と歩美のことは好いてくれている。
「歩美ならきょーがと結婚できるよ? 家族だけど法律とかに引っかかんないから」
「そうなの? …知らなかった。でもおにいはおにいだから結婚はしないもん」
「お、おう…ってかなん話だよ」
ブラコンみたいだぜ。
「…たしかになんの話してるんだろ。おねえが変なこと言うから」
「いや〜、きょーががかっこよくなっちゃってお姉ちゃん嬉しくなっちゃいまして」
「姉ちゃん、明日バイトが朝からあるんだよな? 先にお風呂入っていいよ」
「最後くらいかわいい弟と妹と話したい…」
「明日の夜も一緒だろ」
「今の時間を噛み締めたい(?)」
「それは知らん。とりあえず風呂に入りたいからはよ」
「ん? 一緒に入る?」
「え?」
ん?
「おねえ! それは色んな意味でダメだよ」
「さすがに冗談だって。きょーがも興奮しない」
「してねーよ…」
「…おにい、変態」
歩美からの冷たい視線を感じる。姉ちゃんはいたずらな笑みを浮かべて去っていった。
「明日、買い物に行くんだよな! 朝から行く? 昼から行く?」
「あっ、急に話変えた……行く時間はおにいが起きたらでいいよ。昼まで寝てるでしょ?」
休みは昼まで寝ている俺だが、明日からは違う。生活習慣改善だ。coreさんとゲームする時間が減ってしまうかもしれないのでそれだけ伝えておこう。
「いや、起きる。お兄ちゃんは生活習慣を整える」
「おにいの口からそんなことが…三日坊主で終わりそうだけど」
「俺は本気だ」
姉ちゃん、歩美の次に風呂に入り、部屋に戻るといつもなら深夜までゲームをするところだが今日はせず、coreさんに連絡した。
『coreさん、話があります』
『どしたの?』
『生活習慣整えたいんで、ゲームやれる時間減るかもです。すみません』
『おk、休日の昼くらいは遊んでくれよ〜』
『今週は予定埋まってるで無理かもです』
『リア充乙』
最後に『おやすみ』のスタンプを送り合い、スマホのタイマーを8時00分、8時02分、3分、5分以下略の時間にセットし絶対に起きれるようにし、もちろんアラーム音は最大だ。確認するとすぐにベッドに横になった。
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