第27話 母のDNAを受け継がれた娘の恋が始まる時……
車に乗る前の廊下で
『何もしゃべらなくていい』
と言っていたが、そもそもなぜ
『ああ…ちょっとな…』
あの意味深な言葉はなに?
尻切れトンボの語尾がめちゃくちゃ気になるんですけど……
昔…
同窓会以降に会ったことがあったのだろうか。
私、何も持ってないんですけど……。
高層ビルのエレベーターに乗り込んだ私と
30階で降りて共用廊下を直進に進んで行く。女性らしいスーツを身に着け
フカフカのカーペットを歩く姿があまりにも私の日常とはかけ離れている。
隣にはハイスペックイケメン社長が肩を並べて歩いている。
お寿司に例えると特上だ。特上ハイスペック御曹司社長。
歳は私よりもかなり上なのに昔の面影が残っている。もしかして童顔?
そうか、お金があるからお肌のケアは勿論のこと、今は男性エステもある時代だし、ジムとかにも通って体力トレーニングもしているんだ。スーツのその下に隠された
素肌はもしや腹筋や背筋が鍛えられ、筋肉がムキムキマッチョだったりして……。
余計な脂肪分がついていなさそう……。なんとまあ、羨ましい、、、
私なんてグーたらしてたから贅肉だらけだというのに、まったくもうこの格差に
現実を痛感させられる。
当然、
なぜだろ? 社長が選ぶ女性がめちゃくちゃ妬ましく想うよ。
「社長って結婚とかしてるんですか?」
あっけらかんと、まあ私は何を聞いてる。でも、口は災いの元とは言ったもので、
気づいたら勝手に口から言葉が出ていた。
ムスッとする顔も怒られるのも覚悟の上だった。
「若い時にしてたが、離婚した」
だけど、意外にも
過去の事をこんな小娘に
なのに、
「え? もしかして葵さんだったりして……」
また、私の口が勝手に言葉を発する。これは、さすがにマズイでしょ。
空気が読めないのが私だ。20歳も年下の私は
娘同然の生意気な女にすぎない。でも、知りたかったのは本当だった。
なぜか、
それに若い時って聞いて『葵ちゃん』が最初に頭に浮かんだのも事実だ。
そう、同窓会の時の2人のキスが脳裏に蘇ってくるほど鮮明に記憶に
残っている…。そして、2人のキスを見て静かに座敷を出て行く
母の背中がとても泣きそうになるくらい切なかった。
「お前…何で葵のこと…」
「え…」マジ?
葵ちゃんと社長は結婚して離婚していた。
でも、なんで? なぜか私は離婚の原因が気になっていた。
「ユキから聞いたのか…」
「あ、うん。そう…」
私は咄嗟にごまかしウソをついた。母の過去へタイムリープしたなんて
言った所で誰も信じないだろうと思ったからだ。
「あいつはベラベラと昔のことを子供にしゃべっていたのか」
「えっと…私もよく覚えてないんだよね(笑)」
私は頭を掻きながら視線を逸らす。
その後、チラッと視線を戻し横目で
静かに囁いてみた。
「あの…社長と母って…」
「俺の一歩的な片想いで終わった初恋の相手だ。それがユキだった」
「え?」
「ユキに言うなよ。ユキに言ったら即、クビにするからな、、」
え…そうか。
知らないんだ。
「言えないよ」
「……?」
「だって、母は私が小学校一年生の時に病気で亡くなったから」
「え…ユキが…。そうか…」
一瞬だけ驚いた表情を見せた
平静を装っていた。
「母は絵本作家だったんだよ。母が描いた作品【あまのじゃくの恋】を最後に母は
天国へ逝っちゃったんだ。皮肉にもさ、母が死んだ後にその絵本が爆売れしちゃって、絵本大賞にまでノミネートされるなんてね」
「そうか…」
「…生活には困らなかったけど、、、」
「ユキが選んだ男が俺じゃなくてよかったよ。津山先輩、ユキのこと一番に考えてたもんな。彼女と別れてまでユキと結婚して…ユキも幸せだっただろ」
そうか、父と
「社長は母の気持ちを 知っていたんですか? 母があまのじゃくだってことも…」
「俺の自惚れだ。あの頃、俺は結構自信過剰で俺様風吹かせてたからな。
俺に惚れない女なんていないって思ってたくらいだ」
うん。なんだかわかる気がする。
「でも、ユキは違ってた。真っ白い雪のように肌が白くてさ、手なんていつも冷たかった。コイツ大丈夫か?って思って、気づいたら気になって好きになって告白したけど、即答でフラれた。俺のことずっとキライって言いい続けてたな。俺さキライって言われれば言われるほど、絶対、この女を振り向かせてやるって思ってたんだよな。だが結局、ユキは津山先輩と結婚したわけだし、やはり俺のことは本当にキライ
だったんだろう…」
「社長…それは違うよ。母は本当に…」
「絵本に描かれていることは空想にすぎない。だからメルフェンなんだ」
え…? もしかして、
「気持ちなんて伝えなきゃ本当にはならない。タイミングを
それは時間と共に色褪せて風化して、いつか思い出になるんだ」
「社長…今、好きな人はいますか?」
「そんなものに興味はない」
「もう恋愛しないんですか?」
「そんなものに何のメリットがある? 着飾って俺に近づく女は下心見え見えの
頭の中が空っぽの女ばかりだ。そんな女に俺の心は動かない」
「……」
「特上の女はな男に期待なんかしないんだよ。だから、余計に男は追いかけたく
なるんだよ」
私も後を追うように扉の中へと入って行く。
心が叫んでいるように聞こえていた―――ーーー。
確かなことは
2人の間に子供は? いるの? いないの?
そして今、
なぜ、私はこんなにも
母から受け継がれたDNAが反応しているのだろうか……
動機はどうあれ巡り合う運命にあったのかもしれない。
母の想いが私の体から溢れてくるようだ。
母があの時、言えなかった『好き』という想いを心に封印して別の人と結婚した母は幸せだったのかもしれない。
また母よりも先に
結局、うまくいかず離婚している。
私に
女だった、、、、
そして、その女性は母のことだったーーー。
でも母がいない今、
かもしれない。
でも――――ーーー
私は
いた。こんなに鼓動が熱く、早く鳴ったのは初めてだった。
これを恋と呼ぶのは早すぎるかもしれない。だけど私の心は少しずつ
私は『気のせいだろう』と考えないようにしていたが、気づくと私の視線は
私はすぐに顔を伏せ視線を逸らす。
頭の中が
さすが社長だけあって
私の出る幕なんかなさそうだ。
私が口を開ける間もなく商談は成立。無駄な時間を絶対作らない完璧な商談だった。
私はただ
出されたお茶を2口飲んだ。その間に和解し
ブライダルホテル第3号店実施プラン計画書を見事にまとめ上げて、契約を結んだ
そして,私は巨大高額が右から左へと動く光景を直視した瞬間でもあった―――ーーー。
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