第26話  車内…

車に乗り込んで15分ーーーー


沈黙が続いていた。〈この沈黙、耐えられない……。何か話題を…〉


ピンー

スーツのポケットに入れていたスマホから受信音が鳴り、私はスマホを確認する。



春陽はるき社長から店のリストと取引先の社長の好きな店や料理まで細かく書いたリストが何十枚にもわたり送られてきた。



ふと、私は横目で春陽はるき社長の顔を見る。


「それ、覚えとけよ」


口はキツイとこもあるけど、やっている行動は…なにげに優しい。


…そうか、母は春陽はるき社長のこういう優しさを好きになったんだね、、、


「はい…」


それに黙っていれば、やっぱりイケメンだ。


ドキッ、、、、。な、、、なんだ!? この心臓は……

鼓動が熱く高鳴っていく……。


しかも隣から漂う匂いは甘いコロンの香りがしているし……。


「なんだ?」

 春陽はるきが真顔で言った。


萌衣は隣にいる春陽はるきの視線を

バシバシと肌で感じていた。思わず萌衣はその視線から目をそむけ俯き加減に目を下へと向ける。


「何か言いたいことがあるなら言え」

とどめを刺すように、また春陽はるきが上から目線で言葉を放つ。


“言え“と言われてもなぁ……。今更、母の事、聞けるわけないじゃん。

例え聞いたとしても気まずい空気が増々重くなるのも嫌だしな、、、、


「別に…何も…」

あれこれ考えて出た答えは尻切れトンボの言葉だった。


「何も…なんだ? 何もないなら、そこは『何もないです』だろ。

途中で言葉を切るな」


やっぱり…突っ込まれると思った。細かいとこ見逃さないだろうとは思っていたが、

そこ追及する人なんだ。 なんか言葉で言うのめんどくさいなあ、、


そして、再び沈黙が続く。


いったい、どこまで行くんだろ、、、


「あの……」


「なんだ」


「なんで、私を採用したんですか?」


「……」


なぜ、そこは黙る。春陽はるき社長も人のこと言えないじゃん。

やっぱ、聞いたのはマズかったかな……。


「大きくなったな…萌衣は…」


「え!?」

萌衣…? ドッキ…。


春陽はるきが優しい笑みで萌衣を見ていた。


ドキドキドキ……


もしかして昔、会ったことあったのかな……。



母が死んだのは私が小学校1年生の時だから、もしも春陽はるき社長と会っていたとすればそれ以前になるけど、、、


でも、全然 記憶にないや、、、


「あの…私とどこかで会ったことあるんですか?」


「ああ…ちょっとな…」


そう言うと、春陽はるき社長は再び口をつむいだ。




ーーーそうこうしているうちに目的地へ辿り着いた私と春陽はるき社長は車から降りる。


見上げれば高々と一本に伸びる高層ビル。最上階は青空を満喫できそうだ。

車を降りた私と春陽はるき社長は接待客が待つ高層ビルの中へと入って行った。


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