第19話 現世へ―――ーーー
時計の針が進んでいくみたいに、気づいたら私達は
見覚えのある部屋の一室にいた。
「ここは…私の部屋…」
なんだかすごく懐かしいその部屋を見渡し、改めて私は少しずつ間隔を
取り戻していく。
「よかった…戻って来れたんだ。あれ?
視野から離れた
「
「んー」
移動しながら
テレビの裏や戸棚の隙間を覗き込んだりしていた。
「何か探しているの? ねぇ手伝おうか?」
私は
一緒になって探し物を探す手伝いをする。
「ねぇ、どんなものなの? あ、もしかしてタイムスリップ関係のもの?」
具体的な物がわからなければ想像もつかない。私は
「……」
〈マジか、、、〉
ホントいうと、私は
タイムスリップやタイムリープなんてことは実際のとこ現実にはありえないこと
だって思っていたからだ。そして、それは作り話やおとぎ話の世界だけの話だと
思っていた。母の過去に行った
みたいな夢落ちに終わると思っていた。
だけど、それはすごくリアルな光景だった――――ーー。
夢と現実が
母の幼い顔も高校時代も20
いうことも明らかに私の心に強く染みついていた。
これは間違いなく現実の世界だ。
でも、もしも本当に過去と現在を行き来できるような機械的物体が物理的に存在することが可能なら、私は母が死ぬ前に戻りたいーーー。
そして、母の病気をもう少し早く知ることができたなら、母のガンは早期発見する
ことができて助かったかもしれない。
リビングのソファーには母が最期に描いた作品【あまのじゃくの恋・栗原ゆき】の
絵本(メルフェン童話)がページの途中で開いたままになっている。
〈あ、思い出した。あの日、私は久しぶりに母の絵本を読んでいたらわ急にウトウト眠くなってそのまま寝てしまったんだった〉
熟睡していた私は
この部屋に現れたことなど記憶になく、気づいた時には36年前にタイムスリップ
していた。
「あ、ん?」
不意に私はソファーベット前のシンプルなローテーブルの下に向く
小型通信機のような物を持っていた。
「もしかして、それがタイムトラベルの機械?」
「ああ…」
それはデジタル式になっていてタイマーをセットすれば持ち運びしなくても過去に
行けるものだった。その時代で過ごせる滞在時間は短くて最短で1時間、最長でも24時間(1日)程度のもの
だった。そして、その機器の画面上には【0】と表示されていた。
「あ、よかった。これがなきゃ僕は元の世界に帰れない」
「ほんとに作ってたんだ、
「あのさ…
「却下」
「はやっ、即答。私、まだ何も言ってないよ」
「津山さんが言いたいことはなんとなくわかるよ」
「え?」
「どうせ、津山さんのお母さんが亡くなる前にタイムスリップして助けたいとか
思ってるんでしょ?」
「うん」
さすが、
「それは無理だね」
「え、なんで?」
「人の寿命は最初から決まっているんだ。その時に運命を変えてもほんの数日くらいしか長く生きられない。誰も寿命の進行を止めることはできないんだよ」
「そんな…」
「じゃ、
じゃないの?」
「……」
「実はこの部屋…親友が住んでいた部屋だったんだ」
「え?」
「でも、僕がこの部屋に来た時には親友は引っ越しした後で、その後、
津山さんが入居してきてた」
「そうなんだ。それで親友は?」
「事故で死んでいた」
「え… 」
「もしかして…
「津山さんが想像している通りだよ。僕は彼が事故に遭う前にタイムリープして止めたかったんだ。でも、僕がこの時代に来たせいで微妙に時間がズレてさ…結局、間に合わなかった…」
「そんな…」
「親友と出会ったのは5年前の春だった。
高校が同じでさ。結構、趣味とかよく
似てて…。好きな子のタイプとかもね」
「へぇ…、そうだったんだ」
それが
〈え、それって… 〉
「まだ、試作段階でタイムスリップできるかわからなかったけど、取りあえず
5年前にセットして彼の名前を登録したらこの部屋にタイムリープしてきた
ってわけ」
「そうだったんだね」
「その時、津山さんはソファーで寝ていて、お母さんからの手紙がテーブルに置いて
あった。だから、僕は36年前から少しずつ現世に戻れるようにオートタイマーを
セットしてスタートボタンを押したんだ。別に津山さんを一緒に連れていくつもり
なかったけど…。なぜか津山さんも一緒に来てしまったってわけ」
「信じるよ」
「ありがとう…。それから、僕自身の個人的理由で津山さんを巻き込んでしまったこと、ごめんね」
「ううん。私の方こそ、ありがとう…」
〈なんで、36年前なのか気になったけど私は聞かなかった〉
「え…」
「私も母のことが知れて嬉しかったから……」
「あ、僕、そろそろ帰らないと……」
「あ、ねぇまた会える?」
「多分、それは無理かもしれない」
「そっか…」
「キミはお母さんと同じ過ちを繰り返したらダメだよ」
「それって…どういう…」
「これからキミが運命の男に出会えるってことだよ。じゃ、健闘を祈る。
バイバイ萌衣ちゃん…」
え……
「あ、
そう言って、
「
私は天を仰いでいた―――ーーー。
冒険ができて楽しかったよーーーー。
ーーーバイバイ萌衣ちゃん……
一瞬、ドキッとした。
あれは空耳だったのだろうか…。
中学時代,私は
私は三段ボックスラックにしまい込んだままになっていた中学時代の卒業アルバムを取り出してきて久しぶりに開けて見た。
「‥‥‥え、これは…どういうこと?」
卒業アルバムに載っている
この部屋で私と会話していた
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