第10話普通

「普通の生活」

 一見簡単そうに見えるが、実は難しい事だ。

特に足を怪我してそれが身に染みた。

普通に歩く事。

普通にお風呂に入る事。

普通に階段を上る事。

普通の食事。

その何気ない日常が今の自分にとっては困難なのだ。


夜ご飯は美味しかった。

久々の鍋。

全部「大丈夫」で乗り切ったが、父からの質問攻めはなかなか怠かった。

余程心配しているのだろう。

母は何も言わなかったが、内心父と同じだろう。

親だけではなく俺も心配している。

ご飯を食べ終え、自分の部屋のベットで今日を振り返る。

濃い1日だった。

学業、部活、人間関係、全てにおいて不安の残る日だった。

特に人間関係だ。

勿論初日にあれこれ考える事ではないのかもしれない。

ただ、何故皆はもうあんなに仲良かったのだろうか。

...単純に自分のコミュ力の無いだけだろう。

自分に無いものを皆は持っている。


 俺は、田舎の中でもかなりの農村地区に生まれた。

幼稚園、小中は地区の学校に通った。

物心がついた時には友人と呼べる人はできていた。

それもそう、同級生は幼稚園の頃から顔ぶれが変わらなかったからだ。

友人というよりも家族に近い存在なのかもしれない。

今まで気にせずに生きてきたが、世間的にはかなり異質な環境なのだろう。

それが高校入学を機に崩れた。普通に会話できていた昔が懐かしい。

 そもそも友人とはなんだ。

どこからそう呼べるのだろうか。

何か一線のようなものはあるのだろうか

ただ会話すればできるものでは無いのか。

自然に出来上がっていくものだろうか。

正直、今日の自分は偽物だ。

勿論環境の変化はあるのかもしない、しかしこうも180度違うとなんだか高校生活はしんどい気がしてきた。

いや、しんどい。きつい。

 他校に入学した小中の同級生は今どう過ごしているのだろうか。

自分と同じ感じだろうか。同じ高校に入った奴はもう仲良さそうな友人が出来ていた気がする。

彼らとはクラスが違う。

ひょっとして、クラスが同じだったら自分もあそこの輪に入れたのかもしれない。

別に羨ましい訳ではない。


1回深呼吸する。

まだ、入学して2日目だ。

そう焦る必要は無い。

そう自分に言い聞かせて布団に入った。


膝の手術で入院した時、ベットで漠然と将来の事を考えた時不安で泣いた。

今、あの時の感情と少し似ている。

しかし、前に進まなくてはいけない。

もう高校生なんだから。

















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田舎少年 たかのすけ @Takanosuke_Asakusa

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