第9話食卓
家に着いた。
家に入るや否や母が顔を出してくれた。
母「今日学校どうだった?」
俺「楽しかったよ。」
母「そう、なら良かった。ご飯出来てるからね」
俺「わかった」
母は良かったと言っていたが、内心頗る心配だろう。
自分は今日沢山の人に嘘をついた。
古くの友人にも、ましてや実の親にもだ。
ご飯はもう出来ているそうだが、最初にお風呂に入った。
母は料理が冷めると言っていたが、お風呂で一人になりたかったのだ。
膝に衝撃が加わらないよう細心の注意をはらってお風呂に入る。
何度見ても手術した傷を見るのは慣れない。
この足本当に治るんだろうか。
普通に歩けるようになるんだろうか。
また野球できるようになるんだろうか。
友達はできるんだろうか。
湯船に浸かりながら頭に様々な出来事を思い浮かべる。
お風呂。
俺は好きだが、嫌な事も良い事も思い出し考えてしまう所。
今日はなんだか嫌な事を考えてしまう日だ。
深くため息をつき目を瞑った。
父が帰ってきた。
ガラ(ドアを開く音)
風呂に入っている俺を覗きこみ話し始めた。
父「東、今日学校どうだった?」
俺「うん、大丈夫だったよ。とりあえず閉めて。」
父「そうか」
ガラ(ドアを閉める音)
父は昔から勝手に部屋に入ってきたり、風呂を覗き込んでくる。
正直迷惑だ。
ただ、心配してくれてるのは分かる。
俺は一人っ子。
だけど、もう年齢も16だ。
そろそろやめてほしい。
しかし、現在は怪我の影響で階段を上る時は親の力を少し借りなければ二階の部屋に行くことすら厳しい状況だ。
徐々に一人で上れるようにはなってきたのだが...
極力親には迷惑を掛けたくない。
これ以上考えているとのぼせてしまう。
とりあえず風呂から上がることにした。
風呂から上がり、着替えを済ます。
これだけでも一苦労だ。
そして、夜ご飯の時間。
料理は鍋だった。
基本的に家族バラバラで食べる事が多いが今日は全員一緒に食卓を囲んだ。
流石に高校初日だからだろう。
絶対何か言われる。
そんな気がした。
父「今日どうだった?」
俺「さっき言ったと思うんだけど」
父「あぁそうだったな」
数十分前の出来事を忘れていた。
まだ、50代。
ボケるにはまだ早いぞ。
母「まずは、ご飯食べましょ。学校の事は後ででいいから」
父「お、そうだな」
俺の家族は4人家族。
俺、父、母、婆ちゃんの4人。
父と母は共働き。婆ちゃんは家の畑で野菜を育てている。
鍋の具材の野菜は家の畑で採れた野菜だ。
一応農家の家系。
父「東、高校で友達はできそうか?」
父さん....早いぞ.....。
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