第6話会話
昼休憩が残り10分程になった。
賑やかだった教室も今は少し静かになり、生徒たちは歯を磨きに行っている。
俺は一足先に歯磨きを済ませた。
弁当は美味しかった。
母の手作りだ。
小中学校は給食、だから今日から三年間昼は弁当を食べることになる。
内心味には心配していたが、普通に美味しかった。
そして今まで幼馴染としか学校で昼ご飯を食べてこなかった自分にとってほぼ初対面の人達と話しながら食べるという経験も新鮮だった。
しかし、気掛かりな事が一つある。
会話だ。
会話は楽しかった。
いや、会話と言えるだろうか。
自分はほとんど笑っているだけ。
たまに「それな」や「分かる」という言葉を発したが、
どちらかというと聞き手だった。
ほとんど自分の事を話していない気がする。
ただ、喋っている人に対して笑いながら頷くだけだった気がする。
それを果たして会話と言えるだろうか。
「怪我してるから早めに歯磨きしてくるわ」そう言って俺はその場を離れた。
1人で歯を磨きながら今後の不安を想像していた。
午後の授業は学年集会だ。
おそらく3年間の流れとこれからの行事、校内の散策だろう。
午後13時に俺達1年生は体育館に集められた。
1年担当の教師達が淡々と話しだす。
正直真面目に聞いている人は全体の3割程だろう。
一応俺は真面目に聞いているが、残りの7割の人は隣の人とコソコソ話をしている。
そりゃそうだ、教師の話よりこれから3年間ともにするクラスメイトと話した方が楽しいに決まっている。
「おい」
突然場に緊張感が走った。
数学教師菅原が他の教師の話を遮り説教を始めた。
菅原「お前らこの歳にもなって人の話も聞けないのか。
さっきからガヤガヤうるせぇな、黙って話を聞けや。」
こっわ。
そういえばこの教師1年生担当なのか。
担任に選ばれたクラス可哀そうだな。そう心で同情した。
60分の内最後後半は菅原の怒鳴り声で終わった。
結局5時間目は、各教師達の話と3年間の流れ、そして説教で終了。
おそらく次の時間に行事の詳細説明、校内散策だろう。
ほとんどの生徒は怯えて顔を下に向けている。
雰囲気がもはや地獄だ。
早く授業終わって家でゲームしてぇな。
しんみりとした空気で休憩時間に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます