二幕 なまくらな剣の舞

ある金色と ある白銀


金色のたてがみは雄弁であった

奪われた心を訴え 昇る朝陽さえも支持した


高き岩山の影にせし白銀は

花のように咲き 毛並みが揺れるのみ


焦がれる金色の

彼の持ちうる花束は

猛き獣の王としての矜持きょうじ 

鋭き牙 胸震わす咆哮ほうこう


しかし 白銀は首をかしげる


いつの間にか 荒野に席が運ばれた

その暴虐を恐れられ 目を背けられた王の

なりふり構わぬ 愛の叫び


巨大な体躯 象が皆の屋根となり

捕食を恐れぬ恋多き牝牛めうし

皆の喉を潤した


ハイエナさえも粛々と

王の変化を観察す

言葉のない舞台 言葉のない観客の

座席は野生をとり払い

固唾をのんで見守った


四つ足の金色 誇りし牙は

白銀を溶かすにはあたわない

が置き去りし銀の剣

多くの同胞をほふった刃

ただ 白銀のように美しい


くわえ踊れば舞う砂と

悲鳴こだます観衆に

苛立ち露わな金色は

猛り大地に刃刺す


白銀は 眼と耳を伏せ涙した


しびれ震えるたてがみが

金色のとまどいを隠すことなく

何がいけなかったのか

震え涙す観衆に

金色は鼻を鳴らして刃を潰す


王たる金色の剣の舞

なまくらなれど 力強く

力を矜持と体現せんや

魅せられ沸き立つ観衆を

背に受け金色仰ぎ見る


白銀の 心はいずこか


舞を眺めしい花は

ただ また首をかしげたもう




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