ライオンは剣を捨て、ギターと本を握った

一幕 ある金色 ある白銀

金色の猛き王は 白銀の花に心奪われた

白銀は高き岩山の陰に身を伏せ

じっと金色を見つめていた

金色は白銀のそよぐ毛並みに目を細め

自身の胸を大きく張り たてがみを誇り

大地が震える咆哮をあげる


空がひび割れ 鳥が落ち

地が震え 水が逃げた

太陽が怒り 夜を迎え

月は顔を隠し 星々は嬉々として眺める


しんと静まる暗闇に

金色と白銀の輝きだけが揺れ

金色は白銀が頬を染め高台を下りることを

信じて疑わなかった


白銀は 首をかしげる

伏せたまま じっと金色を見つめていた


白銀は 口を開く

美しい音

美しい息

純白の美しい牙


それ以外の意味を持たなかった


金色は首をかしげる

驚き 目を見開き白銀を仰ぐ


金色は 一つ呻る

雄々しい音

白む息

赤茶けた鋭い牙


それ以外の意味を持たなかった


あるライオン

金色 白銀

二頭に寝そべる隔たりは

その輝きよりも深く濃く


在る


それ以外の意味を持たなかった




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る