哀 ~ai~

叫びは彼女の歌だった


歓声は水を揺らし響く


水中でも意外と聞こえるものね と

冗談のような 余裕のような

彼女には先の争いなどとうに頭になく


両手を広げ 見渡し 応える

歓声の波 降りそそぐように突き上げられた拳

ただ煽るように 彼女は叫んだ

その権利があるから



――歓声は聞こえていた



波となり 私を押した

自身を奮い立たせる波だとて

結局は 私も波にしかなれず

彼女はその上を泳いだ というだけ


膝を折った私を

そしてうつむき並ぶ波たちを

彼女は振り返ることはない

掲げた腕で影を作るだけだ


彼女だけが魚だった

そして彼女だけが いま

高き空にいる









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