笑 ~ e ~

初めてのことだ


私を 見上げる者がいない

私が 見下ろす者もいない


この世の扉を閉めるとき

私は初めて地に降りた

ため息をひとつ それが終いだ


見渡せば うつむき 誰の顔もなく

虫の歌う嗚咽しか聞こえない

その皆の想いに 歓喜するべきなのか



私は かの者たちに空を見せてきた

私は かの者たちの顔を眺め生きてきた


突き上げた拳で歓声に応え

広げた両腕で悲嘆を包んだ


私は王者たらんとし

いくつもの星を降らせてきた


ならば今際の扉にとて もたれてみせよう

今一度 友よ 友たちよ

最期に私の命を聞け

なに 難しくはない



──e ただ一音

常世の扉くらいは越え

届いたであろう


さぁ 私を象徴する曲が鳴る

見送りにはうってつけの

別れにはこの上ない


見上げてごらん

もう地平に私はいない


なんでもない 元通りだ


口元は上がっているか

歓声は上がっているか


今更だが

皆を心から友と呼ぼう

背負い 応えることで

私が私たれたのだから



さぁいざ 新たな凱旋への扉












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