彼女はマグマに呑まれてもはねる鯉

泳 ~oyogi~

背中を観るものだと

誰かが言った

しなやかに伸びる姿には

生の模様があるのだと


幼き私にその言葉を

誰が投げたかは既に忘れ

言葉だけが意味を持ち

言葉だけが命を遺した


私の足どりを

永いと頷くだろうか

短いと嘆息するだろうか

鯉や めだかのことだったと

呆れてしまうだろうか


顔は口ほどに雄弁だと

私は信じなくなった

全てその背に その姿勢に

出でる模様に何某かを知る


さて

私は思うのだ


私の背は

私の瞳に映らぬ背は

私の誇れる私なのかと


研ぎ澄ますには

水面は鏡には脆すぎて

私の道は揺れているのだと


溺れてはいないと

しなやかであれと

言い聞かせるのだ







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