春夏秋冬の薄命

ある日女神が云いました

アナタの光は音色のよう

その日ホタルは願いました

声なきワタシも歌いたい


春を知らず生まれ

夏を待たずに去り

秋と冬は鳥に聞いた

そんな薄命の小さな願い


ある日男神が云いました

キミの瞬きは鼓動みたい

その日ホタルは嘆きました

声なきワタシも奏でたい


春は水と土に生き

夏の喧騒を知らず

秋と冬はこうもりの歌

そんな薄命の小さな嫉妬


飛び立ち光る薄命の7日間だけの宝物

けれど歌を願う薄命は春夏秋冬を奏でたい

気まぐれ頷く二神の奇跡

365日の小さな奇跡



その生き物は似てました

奇跡をくれた神たちに

そしてホタルは決めました

彼らの一年を歌にしよう


春は別れに泣き

夏は迷いうつむき

それでも顔を上げ笑う

そんな強さと弱さに驚く


秋は別れに泣き

冬は別れに笑い出会いを見送る

気づけばずっと泣いている

薄命よりも弱く見えた


春夏秋冬を生きる彼らの

贅沢なくらいの泣く時間

気まぐれをくれた二神に問う

長く生きられたら幸せなはずだと


女神と男神は見つめ合い

困ったように笑うのです

幸せは儚いほどに短い瞬きと

けれどアナタの光のように

音色になって残るのですと


たった7日間の宝物

抱くホタルの綴る詩は

春夏秋冬を巡る彼らの幸せにも似た光


ならばとホタルは光り舞う

涙する彼らを照らし導く

見上げる星の指揮者になろう

その価値が自分にあると思えるから


365日の奇跡

声なき薄命の奏でる星空は

神さまさえも見上げていた

揺らめく光をタクトのように

明日を指差し燃え尽きた


春を知らず 夏を待たず

秋を水面に 冬を土で迎えたはずの

春夏秋冬を生きたホタル

一夜限りのコンサート

7日間だった宝物の歌 見上げれば広がる歌










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