後ろの席

袖も擦り合わない出会いがある


後ろの席には

目深に被ったフードの御仁

顔も見えない


車窓を見ると


流れる 夜景

離れる 月

湖面は鏡面に

星は川に


落ちることはない

私たちが走っているから


一様いちように前を向き

同じ景色を見ている



そのフードの人の歌だった

言葉のない 歌

FuとNnが機嫌良さそうに踊っている


一様に 皆心地よく拍節器メトロノーム



袖も擦り合わない幸福がある



後ろの席の人だから

その顔は望めない

宵闇の調べのその人の

頼りの同列には誰もなく


チップも拍手も野暮ってもので


座席を倒して ペコリ

それだけの仕草で


その人も同じく返してくれる

目深に被ったフードはその人を隠すけれど

私の涙は 見えたかもしれない


FuとNnが踊っている

袖も擦り合わない

自分しか知らぬ慰めもある





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