星合残夜
ソラノリル
始
始
斬るほどに
激しく叩きつける雨
積み重なる巨石を濡らし
「援軍は来ないのか」
将を務める男が唇を噛む。
舌打ちし、男は視線を影に注いだまま、声を張った。
「動ける者は、私に続け!」
蠢く影が形を変える。くるりと小さく丸まると、
「……駄目だ。近づけない……」
襲いかかる棘を斬り払い、将の男が唇を噛んだときだった。
ひらり。視界の端を、白い光が
頭の後ろで高く結い、背中を流れる長い髪は、月の光を集めたような銀色。白い額にかかる前髪のもとには、曇りなく磨かれた
少年の小さな手が、すっと、影に向けられる。白い指先が、
――
瞬間、影の真上に、大きな赤い光の
少年の指が、流れるように、また別の印を結ぶ。静かに、冷ややかに。
――引き裂け、
指先を、
とん、と少年の
「……信じられない……」
将の男が、呆然と少年を見つめる。将の部下たちも、同じ表情を浮かべていた。驚愕、安堵、そして、畏敬。
「……君は……いや、貴方様は、本家の……」
その場にいる全員が、少年を知っていた。
だからこそ、この場に少年がいることが、信じ
「その
見開かれた大人たちの瞳の中で、少年は淡く微笑み、敬礼した。
「本日、援軍の命にて初陣を
死者が出る前に間に合って良かった。
そう言って少年は笑った。煙るような土砂降りの雨の中、まるで少年の周りだけ陽が射し、澄んだ風の吹くような、透き通った微笑だった。
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