第3話 ヨンパルの結婚

 ヨンパルは18才になる年に全羅農学校を主席で卒業して都立農業技師になった。今までの逸材とは一味も二味も違う異才を放つ彼に周りの技師たちはもうすでに大きな期待を抱いていた。技師になって間もなく、ヨンパルはサヨンという女性と結婚した。名家とまでは言えないけれど、良い家庭育ちでドンヨブの友人の娘さんとのお見合い結婚であった。今の基準からみると早いかもしれないが、当時は早婚の風習があったのである。ヨンパルはサヨンとの間でジョンナム(男)を産んだ。

 全て順調であった。孫を見て喜ぶドンヨブとスクを見ている時、自分の事を慕う弟の成長を見守る事、サヨンとの夫婦仲、農技師としての業務、仕事仲間、何一つ不満などあるはずもない。しかし、この若くて美しい青年の心に突如得体の知れない感情、いや確信が生まれた。それは日によって徐々に大きくなり、自身を苦しめ始めるのである。

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