第12話 異端児
警部との電話を切ると直ぐにメールの返信をするリョウガ。
〝あたしも1人だと辛くなるからちょうど良かった。お店何処に行く?〟
リョウガも警部と同じでこずえはあきら殺しに何か絡んでると思っているので敢えて〝店何処に〟と言って警部の言う〝こずえは怪しいから自宅に誘うはず〟を試してみた。
案の定、返信でこずえは料理をして気を紛らわしたいから家に来てと言って来た。
こずえがあきら殺しに絡んでいると確信するリョウガはメールで時間を決めると警部に電話をする。
: あっ、リョウガです…
: どうだった…
: やっぱり、自宅に誘われました…
: そうか、盗聴器を持って行くから家で待っててくれ…
1時間ほどで、リョウガのマンションに盗聴器を持った警部がやって来た。小型の盗聴器をリョウガに渡し説明をする。
「これをバッグの中にでも入れておいてくれれば私も会話を聴けるから…」
リョウガはこずえとの会話で自分が薬物をやってた事が警部にバレる可能性を考えて戸惑いながらも薬物使用を自白する。
「あの…」
「何ですか?」
「実はあたしもドラッグをやってた事があるんです…」
リョウガの告白が何を意味するかを悟った警部は、その不安を取り除く。
「大丈夫…これは私しか聞いて無いし、あきら君殺しの事以外を問題にはしません…」
「ありがとうございます」
「ただ…二度と手を出さないと約束して下さい…」
警部の言葉に泣き出したリョウガは絶対に二度としないと誓い、むしろ今はあきらが殺される原因になったドラッグを心から憎んでいる事を内訳た…
「もし辛くなったら何時でも連絡して来て構わないから…」
「ありがとうございます…でも、もともと連続して使った事とか無いせいか禁断症状見たいのも無いんで安心して下さい」
「そうか、なら薬は大丈夫そうだな… だが、こずえの事は感情的にならずに冷静に対応して勘ぐられ無いように質問は極力避けてくれ…良いね」
梶山がリョウガのマンションを出て捜査本部に戻る途中で矢野口が乗った覆面パトカーとすれ違ったが、お互いに気付いていないようだ。
矢野口は例によって佐藤の運転でリョウガのマンションの前に横付けした車から降りると迷わずインターホンを鳴らす…
直接マンションに来るとは思って無かったリョウガは少しイラつきインターホンで話して帰らせようとする。
: もしかして矢野口さんですか?
矢野口はモニターにバッジを見せて答える。
: そうです…少しお話ししたいのですが?
: 何でしょうか?
矢野口は辺りを見回す動きをすると首をかしげて話す…
: ここではちょっと…他人に聞かれたく無い話です…
警察に人に聞かれたかく無い話と言われ思い当たるのはハッキングの事だけだ…しかし、今さらそんな昔の話をされてもとリョウガがイラつきを露にする。
: …あたしは、別に構わないですよハッキング事件の事だって!
: 誤解です、落ち着いて下さい…聞かれたく無いのは私の事情です…個人的な恨みで麻薬組織を追ってます…
個人的恨み…それは、自分もそうだ…リョウガは考えた、麻薬組織が事件の大元ならこの人から情報を得られるのではと…
リョウガは矢野口を部屋に通す。
梶山も驚いたフィギュアとぬいぐるみに囲まれた怪しい占い師の館の様な部屋に何のコメントも無い矢野口に違和感を感じるリョウガ…
「すみません、変な部屋でしょ」
「そうですか…人形収集の趣味がある城山さんは収入が良いので沢山集まった…だけでは?」
「えっ?そっそうです…凄いですね…」
「あっ、素晴らしい趣味です」
取って付けたようなお世辞にはにかむリョウガ…
「いえ、だいたいの人がドン引きですよ…驚かないのに驚いただけです」
そんな事にはまるで興味が無い矢野口は自分に起きた過去の事件を話し出す。
「じつは、私も友達を殺されました…」
リョウガは黙って続きを聞き入る。
「警察に追われたジャンキーが、信号待ちしていた私の大切な友達を引き殺したんです…今回の事件も大元は同じ麻薬組織です…」
「信号待ちしてただけで…ひどい」
「当時は犯人を恨みました…」
「…絶対、許せ無い」
「そう思ってました…事故を起こした犯人を恨み、殺したいと思ってました、でも…今は友人を引いた犯人も組織の被害者だと思ってます… 彼方のお友達もそうです…私は、そんなあやまちを無くしたい…だから元凶を叩く…」
「元凶を…それは分かりますけど、でも…犯人が被害者って…? 警官になる人は凄いですね、そんな風に思えるのは立派だと思います…だけどあたしは違う、犯人が憎い!」
「当然です、ドラッグマンには明らかに殺意があった…私の時とは違います…だから、坂下さん(あきら)の敵討ちをしませんか…私と彼方で追跡すれば発信中の犯人の居場所を掴めると思います…」
「えっ…まさか、捜査に加われと…」
梶山に続いて矢野口にも捜査協力を求められたリョウガ…しかし、梶山の時とは違うモノを感じていた。
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