第13話 異端児
梶山が捜査協力を求めたのは自分の暴走を防ぐため言わばある種の保護の様な感じだが、矢野口のそれには麻薬組織壊滅の手段の様に感じた。
「そうです。 最初はいわゆる隠密な感じですけど、私はもうすぐ警視に成ります…それと同時に特捜を立ち上げるのでそうなれば堂々と警察署に出入り出来ます…犯人を捕まえましょう」
今度の誘いは警視殿の冠で警察署の出入りが自由…条件は悪くないが矢野口に得体の知れない恐怖を感じるリョウガは直ぐにでも梶山に相談したかった…たが、その為には矢野口を帰らせる必要がある。
「その…時間を少し下さい」
犯人を捕まえたくて自ら警察署に情報を持って来るような人なら捜査協力の願い出は渡りに船のはず…なのに考えたいと言うリョウガに違和感を感じる矢野口…
「それは変ですね…」
「はっ…何がですか? あたしには警察の捜査なんて荷が重いし突然過ぎて…」
矢野口はリョウガの対応に疑問を抱くが少し泳がす事にしてマンションを出て警察本部に戻って行った。
リョウガは矢野口が帰るのを確認して梶山に電話をする。
: もしもし! 矢野口警部が来ました…
: 来た…電話じゃなくて?
: そうなんです直接マンションまで…
: そうですか…でっどんな話を…
リョウガは矢野口との会話をなるべく細かく梶山に説明した。
: 特捜で捜査協力ときたか…
: なんて返事したらいいのか…
: 彼の事は私もよく知らないんだ…変り者と言う噂を聞いただけで、リョウガ君的に信用出来そうな人だと思いましたか?
: あの人から感じたのは凄く頭が良い人だと…って言うか良すぎて怖い気がしました…
: なるほど… 分かった、取り敢えず私が矢野口を探って見ます。 リョウガ君は矢野口からの連絡を、また居留守でお願いします…
警視庁の厄介者と言われている矢野口だが事と次第によっては味方になる可能性があると梶山は期待した。
16:30
こずえが、部屋で手作りデリバリーを検索する…
リョウガには料理してると気が紛れると言いながらも料理など作らずに手作りデリバリーの注文をする。
何の生活感も無い部屋のテーブルにピンクのクロスを掛け一輪挿しの花瓶をテーブルの中央に置くと無機質な部屋が少し洒落たカフェの様にも見える。
思ったより早くに届いたデリバリーを綺麗に盛り付けると手作り屋の包装を目につかない様にかたずける…後はリョウガを待つだけだ。
こずえのマンションに着いたリョウガは警部に電話をする。
: リョウガです…今こずえのマンションの下です …
: 盗聴器はバッグですか?
: はい、聴こえますか …
: えぇ、大丈夫です…くれぐれも質問は避けてこずえの話を聞く事に徹して下さい …
: 分かりました …
電話を切ってこずえの部屋に向かうリョウガ。
リョウガが到着すると笑顔で迎え入れるこずえ。
「いらっしゃい」
「おじゃまします」
これがオカマと悪女の第2ラウンド開始のゴングだ。
「えっ、すご~い! こずえか料理上手何て知らなかったからビックリ」
「へっへ、でも実を言うと半分は出来合いのだからそれ程でもないの」
「やだぁ~、あたし何かレンチンしか出来ないわょ」
「ワイン、赤と白どうする?」
「これだけあったら両方ね」
覆面パトカーの中で2人の会話を聴いている警部は、坂下あきらを介しての付き合いである2人がお互いに良い印象を持って無いと理解しているので序盤の仲良しコンビのようなこの会話に女同士(オカマ)の表と裏の違いに軽い寒気を感じながら聴いていた。
「ほんとに、美味しい~」
「ありがとう… ほらワインも飲んで」
「……」
こずえがワインを勧めると俯いて寂しげな表情をするリョウガ…
「…どうしたの?」
「ごめん…あきらにも食べさせたかったなって…」
「そう言えば手料理何て食べさせた事無かったな」
そう言うと涙ぐむこずえ…
… こいつ警部にはただのの知り合い見たいに言ってたくせに、あたしの前では相変わらずの彼女面とは、たいしタマねぇ …
こずえ
「やっぱり…悔しい」
「ごめんね…思い出させちゃって」
「いいの…どうせ忘れる何て出来ないし…でも、犯人が捕まれば少しは楽になると思うの…」
「そうよ、犯人はドラッグマンでしょ警察が今探してるけど直ぐに捕まるわよ」
「でも、私のとこにも警察が来たけど手掛かりが無いみたい」
「そうなの…」
「リョウガなら…あなたならあきらのスマホからドラッグマンの居場所にたどり着けるんじゃない?」
覆面パトカーの中で会話を聞いてる警部はこずえが事件に絡んでると思ってるので何故こずえが犯人逮捕を望むのかが理解出来ないでいた。
「こずえ…あんた、ドラッグマンが憎いの?」
「当たり前じゃない、リョウガだってそうでしょ!」
こずえを犯人側の人間だと思っていたリョウガは、ドラッグマンが憎いと言うこずえに動揺する。
「それは…もちろん、あたしだってドラッグマンが許せない!」
「そうでしょ! 私達にもきっと何か出来るわ」
「わたしたち…」
「そう、あきらを好きだった私達なら…」
「あきらを好きだった…あたしがあきらを好きだったて知ってたの…」
「そりゃあ… あなたの体は男でも私達女同士じゃない気付くわ…」
リョウガの心の中でこずえに対するいろいろな物が崩れ出した…
あきらを好きだった私達で坂下あきら殺害の犯人を捕まえようと言うこずえがあきら殺しに絡んでいるはずか無い… あたしの考え違いだったのでは、こずえは気が強い性格が災いして誤解されやすい人間なのかも…リョウガの頭の中で新たなこずえが構築されて行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます