第6話 3人目の女
森高こずえの調査をしていた久留米刑事が警部に調査報告をする。
久留米刑事
「こずえと社長の愛人関係なんですけど社内では疑わしいが確信が持てないと言うところですね」
梶山警部
「ほぉ~上手く誤魔化してるのか…」
「その誤魔化しかたが凄いんですよ…こずえは社長の奥さんとも親しくしてて、奥さんは両親の居ないこずえを不憫に思って娘の様に可愛がってるらしいです」
「何て女だ、奥さんに娘のふりして旦那と出来てるのか…週刊誌が喜びそうなネタだな」
「あの女、男関係も派手にやってますねホストやクラブに入り浸って彼氏が出来るとすぐ奥さんに紹介してた見たいです…その中に坂下が居たかどうかはまだ確認出来てませんが…」
「そこまでやれば奥さんも旦那との浮気など疑わないか…」
「社長も愛人の彼氏とか気になら無いんですかね」
「割り切った金の関係って事か…」
いまいち、こずえの捜査に納得していない久留米刑事が警部に尋ねる。
「…あの梶山さん、まだこずえを調べますか?やはり、殺しとは関係ないですね…」
梶山警部は久留米がこずえの捜査に不満を感じてるのを察して別の捜査を指示する。
「…そうか、じゃ~久留米はサイバー課とドラッグマンを調べてくれ」
坂下あきら殺人事件をヤク中の揉め事くらいに考えて興味の無い警部は、こずえのマンションを訪れた。
「警部さん……」
こずえは戸惑った、自分に関われば弁護士が出てきて何かと面倒だと分からせたはずなのに…何故薬物使用なんて捕まえたとしても手柄にもならない自分の所にまた来たのか……目的が分からない。
「どうぞ入って下さい回りの目が有りますから」
歓迎されなさ過ぎて部屋に通された梶山だが、そんな事はお構いなしだ。
森高こずえの1LDKのマンションは黒の遮光カーテンがやけに目立つ何の飾り気も無い無機質な部屋だ…とても若い女が住んで居るとは思えない。
「坂下に貸した金は、犯人が捕まれば帰って来る可能性が高いですよ…」
「そうですか…そんな事を言いに来た訳じゃないでしょ…」
「…実は、坂下と社長の関係を伺いに来ました。二人は面識が有りますか?」
「たぶん…でもあくまでも面識程度で知り合いでは無いはず、事件には関係無いでしょ」
「そう願いたいですが、可能性は全て調べないと…」
「私はドラッグマンが犯人だと思うけど…」
「名探偵登場ですな」
「茶化さないで、他を調べたほうが良いと言ってるの私は殺人に無関係よ」
「貴女を二人の男が取り合い事件が起きたとも考えられませんか…」
「…面白い事を言うわねぇ…だけどどっちも喧嘩する根性すら無いと思うわよ」
「そうかな?恋に狂うと男も女も恐ろしいものでは…」
「さぁ…どうかしら…… それより、ここに来た本当の目的はなんなの?私には警部さんが私を疑っている様に感じるわ…」
「それは、すみません…ですが刑事は疑うのが仕事見たいな所がありまして…そのせいで誤解させてる様ですね」
「そうね誤解もいいとこだわ…」
「ハハッ…ところで、聞かせて貰った事の他に、何か思い出した事などありませんか…どんな些細な事でもいいので……」
「だから…ドラッグマンを捜査してるんでしょ、確実に繋がってるし詳しく調べるべきでは?」
「フィリピン人のドラッグマン…確かに闇サイトでドラッグマンの名前はありますが、その先が掴めない…」
「…外国のサーバーを経由してるから?」
「そうです…」
「警察のサイバー課なら簡単にたどれるんじゃないの…」
「そっちの方は疎くて、彼等に任せてます」
「頼りないのね…私の知り合いのハッカーでも紹介しましょうか?」
「…ハッカー?でも民間業者だと有料ですよね」
「あきらの事も知ってるから、きっと捜査に協力するよわ…」
「ありがたい話ですが捜査に民間人を交ぜる訳にはいきません」
「そう… やっぱり警察は頭が固いわね」
こずえはドラッグマンの捜査に知り合いを紹介しようかと持ち掛けてきた…捜査に知り合いが居れば捜査内容をこずえは手に入れられる、捜査状況をこずえは気にしてると言う事かも知れない…警部のこずえへの疑惑はさらに深まった。
「自分が警察に関わるのは、煩わしい……だけど知り合いを捜査に協力させる…不思議な発想ですね」
警部はこずえの腹の中を探ろうと問い詰めるが、何一つ臆す事の無いこずえに正論を返される。
「違う…私は何も知らないから、協力しても意味が無い。 だけど、知り合いのハッカーなら犯人のドラッグマンにたどり着けるかも知れないから意味がある……善良な一市民として当然の考えかたでしょ」
「なるほど、そうですね……しかしハッカー無しでもサイバー課が何か掴んでるかも知れないので今日はもう帰ります」
「今日はって…? また来るつもりなの…」
「ハハッ 捜査の進展次第ですね…それでは、失礼します」
こずえのマンションを後にした梶山は警察署に向かった。
警察ならすぐにドラッグマンを逮捕できると思っていたこずえは予想外の展開に落胆していた。
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