第7話 ハッカー

神奈川県警察本部


梶山が、警部がサイバー課と捜査してる久留米刑事の報告を受ける。


「やはりネットからでは足取りが掴めませんね…」


「ん~客に成りすまして近付くか…」


「それも試したのですが、いわゆる掲示板でのやり取り何ですよ、客が金を外国のネット口座に振り込んで後日奴がコインロッカーを指名してそこから受け取る流れです、接触はおろか会話すらしません」


「だが、坂下はフィリピン人だと言っていた…」


「憶測に過ぎないんですけど、常連客とは直で取引してたのでは…」


「なるほど、何にしても厄介な相手だな」


「とにかく今は、足でしらみ潰しにドラッグマンを知ってるジャンキーを探してみます」


「キツいが頼むぞ」


梶山警部はサイバー課との合同捜査は久留米刑事に委せてこずえに御執心だ。







  【ハッカー】



坂下あきら殺人事件の二ヶ月ほど前…横浜某所 カラオケボックス

 


坂下あきらと森高こずえにゲームクリエイターの城山リョウガの三人が飲んでいる。こずえが警部に話していたハッカーと言うのがリョウガの事だ。



「あきら、多めにSあったら一万分売ってよ」


リョウガが坂下にクスリを分けてくれと頼むと、坂下はアメでも渡すかの様に答える。


「いいよ」


そんな二人のやり取りに森高こずえが口を挟む。


「あきら……ホストよりその方が儲かるんじゃないの」


「えっ、ホストで儲ける為に始めたクスリが本業になるって、ミイラ取りがミイラだな」


「売るのは捕まるよ…」


リョウガが、売人なんかやるもんじゃないと促すがこずえが煽る。


「儲かるんじゃないの?」


ドラッグは遊ぶのと違い売りの罪は恐ろしく重い。


「ちょっと…あきらに、変なこと言わないでよ」


リョウガは男だがいわゆるオネェーで坂下を恋愛対象として見ている…そのせいかこずえのリスキーな発言を牽制する。


「何でよぉ~ドラッグマン見たいなネット販売なら絶対捕まらないでしょ」


「あたしはIT系でハッキングも出来るから分かるけど、ネットはたどれるの…」


リョウガは世界的にヒットしたゲームソフトを開発した会社に勤める一流のプログラマーだ。


「貴方もともとオタクのハッカーでしょ」


「だからなんだぁ!」


男を出して威嚇するリョウガ…しかしあきらがそれに驚いてるのに気付いてオネェーに戻る。


「やだぁ~何のことぉ~」


「違うの、変な意味じゃなくて凄腕のハッカーって言いたかったの」


凄腕のハッカー…リョウガが今の会社にスカウトされたのはある事件が切っ掛けだ…それは検察庁へのハッキング。


 事件は検察の面子などから余り表沙汰にならなかったが警察に拘束されたリョウガを保護司の資格を持つIT企業の社長が責任を持って更正させると約束して当時19才のリョウガを会社にスカウトした。




「発信者を辿るなんて、貴方に出来ても警察には出来ないんじゃないの」


「日本の警察にも今はサイバー課があるわ…逃げられないよ」


「おいおい何にしても、僕の話だろ……」


坂下あきらに振り返り無言になる二人。


「二人で熱くならないでよ」



仲間内の戯れ言の様になって終った話しだが…これが切っ掛けでホストとして行き詰まっていた坂下の選択肢が一つ増えることとなり…そしてその結果、坂下は殺された…










神奈川県警察本部



 事件から数日が過ぎ行き詰まる捜査に進展が訪れる、捜査本部に城山リョウガがやって来た。



「あの~すみません。坂下あきらの捜査本部はこちらですか?」


「そうですよ」


「…私、坂下あきらの知り合い何ですけど事件の事で聞いて貰いたい事があるんです」


捜査員は、リョウガを梶山警部に合わせるため取調室に案内する。


取調室は真ん中に四角いテーブルが置いてありそれを挟む様にパイプ椅子が二つある。

リョウガは扉から離れた方の容疑者席に座り捜査員と向かい合う。しばらくして梶山がやって来た。


「何か情報があると伺いましたが…」


「ドラッグマンを調べてるんですよね」


「そうですが、坂下あきらさんとはどう言うご関係ですか…」


「あたしとあきらは友達なの…」


話し方でリョウガのオネェーを理解した梶山。


「記事で読んだんですけどドラッグの取引での揉め事何ですか?」


「分かりません……ただ、あらゆる線で捜査してますが…クスリのトラブルが有力です」


「ドラッグマンですよね、そいつが犯人だから探してるんでしょ」


「今はまだ分かりませんが…ドラッグマンを知ってるんですか?」


「…調べたんです、時間かかったけど…沢山あるけどドラッグマンを見つけるのに役立つ情報です」



その言葉を懐疑的に捕らえる梶山だがサイバー課に連絡して専門家に調べさせる事にする。

リョウガはそのまま取調室に待たされた。



サイバー課の刑事が取調室の隣にあるマジックミラーの部屋にやって来た、マジックミラー越しにリョウガを眺める。


「彼ですかドラッグマンの発信先を特定したと言ってるのは……」


「そうだ、私はネットとかそっち系は苦手でね相手してくれるか……!」


サイバー課の捜査官がリョウガを食い入る様に見ている。


「どうしたんだ?」


「えっ、あぁすいません……彼名前は?」


サイバー課の捜査官に質問されるが、これが大事だとばかりにリョウガのジェンダーを説明する警部。


「あぁそうだ、彼はオカマでいわゆるジェンダーだから女として扱ってやれよ」


苛立ち声をあらげる捜査官。


「梶山さん!名前は!」


捜査員に強く迫られ、慌てて名前を告げる警部。


「城山だ!城山あぁ確かリョウガ…城山リョウガだ」


「やっぱり」


「知ってるのか?」


「知ってるも何も、昔し…8年以上前ですが検察庁のハッキング事件があったでしょ、その頃自分は警視庁に居たんで顔を見てるんですよ…」


「えっ…まさか、そのハッカー」


「間違いない…彼なら本当にドラッグマンの居場所を割り出せるかも」






リョウガの出現により捜査が加速する…

彼が集めた情報でドラッグマンは横浜に居ると推測された。






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